Sportlandiaより「GOE」

マルティーナ・フランマルティーノさんのジャッジに関する分析シリーズ第5弾

ここ数年間におけるGOE評価の分析です

 

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マルティーナ・フランマルティーノ著
2020年7月28日

 

娘達と海辺にいるのは危険です。何故なら数時間、自由な時間が出来ると、仕事を放りだして数字に没頭してしまうリスクがあるからです。

ISUは2018-2019年シーズンから各エレメントの基礎点、及びGOEの幅(+3/-3から+5/-5)を変更しました。

これにより、各シーズンを比較するのはより難しくなりましたが、十分な忍耐があれば、興味深いデータを掘り出すことが出来ます。

私はGOEを調べてみました。とりあえず、羽生とチェンのデータだけですが今後、他の選手達についても調べるかもしれません。

ただし、この表を作成するために、私は膨大なデータを比較しなければならず、ほぼ半日以上を費やしましたから、他のスケーターの分析も行うとなるとそれなりの時間が必要です(既に私は本来やらねばならないことをかなり蔑ろにしているのです)。

私は羽生が出場した全てのシニア国際大会(2010/2011年シーズン以降)と、チェンが出場したジュニア及びシニアの国際大会(2012/2013年シーズン以降)のプロトコルを集めました。

国内選手権、そしてあまり真面目な大会とは思えないジャパンオープンは分析から除外しました。

事実を言えば、いわゆる「真面目な」大会でも、多くの採点は「真面目」からかけ離れているように見えますが、まあそれは置いておきましょう。

私は彼らの全ての試合のプログラムにおける各エレメントを調べました。

まず、いわゆる「GOE満点」(現在の採点システムでは4アクセルが+4.00、4トゥループ及び4Tからのコンビネーションが+4.75という具合に)。

2種類のジャンプを例に挙げましたが、スピン、ステップシークエンス及びコレオシークエンスについても調べました。

そして、個々のシーズンで羽生とチェンが理論上、獲得可能だったGOE満点の合計を計算し、「GOE max」の列に入力しました。

一方、隣の「GOE reale」の列は彼らが実際に獲得したGOEの合計を記入しました。

数値にはかなり変動があり、その選手が各シーズンに出場した試合数にもよりますから、単純比較することは出来ません。例えば、2016-2017年シーズン、羽生は7大会に出場していますが、2017-2018年シーズンはたった3大会でした。

そこで3列目でこれらの2つの数値の比を比較することにしました。

 

%で示されているこれらの数値は彼らが実際に獲得した得点のGOE満点に対する達成率です。
羽生は低いパーセンテージからスタートし、徐々に上昇し、2014-2015年シーズンに少し後退します(ただし、このシーズンは中国杯でハンヤンとの衝突事故があったことを忘れてはなりません。中国杯フリーとNHK杯のショートとフリーのデータを除くと達成率は42%に上昇します)。

彼が採点システムを破壊した2015-2016年シーズンに驚異的なピークに達します。

その後、安定して高い達成率を維持しています。最後のこのシーズン以外は・・・

先シーズン、彼のエレメンツは本当にそんなに悪化しましたか?

私が見る限り、そんな印象は受けませんでしたが。

 

チェンは最初、4回転ジャンプがなかなか安定せず、苦戦しています。
現在では、彼のジャンプはずっと安定感が増しました。そのことに疑いはありません。

でも、ここ2シーズンにおける評価の上昇ほど実際に彼が実施したエレメンツの質は向上していますか?

高いGOEは、スケーターが転ばずにジャンプを着氷しただけで与えてよいものではありません。正確な各項目の要件が満たされていなければならないはずです。

彼らの数値のこのような変動は不可解です。本当に彼らがリンクで実施したクオリティに一致しているでしょうか?

 

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☆第5弾と書きましたが、実際にはこれがマルティーナさんが執筆したジャッジ分析シリーズの最初の記事です(翻訳するのが後回しになっていました)。

GOEに関しては特に+5/-5制に変わってから、ジャッジ達が各自の自由裁量でテキトーに採点している印象を受けます。各要件をチェックしているとは思えません。

プラス要件6項目全てを完璧に満たしていた羽生君の四大陸ショートプログラムのジャンプに+4を与えたジャッジは分かるように理由を説明して欲しいです。

 

毎年恒例となった24時間テレビ、今年も羽生君が参加してくれました!
(イタリアからは視聴出来ないので、動画を投稿して下さる方に感謝です!🙏)

例年のようなアイスショーではなく、メッセージという形でしたが、長い砂漠の後、元気そうな彼の姿を確認し、声を聞けるだけで嬉しいですね😭(まさに砂漠のオアシス)。

彼のことだから、コロナの影響で練習が出来ない時期、ここぞとばかりに勉学と研究に専念しているのだろうとは思っていましたが、卒論を完成させていたのですね!

しかも彼自身のジャンプをモーションキャプチャーを使って解析って、計り知れない価値のある論文ではないですか!

IOCやISUは英訳版を重要資料として永久保存すべきじゃないですか?

スポーツ科学研究所は喉から手が出るほど欲しいでしょうね。

まさに人類とスポーツ界の遺産、レガシーです。

不慮の事態で予定が狂ってしまっても、それを別のことをする機会と捉え、決して無駄にしない彼の思考回路、発想の転換、物事へのアプローチの仕方にはいつもインスピレーションをもらっています


「ウイルスをまずは自分に感染させない。そこからまた広げないことこそが、今回一番のみなさんへの応援。感染拡大につながるような行動をしないという選択をしているだけで、僕たちは回復した未来に向かって動けている」

 

本当にそうですね。

イタリアではコロナ感染ピークの3月、ベルガモなどでは2分に1人のペースで人が亡くなっていました。そして現場で治療に当たっていた多くの医師や看護師の方が自らも感染して亡くなられました。
当時、ニュースで報道される病院の悲惨な状態を茫然と眺めながら、自分には何も出来ないと思っていましたが、私達に今出来ることは感染しない、感染を広げないと言う意識を持って行動することで現場でウィルスと闘ってくれている医療従事者の皆さんの負担にならないようにすることなんですね。

そして私達一人一人の意識と注意が彼の言う「回復した未来」に近づくための一歩になるのかもしれません。

 

イタリアでは皆がマスク着用を守り、消毒を徹底しているおかげで、今のところ第二波はなく、コントロールできているようです。

毎日、新規感染者は出ていますが、政府や自治体が市民に抗体検査を積極的に推奨しているため、検査によって無症状の陽性者が発掘されるケースがほとんどのようで、死者数は激変しています。

ただ、新規陽性者の大部分がバカンスで外国に行って帰国した人のようなので、国間の移動はやはりリスクが伴うようですが。

Published by Nymphea(ニンフェア)

管理人/翻訳者(イタリア在住)。2011年四大陸チゴイネ落ち @pianetahanyu