Sportlandiaより「ISU殿、問題は深刻です」

マルティーナさんの国別対抗戦における羽生君のGOEを分析した記事です。

原文>>

マルティーナ・フランマルティーノ著
(2021年4月16日)

親愛なるISU殿、あなた方はご存じないかもしれませんが、問題は深刻です。あなた方のジャッジはあなた方が決めたルールを理解していません。彼らをもっとトレーニングする必要があるとは思いませんか?

具体的に言うと、以下がGOEに関するルールです

これらのプラス要件に加え、ミスに対する減点もありますが、ここではミスのあったエレメントは取り上げませんので、GOEマイナス項目は投稿しません(2つのプログラムでミスがあったのは見ましたが、ここではクリーンなエレメントに対するGOEだけに焦点を当てています)。

2021年世界国別対抗戦の男子の試合でジャッジを務めたのは以下のメンバーです。

大会公式サイトからスクリーンショットを撮りました。私は常に公式媒体がソースに使用することを好みます(利用可能な場合)。ただジャッジ名の横に赤字で彼らの国籍を書き入れました。私は自分の中で理解出来ないことは訊かずにはいられない馬鹿正直な性分なので訊きますが、あなた方は何故彼らの国籍を明記しないのですか?

2021年4月8日のオンライン会議に関連するコミュニケーション第2390号の中で、あなた方は「IOC選手の権利と責任宣言」を採用することを決めました。これはとても良いことだと思いましたので、私はIOC宣言を読んでみました。この文書には同意します。私はある一文に目を引かれました:

透明性のあるジャッジング/レフェリーの判定を提供する。

過去に多くのナショナルバイアスがあったことは周知の事実ですから、「透明性のあるジャッジング/レフェリーの判定を提供する」という一文にはレフェリーとテクニカルパネルのメンバーの国籍を明記する、という意味も含まれていませんか?
そのレフェリーが公正なら、サミュエル・オーシエ氏がアメリカ人であると書いたところで、私達の彼に対する敬意は変わりませんから、あなた方が彼のプライバシー云々と言うのは見当違いです。
国籍だけ書き入れるのに何か問題がありますか?
私達は別にオーシエ氏が元米スケ連副会長であるなどの詳しい情報を要求している訳ではありません。全てのジャッジとスケーターの国籍は公開されているのに、レフェリーの国籍は重要ではないから無視するというのですか?

最も重要なのは彼らの行為であり、国籍ではないはずです。従って、国籍を書かないと、誰かの心証を悪くするかもしれません。

心証が悪くなると言えば・・・何故あなた方は一度公開したコミュニケーションを時々公式サイトから削除するのですか?
このことも、心証を悪くしますし、あなた方が何かを隠したがっていると思う人もいるかもしれません。

しばしば別のことが頭を過り、脱線することを許して下さい。私の下手な英語を許して下さい。上達しようと努力はしていますが、スペリングミスと文法ミスが多くあることは分かっています。しかし、私にとっては改善しようと努力することが大切なのです。

それでは本題に戻りましょう。ここで私が問題にしているのはPCSではありません(ただし、PCSについても深刻な省察があります)。
幾つかの見事に実施されたエレメントのGOEについて私はあなた方の説明を求めます。これは世界国別対抗戦における羽生結弦のショートプログラムのプロトコルです。

最初の2つのエレメント、4サルコウと4トゥループ/3トゥループのコンビネーションジャンプを赤枠で強調しました。

ジャッジ2、フィリップ・メリゲはコンビネーションに+3を与えています。私は2018年のオータムクラシック・インターナショナル以降、+5/-5システムでメリゲが+5を与えたエレメントを調べてみました。基本的に彼はほとんど+5を出さないジャッジで、ジャンプに+5を与えたことはありません。

以下が彼が+5を与えたエレメントです:

  • ネイサンチェン、2018年フランス国際SPのStSq2(他のジャッジは+4が7人、+5が1人)
  • ジェイソン・ブラウン、2018年フランス国際、ChS1 ( +4が3人, +5が5人)
  • ネイサン・チェン、2019年世界選手権SP、StS4(+3が1人、+2が2人、+5が5人)
  • ジェイソン・ブラウン、2019年世界選手権SP、CCSp4(+3が3人、+4が4人、+5が5人)
  • 宇野昌磨、2019年世界選手権SP、CCoSp4(+2が1人、+3が3人、+4が4人、+5が2人)
  • ジェイソン・ブラウン、2019年世界選手権FS、StSq3(+3が3人、+4が3人、+5が2人)
  • ネイサン・チェン、2019年フランス国際SP、StSq4(+3が3人、+4が4人、+5が3人)
  • ケヴィン・エイモズ、2019年フランス国際SP、StSq4(+3が3人、+4が4人、+5が1人)
  • ネイサン・チェン、2019年フランス国際FS、ChSq1(+5が8人)
  • ジェイソン・ブラウン、2021年世界国別対抗戦FS、CCSp3 (+1が1人、+4が1人、+5が4人)

プレス要件5項目以上を満たしたエレメントを実施したスケーターにこのジャッジが+5を与えなかった理由をあなた方は説明出来ますか?

羽生結弦のショートプログラムはこちらです:

フィリップ・メリゲ、ヴァルター・トイゴ、オルガ・コゼミャキナは4サルコウに+4を与えました。 以下の項目の内、羽生に足りなかったのはどの項目か、彼らに詰問して貰えますか?

4)ジャンプの前にステップ,予想外または創造的な入り方
5)踏切から着氷までの身体の姿勢が非常に良い
6) 要素が音楽に合っている

+4だったということは、この内の2項目を満たしていなかったことになりますが、私には足りない項目を1つも見つけることが出来ません。

カレン・ブッチャー、山本さかえ、ウォルター・トイゴは、コンビネーションジャンプに+4を与えました。羽生に足りなかったのはどの項目か彼らに詰問して貰えますか?私には足りない要件を見つけることが出来ません。フィリップ・メリゲは+3と評価しましたから、彼にとっては以下の項目のどれかが欠けていたことになります。

1)高さおよび距離が非常に良い(ジャンプ・コンボおよびシークェンスでは全ジャンプ)
2)踏切および着氷が良い
3)開始から終了まで無駄な力が全く無い(ジャンプ・コンボではリズムを含む)

一体どれが足りなかったのか、彼に訊いてもらえませんか?

これはスピンです。

カレン・ブッチャー、山本さかえ、ウォルター・トイゴ、ローリー・パーカー、ジュン・スー・リー、オルガ・コゼミャキナは、フライングキャメルスピンに+4を与えました。
私には以下のどの項目が足りなかったのか理解出来ません

4)回転軸を維持する
5)創造的および/またはオリジナリティがある
6)要素が音楽に合っている

スピード競技では、勝者はゴールラインを最初に通過したアスリートです。 非常に明確で説明は不要です。

ここではジャッジが与える得点に基づいて勝者が決まります。透明性のあるジャッジングでは、その得点が与えられた理由を明確にすることが重要です。これが明確にされないと、あなた方はご自分の原則を破ることになります。透明性はあなた方が主催する競技を見るためにお金を払う観客と、とりわけこのスポーツに人生を捧げている選手達に対してあなた方が保証すべきものです。

一体、どの項目が欠けていたのでしょうか?

フィリップ・メリゲは+3を与えました。つまり、彼にとっては以下の項目のいずれかが足りなかったことになります。

1)スピン中の回転速度および/または回転速度の増加が十分
2)良くコントロールされた,明確な姿勢(フライング・スピンの場合には高さ,空中/着氷姿勢を含む)
3)開始から終了まで無駄な力が全く無い

どのブレットでしょうか?

足替えシットスピンではフィリップ・メリゲだけでなくヴァルター・トイゴも+3でした。最初の3項目の一体何が足りなかったのでしょうか?カレン・ブッチャー、山本さかえ、ローリー・パーカー、ジュン・スー・リー、オルガ・コゼミャキナは+4でした。4)から6)のどのブレットを満たしていなかったのでしょうか?

フィリップ・メリゲ、山本さかえ、ジュン・スー・リーはコンビネーションスピンに+3を与えました。1)から3)のどのブレットが足りなかったのでしょうか?カレン・ブッチャー、ローリー・パーカー、オルガ・コゼミャキナは+4でした。4)から6)のどのブレットを満たしていなかったのでしょうか?

これはステップシークエンスです:

カレン・ブッチャー、山本さかえ、ウォルター・トイゴは+4でした。プラス要件のブレットはこちらです:

1)エッジが深く,明確なステップおよびターン
2)要素が音楽に合っている
3)エネルギー,流れ,出来栄えが十分で,開始から終了まで無駄な力が全く無い
4)創造的および/またはオリジナリティがある
5)全身の優れた関わりとコントロール
6)シークェンス中のスピード,またはスピードの加速が十分

4)、5)、6)のどの項目が欠けていたのか彼らに訊いてもらえませんか?

これは問題の片面に過ぎません。ジャッジ達は全てのブレットを満たしているエレメントに低い得点を与える一方で、満たしているブレットが不十分なエレメントに値しない得点を与えているからです。
ここではこのチェックは省略しますが、いずれ全ての選手の全てのエレメントを調べなければなりません(ShouldではなくMustです)。

これは羽生結弦のフリーです:

プロトコルは以下の通りです:

私はクリーンに実施されたエレメントだけを見ると書きましたが、深刻な問題があります。周知の通り、羽生は4サルコウを予定していた2本目のジャンプがシングルになりました。しかし彼のこのミスは基礎点に反映されます。当然のことながら、彼には9.70ではなく0.40が与えられました。しかし、ジャンプはステップの後で実施され、高さがあり、流れが途切れることもありませんでした。
カレン・ブッチャーは一体どのマイナス項目に基づいて羽生に-1を与えたのでしょうか?
私には理解出来ません。

実際には、GOEマイナスの理由が見つからないだけでなく、私の考えでは少なくとも+2に値します。得点にすると僅かな違いなのは分かっていますが、僅かな点差が試合の結果を左右することもあるのです。競技の公平性のために基礎点に関係なく全てのエレメントが正しい方法で評価されることが重要です。何かがおかしいと私は心配になります。

そして何かがおかしいと言えば、3A+2Tのコンビネーションジャンプの得点です:

+2 カレン・ブッチャー
+3 フィリップ・メリゲ、山本さかえ、ヴァルター・トイゴ、オルガ・コゼミャキナ
+4 ローリー・パーカー、ジュン・スー・リー

6項目全てを満たしているコンビネーションに彼らは一体どんな理由でこのような低得点を与えたのでしょうか?

その僅か3秒後(しかも3秒間ずっとステップを入れています)羽生は見事な3ループを実施しました。以下がその得点です:

+1 カレン・ブッチャー(何が起こったのでしょうか?彼女の+2以上のボタンは全て故障していたのでしょうか???)
+2 フィリップ・メリゲ、山本さかえ
+3 ヴァルター・トイゴ、ローリー・パーカー、オルガ・コゼミャキナ
+4 ジュン・スー・リー

ISU殿、ジャンプの回転数は基礎点にとって重要でもGOEのプラス要件には関係ないことをジャッジに説明して貰えますか?何故男子の3回転ジャンプに+5を与えてはいけないのでしょうか?一体、どの項目が欠けていたのでしょうか?私は心底答えが知りたいです。

どういうジャンプが良くて、どういうジャンプが悪いのかあなた方はご存じのはずです。ジャッジセミナーであなた方はGOE+5に相応しいジャンプの例として羽生の3アクセルの映像を使っています。羽生がプログラム最後に実施した素晴らしい3アクセルは+5を何個獲得したと思いますか?ゼロです。+3が2個(メリゲとパーカー)、+4が5個(ブッチャー、山本、トイゴ、リー、コゼミャキナ)、+5は1個もありませんでした。そして6ブレット全てを満たしても1個も+5を得られないのだとしたら、羽生は+5を貰うために一体幾つのブレットを満たさなければならないのでしょうか?

私はスピン、ステップとチェックを続け、他のジャンプも確認しました。そして完璧なエレメントでもそうでないエレメントでも不可解な得点を見つけました。問題は明らかです。得点はルールに則って与えられていないのです。もし、これらのジャッジ達が全員1年か2年かけてルールを学習する必要があるなら(あるいは10年か20年かもしれません)、必要なだけ彼らに時間を与えるべきです。その間、別のジャッジ達が試合のジャッジを務めればいいのですから。

☆筆者プロフィール☆
マルティーナ・フランマルティーノ
ミラノ出身。
書店経営者、雑誌記者/編集者、書評家、ノンフィクション作家
雑誌等で既に700本余りの記事を執筆

ブログ
書評:Librolandia
スポーツ評論:Sportlandia
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☆羽生君に最も厳しかったジャッジの中に日本ジャッジも含まれている・・・本当に泣きたくなります・・・
ちなみにこのジャッジは羽生君には平均以下の厳格な採点をする一方で、ネイサンには平均より高い得点を与えています(彼女もマルティーナさんの調査対象ジャッジのリストに含まれていますから、その内に過去の試合まで遡って洗いざらい全部調べてくれるでしょう)。

国別と言えば、真央ちゃんや高橋大輔さんが出ていた頃は日本選手に気前よく得点を弾む、日本選手に花を持たせる大会(一方、海外の選手には賞金を差し上げて日本観光を満喫して頂く)というイメージでしたが、最近は傾向が変わったのでしょうか?

国別のガイドラインを読むと開催国連盟がジャッジを選ぶことになっているようですが・・・

  • ヴァルター・トイゴ(採点中のカンニングがバレて2年間資格停止の前科有り)
  • ローリー・パーカー(偏向ジャッジとして常に名前が挙がる人物で、平昌の露骨なナショナルバイアスについて同国のジャーナリスト、フィリップ・ハーシュがISUに問い合わせたほど)

フィリップ・メリゲもナショナルバイアスが露骨なジャッジで、平昌五輪の男子ショートでは自国のシャフィク・ベセギエをフリーに滑り込ませるために(実際は26位で予選落ち)、マッテオ・リッツォ(23位)に25位の得点を与え、べセギエには平均より4点以上高い23位の得点を与えるという、あり得ない採点をしていました。

日本スケ連はなぜわざわざこのような曰く付きのジャッジばかりを呼んだのでしょうか?

花試合で感染爆発中の大阪開催だったから、優秀なジャッジ達にはことごとく断られてこんな人材しか集められなかったのでしょうか?

ローリー・パーカーとヴァルター・トイゴについてはマルティーナさんが過去に分析記事を書いてくれています。

Sportlandiaより「ローリー・パーカー」

Sportlandiaより「ヴァルター・トイゴ(+2019年グランプリファイナル)」

Published by Nymphea(ニンフェア)

管理人/翻訳者(イタリア在住)。2011年四大陸チゴイネ落ち @pianetahanyu