Sportlandiaより「Take-Off(踏切)」

マルティーナさんの分析記事
今回は踏切について

原文>>

マルティーナ・フランマルティーノ著
(2021年1月17日)

明らかに前向き(アクセルジャンプの場合は後向き)の踏切はダウングレードジャンプと見なされる。

これは私の意見ではありません。テクニカルパネルのハンドブックに書かれた文章です。アクセルは前向きで踏み切らなければならず、そうでないジャンプはダウングレードと判定されなければなりません。

それでは2つの異なる国内選手権における2つの異なるアクセルジャンプに注目してみましょう。

左のスクリーンショットの1枚目はバックカウンター、右足を振り上げ、4枚目が踏切です。5枚目で既に空中にいますが、彼は前向きです(彼の腰部を見て下さい)。最後の画像は着氷です。

右のスクリーンショットの1枚目はスプレッドイーグル、右足を振り上げ、4枚目が踏切です。彼は既に完全に後ろ向きになっています。このジャンプは2アクセル(基礎点3.30)にダウングレードされるべきです。そしてGOEは・・・

他の全てのプラス要件を満たしていたと仮定しても、2)の踏切が良い(Good Take-Off)は欠けています。つまり、このジャンプはマイナス項目を適用する以前に最高でも+3のジャンプです。稚拙な踏切でしょうか?間違いなく稚拙な踏切でした。最も寛大な-1を適用しましょう。回転が足りませんか?いいえ、私はそれほど厳格ではありません。もしジャンプ着氷時の回転不足を示す<<マークが付いた場合、ジャンプは回転数が1ランク下の基礎点に下がり、GOEはマイナスになります。しかし、プロトコルにはメークは付いていません(これはただ単にISUが踏切時の回転不足に対するマークを確立していないためです)。ですからマイナスは最小の-1に留めましょう。このジャンプは大目に見ても+1が妥当で、基礎点はダブルアクセルの3.63点に下がるべきでした。

大きなミスではありません。たった1つのエレメントに対してジャッジパネルから7.25点贈られただけです。

【追記】読者がこのジャンプが正しいアクセルの跳び方ではないことを示すスロー映像を共有してくれました。

ツイートが削除される場合に備えて何枚かのスクリーンショットを撮っておきました:

まさに見事なバクセルです。残念なことにこのような名前のジャンプは存在しません。従って、本来なら2アクセルとコールすべきです。

誤解がないように明記しておくと、最初のスクリーンショットは大会中のジャンプ、2番目のスクリーンショットは練習中のジャンプです。練習中のジャンプの画像は、彼が試合でたまたまこのような跳び方になったのではないことを示しています。これが彼のアクセルの技術なのです。当然のことながら、マークはスケーターがその試合で実施したジャンプに対してのみ与えられなければなりません。

今度はコンビネーションを見ましょう。右側のスケーターのセカンドトゥループはISUによれば一般的にチートと呼ばれる踏切です。先程と同じ2人のスケーターの画像を比較してみましょう。

どちらのスケーターでも最初の二枚はファーストジャンプの踏切りです。残念なことに右側のスケーターはカメラが近すぎて足元は見えませんでした。
3枚目は最初のジャンプの着氷、4枚目はセカンドジャンプの踏切です。
5番目のスクリーンショットで、左側のスケーターはやや前向きで、体重は右足にあり、右肩は左肩よりずっと低くなっています。 彼は身体をやや回転させていますが、最後の画像から彼が既に空中にいる時に完全に前向きになっているのが分かります。

右側のスケーターの5枚目の画像では、彼がほぼ前向きでまだ両足が完全に氷上にあるのが分かります。彼が完全に回転しきった瞬間のスクリーンショットを撮ることは出来ませんでしたが、この体勢から彼の体重がまだ完全に氷上にあり、もう少し回転しないと離氷出来ないのは明らかです。最後の画像で彼に空中にいますが、踏切から180度回転しています。これはトリプルではダブルのトゥループです。後半のジャンプなので基礎点は1.43になります。4Fの基礎点12.10と合わせると、基礎点合計は13.53、GOEは1.10(+1)で、14.63点が妥当でした。

実際の得点との点差は6.27、アクセルの点差7.25点と合わせると13.52点になります。スケーターの技術点は113.92ではなく、100.40が妥当でした。ここでは着氷時の力み(エフォートレスとはどういう意味でしょうか?)とコンポーネントは考慮していません。
うっかりしていました。テクニカルパネルはプレローテーションは普通の速度でのみ見なければならないことを忘れていました。フリップとルッツのエッジにはスローモーションを使用出来ますが、プレローテーションでは使えません。何故でしょう?

 

☆筆者プロフィール☆
マルティーナ・フランマルティーノ

ミラノ出身。書店経営者、雑誌記者/編集者、書評家、ノンフィクション作家 雑誌等で既に700本余りの記事を執筆
ブログ
書評:Librolandia
スポーツ評論:Sportlandia

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☆昨年、ISUは一度、プレローテーションのあるジャンプ、トゥアクセル、チートジャンプを減点対象にするというコミュニケーションを発表しましたが、抗議の声が上がったとかで1ヵ月もしない内に撤回しました(私はロシアのラケルニク辺りが反対したと確信しています)。

ただ、私はネイサンはプレロテ無しの技術的に正しいルッツ/フリップを跳ぶトゥジャンパーだと思っています。彼のセカンドジャンプの3Tに注目したことはありませんでしたが、今年の全米は余り調子が良くなかったのか、全体的にジャンプが重かったので、彼比で余り出来の良くないセカンド3Tだったのかもしれません。

ロシア女子の4ルッツと4フリップはスローで見ると1周近く氷上で回転を稼いていて、空中では実質3回転しかしていません。
このような方法で実施されるジャンプが4ループより基礎点が高いのはやはり納得が行きません。

マッシミリアーノさんとアンジェロさんはこのような技術の正しくない踏切は若くて身体が軽い内はいいが、身体が重くなったり、氷の状態が劣悪だったりと言う要因に影響を受け易いと指摘していました。
そう言えば、氷の状態が最悪だった2019年フランス国際では男子はネイサン以外ジャンプがボロボロ、女子もコストルナヤ以外、回転不足とエッジエラーだらけでした。
同じく氷に問題があったと言われていた2018年ヘルシンキGPの男子フリーでも羽生君以外の選手は全員自爆していました。

息が長く、年齢が進んでも回転不足のないクリーンなジャンプをずっと跳べているカロリーナ(31歳で3F-3T)やリーザ(24歳で3Aを含む全種類の3回転ジャンプが完璧、コロナ前には4Tも)は共にプレロテのない技術的に完璧なジャンプを跳んでいます。18歳で4サルコウをマスターした紀平梨花ちゃんもプレロテ無しのクリーンなジャンパーでルッツとフリップの跳び分けも完璧です。

羽生君は卒業論文の中でトゥジャンプのフリップとエッジジャンプのループのプレローテーション、いわゆる稚拙な踏切について言及しています。
彼の実験によれば、プレロテの度合いを測定し、許容範囲の基準を決めてAIを使って程度によってGOEマイナスや減点を適用することは技術上・理論上は可能なようです。

北京五輪後にチートジャンプルールが再採用されるかどうかは分かりませんが、フィギュアスケートの発展のためにも、踏切のクリーンなジャンプとチートジャンプが得点で差別化され、正しい技術が奨励される方向に変わっていけばいいですね。


イタリアでは今週の月曜日からロックダウンが緩和され、外食が解禁になりました。
ただ、屋内席は使用不可で、テラスや店前の通りなど、屋外でのみ食事をすることが可能で、席数は通常に比べてかなり制限されていますので、人気レストランは数日前に予約しなければ席が取れません。

今週初めはお天気が悪くて肌寒かったので屋外での食事には不向きでしたが、外食に飢えていたイタリア人はそんなことではめげません。

もの凄く食べにくそう😅・・・

 

そしてずっと面会禁止になっていた高齢者施設も月曜日から要予約で面会を再開したそうですが、こういう状態みたいです😭・・・

何か昔見たウィルス映画のワンシーンのよう😭😭😭・・・
でも私の友人が久しぶりに施設に入居中のおばあちゃんを訪問したそうですが、本当にこうだったと言っていました。訪問者は当然、施設の建物に入る前にPCR検査を受けなければなりません。

この穴付きアクリル板のアイデアは誰が思いついたのか?
でもせめて手だけでも触れ合えるように~というのはイタリアらしい発想だなあと思います。
コロナ禍でキス&ハグがダメになったら肘でタッチし合う民族ですから。

しかし、穴付きアクリル板はきっと特注だから大量生産して全国の施設に設置するのは結構大変だっただろうな、コロナが収束した後はどうするんだろう、リサイクル出来るんだろうかなどとつい考えてしまいます。

 

今回のコロナ禍で強く感じたのはイタリア人の助け合いの精神です。
州によって異なりますが、北部のほとんどの州では2月中旬から飲食店はテイクアウトのみでした。近所のバールの主人が言うには収入は75%減だったそうですが、それでも、イタリアの人達は馴染みの店をつぶさないために、積極的にテイクアウトを利用していました。私達も毎日、近所のバールで午後のコーヒーと翌朝の朝食用のクロワッサンをテイクアウトするようにしていました。

ほとんど軟禁生活のようだった昨年3月から5月にかけての第一波のロックダウン中は、マンションなどでは住人の間でグループチャットを作り、インターネットに疎い一人暮らしのお年寄りに毎週のように更新されていたコロナ法令の内容を伝えたり、代わりに買い物に行ってあげたり、という助け合いが普通に行われていたそうですし、職を失い生活に困っている人々にボランティアで食料を届けて回っている人達もいました。
勿論、ノーマスクで広場に集まって抗議デモをする人や、お店のシャッターを閉めて隠れパーティを開くバールなど、愚かな行動をする人達もいましたが。

ロックダウン緩和になったとは言え、イタリアのワクチン接種率はイギリスやアメリカに比べると遅れていますし、感染力の強い変異種も蔓延していますので油断は出来ませんが、昨年に比べると、ウィルスと上手く共存しながら前に進めている気がします。

Published by Nymphea(ニンフェア)

管理人/翻訳者(イタリア在住)。2011年四大陸チゴイネ落ち @pianetahanyu