Spotlandiaより「北京におけるPCS/1: シリアスエラーと基準」

マルティーナさんの分析シリーズ。今回は北京オリンピックにおける「シリアスエラー」ルール適用に関する疑問点。そしてISUジャッジセミナーではPCSの各項目の評価についてどのように説明されているかについてまとめられています。

原文>>

マルティーナ・フランマルティーノ著(2021月4月23日)

私はフィギュアスケートのジャッジではありませんし、そうなろうと考えたこともありません。何年もの間、明らかなミス以外、氷上で起こっているいることを理解する私の能力は限られていましたので、私は何も判断出来ませんでした。氷上で起こっていることをより理解出来るようになった今、私は自分の知識不足、特に演技構成点の見解に関する知識不足を感じるようになりました。このために、PCSについてはこれまであまり書いてきませんでした。しかし、自分に競技を評価する十分な能力がないと感じているからといって、深刻な問題に気が付かない訳ではありません(しかもジャッジ達は、私が持っている資料の全てを冷静に見せてもらえることなく、短時間で得点を出さなければならないのです)。気が付かずにはいられないほど、問題は極めて深刻なのです。

最初から始めましょう。ISUはPCSを採点するための基準を表にまとめています。

2020年5月以降に更新があったかどうかは正直覚えていません。ISUは非常に多くの文書を公開していますので、その全てを把握するのは困難です。

追記:2021年8月バージョンがあります。もしISUが削除していなければ、こちらです。しかし私が見間違いしていなければ、一言一句全く同じ内容です。

引用元

コミュニケーション No.2334
シングルおよびペアスケーティング
難易度と出来栄え点(GOE)採点のためのガイドライン
2020/21シーズン

こう明記されています:

この文章をよく読んで下さい:

シリアスエラーとは転倒、プログラムの中断、および構成の完全性/連続性/流動性、および/または音楽との関係に影響を与える技術的ミスのことである。

つまり、転倒が無い場合、あるいはプログラムの芸術的側面、プログラムの流れ、音楽との繋がりを妨げるバランスの喪失がなければ、スケーターがPCS各項目で獲得出来る最高得点は10.00ということになります。

それではこのエレメントを見て下さい。このエレメント全体の動きを見るために、出来るだけ多くのスクリーンショットを撮りました。羽生は4サルコウのいつもの準備を始めます。一連のスクリーンショットは右から左へ進行しており、羽生の体勢は完璧であることが分かります。

右のスクリーンショットでは、羽生の左足首は奇妙な曲がり方をしているのがはきっりと分かります。ブレードが氷上の穴に嵌り、彼は跳び上がるタイミングを失いました。しかし、彼の身体は落ち着いており、バランスを崩していません。

身体は開いたポジションになっています。3回転ジャンプと4回転ジャンプを跳べるスケーターがシングルジャンプを実施すると、身体は開いたポジションになります。ディレイドシングルアクセルでも羽生は身体を開いており、彼のこのポジションについて文句を言う人は誰もいませんでした。この場合、彼は故意で行った訳ではなく、支えを失ったために身体が開きました。しかし彼はそれ以上何も行っていません。

彼はサルコウの準備をし、冷静さを失うことなくシングルを実施して着氷し、すぐにスプレッドイーグルに繋げています。彼はバランスを崩すことなく、プログラムの表現は一瞬たりとも中断されませんでした。彼はこのジャンプで14点失いました。不運なことですが、やむを得ないことです。しかし、このジャンプを跳びそこなったことが、コンポーネンツに何の関係があるのでしょうか?

そしてこちらをご覧ください。これは私の意見だけの意見ではありません。2019年、ISUは非常に興味深い動画を何本も公開しています。話しているは、最も重要なアイスダンスのジャッジの一人、ジェニー・マスト(彼女は北京でもアイスダンスのジャッジを務めていました)で、ISU主催のジャッジ訓練セミナーのスピーカーを務めています。イントロダクション動画の中で、彼女は特にシリアスエラーについて話しています。16:35でマストはこう明言しています:

過去の会議で出たシリアスエラーに関する質問ですが・・・そうですね、GOE-4から-5のミスがシリアスエラーです。そして答えは・・・ノーです!必要ではありません。シリアスエラーは転倒と同じくらい深刻なミス、そして転倒のように破壊的なミスです。プログラムを1~2秒以上中断するミスと言えますが、プログラムを本当に混乱させるミスです。

羽生のミスは観者とプログラムの繫がりを中断するものでしたか?いいえ。羽生から大量の得点を奪ったミスでしたが、プログラムは破壊しませんでした。ルールを知らない私の母は、このシングルサルコウをミスだとは思いませんでした。一方、下のミスはすぐにミスだと気付きました。

私の意見では、(この上限が非常に独断的に適用されていることを考慮しなくても)このように厳格な上限を適用するミスの深刻度はあまりにも多くの要因に依存するため、演技構成点の上限ルールは廃止すべきだと思いますが、このルールは廃止されるまでは、宇野のケースでは、「プログラムの流動性と音楽との繋がりに影響を与える」と見なすことが出来ますので、彼の演技構成点は下げることが出来ます。「下げることが出来る」、であって「下げるべき」ではありません。

私はこのルールが嫌いです。羽生のケースは、ルールを尊重したいのであれば、上限が適用される理由は全くありませんでした。羽生の到達可能な最高点は10.00でした。宇野の場合はより裁量の余地があり、適用される可能性も適用されない可能性もありました。このケースでは、ジャッジが寛大になり、ミスはあったものの、シリアスエラールールは発動させないことにしたのか、このミスは宇野のコンビネーションのGOEに影響を与えましたが、PCSにはそれほど影響しませんでした。私の意見では、宇野のPE、CO、IN (-0.50ではなく-0.25)は少し下がりましたが、SSとTRは何も影響を受けませんでした。スケーター達はどのような得点に値しますか?

ジェニー・マストの説明は非常に興味深いです。マスト自身がどのような採点を行うかについては議論の余地がありますが(彼女の評価では、北京の表彰台はパパダキス/シゼロン、ハベル/ドノウエ、チョック/ベイツで、シニツィナ/カツァラポフは4位でした)、彼女のセミナーには注意深く耳を傾ける必要があります。各セミナーの動画セミナーの下に要約スライドを挿入しました(ペア、アイスダンス、シンクロナイズドスケート専門のスライドは無視しました)。

Skating Skills(スケート技術)

基準
全体的にクリーンで正確。エッジのコントロール、スケーティングの表現手段(エッジ、ステップ、ターン等)によって披露される氷上におけるフロー(流れ)、クリーンな技術とエフォートレスパワー(努力が見えない力)を使用した加速とスピードの変化
・バランス、リズミカルな膝の動作、足の正確な置き場所
・フロー(流れ)とグライド(なめらかな滑り)
・パワー、スピード、加速の変化に富んだ使用
・多方向滑走の使用
・片足滑走の使用

基準
バランス、リズミカルな膝の動作、足の正確な置き場所
プログラム全体を通してブレードと身体がコントロールされている
・柔らかな膝の動作
・フリーレッグの位置が正しく、体重移動が正しく行われている

基準
パワー、スピード、加速の変化に富んだ使用
・スピードとパワーが印象的。エッジで引っかくことなく、加速・減速する能力は高得点に値する
・スケーターはスピードを自在に変え、加速出来る能力を示さなければならない

基準
フロー(流れ)とグライド(なめらかな滑り)
・フローとは、あるポジションから別のポジションに冷静に、流れを途切れさせることなく簡単に移動することである。

 -上述のフローの定義により、フローは基礎的な技術とバランスを反映しているため、スケーティングの基準に属している。フローはリズミカルな膝の動作と氷上のブレード上にある身体のコントールによってもたらされる。

グライドとは、ブレードのエッジが氷上を楽々動いていることである。

基準
多方向滑走の使用
・素早く簡単な方向転換
・右回り、左回り、前方滑走、後方滑走、両方向への身体の回転

片足滑走の使用
・両足滑走を最小限に抑える

Transitions(技と技の繋ぎ)

基準
トランジションにはフットワーク、ポジション、動作、ホールド(アイスダンスとシンクロナイズドスケーティングにおいてスケーター同士が腕や足や肩などの部位を絡ませて繋がっていること)などが含まれる。
・一つのエレメントから別の要素まで動きが途切れない
・多様性
-アイスダンスやシンクロナイズドスケーティングにおけるホールドの多様性も含む
・難度
・クオリティ
・エレメント内のトランジション(シンクロナイズドスケーティングのみ)

よくある間違い
・トランジションの得点は必ずしも演技構成点で最も低い得点ではない

・トランジションは1分当たりの動作の数ではない

基準
技術要素への入りと出を含む中断のないユニットへの様々なトランジション及びエレメントの統合が、動作の連続性を形成している。

基準
多様性
・様々な身体の動作およびスケーティング動作、多方向のターン
・様々なホールド(アイスダンスとシンクロナイズドスケーティングのみ)
・様々な小さなリフトの使用(ペア)

基準
難度とは;

・一連のステップと様々な方向へのターンを見せる
・正確なエッジでグライド(なめらかな滑り)しながら、身体を主軸からずらす
・調和的にエレガントに実施されるステップ&ターンあるいは一連の動作
・ブラケットロッカー、ツイヅル、チョクトー、アウトサイドモホークを完璧に実施する
・上述を同時に行う

基準
クオリティ
・繋ぎのステップと動作(身体と脚)の卓越性の度合い

Performance(パフォーマンス)

基準
・肉体的で、感情的で、知性的な関わり合い(Involvement)
・投影(Projection)
・身のこなしと動きの明瞭さ
・動きとエネルギーの多様性とコントラスト
・個性とパーソナリティ

基準
肉体的で、感情的で、知性的な関わり合い(involvement)
・コントロールされた、誠実で純粋な理解と動作の実施

基準
投影(Projection)
・エナジーを放出し、観客との目に見えない繋がりを生み出す能力
・投影は必ずしも歓びや情熱を表す、うわべだけの動作のことではない。

基準
身のこなしと動きの明瞭さ
注釈:必ずしもクラシックバレエのポジションである必要なない

基準
動きとエネルギーの多様性とコントラスト
・身体の様々な部分の使用を含むバラエティに富んだ動き
・コントラストは様々な方法で生み出される可能性がある

-似たような、または異なるテンポとリズムの様々な動き
-動きの強さ、サイズ、レベルの変化
-様々な動きの形と角度

Composition(構成)

上手く構成されたプログラムが以下を持っている
・動機と目的
・バランスの取れたエレメント配置
・音楽構造に従っている

基準
目的
-意図、観念、ビジョン、ムード
・空間の多次元使用と動きのデザイン
・パターン/アイスカバレッジ
・フレーズ
-音楽のフレーズに合わせて構成された動きとパート
・構成の独創性

基準
目的
・音楽フレーズと音楽構造に合わせた動きとその配置が目的にかなっており、ムードを作り上げている
・ムード=エモーション
-動きを通してムードを表現出来なければならない。

基準
空間の多次元使用と動きのデザイン

・興味深いパターンを使った、異なる平面またはレベル(低、中、高)に沿った身体の動き
-空間を満たすために身体のあらゆる部分を使って動いている
-抑えられた/コントロールされた/拡張された、大きな、または小さな動きが含まれる
・空間:スケーターのすぐ周りの空間からスケーターがその動きによって到達出来る可能な限り広い場所まで
-パターンはこの空間で作られる

基準
フレーズ

・音楽の起承転結を成すあらゆるフレーズが一つのまとまりを形成している
・この音楽フレーズに同調して選ばれ、組み合わされた動作と、次のフレーズへと入っていく簡単で自然な流れ

基準
構成の独創性

・独創性には、音楽の根底にあるビジョンから喚起された独創的な構成を追求した動きとデザインの個人的視点が含まれる
・独創性があると、新たな次元が生み出される。
・独創性の概念は動きと配置に関連している

結論
プログラムに動機と目的があり、エレメントがバランスよく配置され、音楽構造に従っていなければならない

Interpretation(音楽の解釈)

基準
音楽のリズム、キャラクター、内容を、氷上での動作に個性的、創造的、純粋に変換する
・タイミング:音楽にピッタリ合った動作とステップ
・それが明確に識別できる場合、音楽のキャラクラ―/感情、リズムの表現
・音楽の詳細とニュアンスを反映する技巧を使用する
・音楽のキャラクターとリズムを反映するスケーター間の結びつき(ペア/アイスダンス)

全般
動作を使ってリズム、キャラクター、音楽的詳細の内容を個性的に純粋に氷上で表現する。
これが達成出来た時、スケーターは音楽的感性を示している。

基準
音楽にピッタリ合った動作とステップ(タイミング)
・全ての動きとステップが音楽とピッタリ合っている。
・リズムやテンポの正確さ、効果的な動作、氷の表面におけるエフォートレスな動きを通して音楽を氷上に伝達する能力
-リズムの連続性
-テンポ/リズムの変化の認識

基準
音楽のキャラクラ―/感情、リズムの表現

・音楽のキャラクターは音楽自身によって表され、次の特徴:エナジー、サウンド、エモーションなどを含んでいる
・音楽のキャラクターが変化する時、スケーターはこの変化を見せなければならない
・音楽はリスナーに感情を伝達する
-スケーターはこの感情を動きによって伝えなければならない

基準
音楽の詳細とニュアンスを反映する技巧を使用する
技巧とは、動作を通して音楽の詳細を表現するスケーターの感性のことである。

ニュアンスとは、作曲家および/またはミュージシャンによって作られた音楽の強さ、テンポ、ダイナミクス、調音の微妙なバリエーションのことである。

結論
動きと正しいタイミング(アイスダンスの場合)を通してリズム、キャラクター、音楽の内容を見せることの出来るスケーターの能力

マストは演技構成点の各項目について説明した後、ジャッジ達が最もよくやる間違いについて解説しています。これは重要なポイントです:ジャッジ達はミスを犯し、ISUはその事実を認識しています。ジャッジを批判することは、必ずしもそのジャッジや間違ったスコアを受け取ったスケーターに対する攻撃ではなく、多くの場合、事実を強調しているのです。誤審が存在し、ジャッジの訓練を強化することが重要なら、ISUは誤審のリスクを可能な限り低減するための方法を見つけなければなりません。どのようなミスが起こりがちなのか?マストはその幾つかをリストアップしています。

よくある間違い:

コンポーネンツの評価でよく起こる間違い
・特定の基準(お気に入りの基準!?または自分が一番よく覚えている基準)だけを使用し、プログラムの「平均」にする
・プログラムに含まれる4回転ジャンプの数に基づいて高い演技構成点を与える
・滑走順に基づいて演技構成点を評価する
・そのスケーターの前の大会/成績に基づいて演技構成点を評価する

スケーティングスキルの評価でよく起こる間違い
・滑走方向(および変化)や片足滑走を評価するのを忘れる
・演技終盤に配置されているステップシークエンスでのみ実施されるディープエッジ、ステップ、ターンに高得点を与える。実際は、プログラムの随所になければならない

トランジションの評価でよく起こる間違い
以下を忘れる
・トランジションがない、またはトランジションが殆どない部分のプログラム(例:クワドの前)
・スケーティングと身体動作の多様性
・「難しいバリエーション」や難しいターンだけでなく、身体動作(およびペア/アイスダンスにおけうホールド)としての難度

パフォーマンスの評価でよく起こる間違い
以下を忘れる
・パフォーマンスは関わり合い(Involvement)や投影(Projection)だけでなく、身のこなしや動きの明瞭さも含まれてること
・シリアスエラーおよび/転倒が全体のプログラム全体の継続性と流動性に影響を与えたこと(特に後半で盛り上がったプログラムの場合、前半のミスは忘れられがち)

コンポジションの評価でよく起こる間違い
以下を忘れる
・スケーターがジャンプの準備のために行ったり来たりしている部分のプログラム
・動きのパターン(空間を多次元で使えているか、動作のデザイン)

音楽の解釈の評価でよく起こる間違い
関わり合い(Involvement)と音楽的感性(musical sensitivity)は類義語ではない!
・関わり合いはパフォーマンスの項目で評価される
・音楽的感性は、適切な動きを通して音楽的な詳細、音楽のキャラクターと構造を理解し、その深い知識を示す能力のことである


幾つかの本当に重要なポイントが印象に残っています。

よくある間違いの中に、

プログラムに含まれる4回転ジャンプの数に基づいて、高いPCSを与える」、「滑走順またはスケーターの以前の成績に基づいてPCSを評価する」というのがあります。

Skating skills

クリーンで確実であること、ディープエッジの使用、ステップとターン、氷上のある位置から別の位置への流れ、プログラム全体でのブレードと身体がコントロールされている、柔らかな膝の動作、速度を変化させる能力、加速と減速。右回りと左回り、前方滑走と後方滑走など多方向スケーティングを使用し、体を両方向に回転させ、両足滑走を最小限に抑える。

スケーティングスキルの採点でよく起こるミスとして、「滑走方向の変化と片足滑走を評価することを忘れ、スピードとパワーだけを高評価する」、「演技終盤のステップシークエンスでのみ実施されているディープエッジ、ステップ、ターンを高評価する」を挙げています。確かに、彼方此方で見られる間違いです!

Transitions

技術要素の入りと出を含む中断のない動作の連続性、多様性、難度、正確なエッジ、調和、優雅さ、クオリティを伴ってなめらかに滑りながら、身体を主軸から外す動き。

トランジションの評価でよく起こるミスの一つとして「トランジションがない、また僅かしかない部分のプログラム(例えば、クワドの前など)を忘れてしまう」を挙げています。

Performance

実施される動作、観客とのコネクション、動きの明瞭さ、個性を理解する。

パフォーマンスの評価でよく起こるミスとして、「パフォーマンスは関わり合い(Involvement)や投影(Projection)だけでなく、身のこなしや動きの明瞭さも含まれてることを忘れる」を挙げています。

Compositions

上手く構成されたプログラムにビジョンとムードがある。要素の配置バランス、アイスカバレッジに優れ、空間を多次元で使っている、様々なレベルでの身体の動き、開始、展開、終結が音楽フレーズとマッチし、一つのまとまりを作り上げている。

コンポジションの評価でよく起こる間違いとして、「スケーターがジャンプの準備のために行ったり来たりしている部分のプログラムを忘れる」を挙げています。

Interpretation

音楽に合った動き、リズムの変化の感知、音楽の持つキャラクターの表現。

音楽的感性は、適切な動きを通して音楽的な詳細、音楽のキャラクターと構造を理解し、その深い知識を示す能力のことであることを覚えておくことが重要。

ルールはお分かり頂けましたね?

今回、私は初めてある試みをやってみました。幾つかのプログラムを25%の速度で視聴してみたのです。時間的な理由で数人のスケーターのショートプログラムのみ検証し、スケーターが何かを行う度に、スクリーンショットを撮りました。私はまずジャンプを見ました:踏切で1枚、回転数に関係なく空中姿勢を1枚、着氷時1枚のスクリーンショットを撮りました。スピンでは回転数を数えるために半周ごとにスクリーンショットを撮ろうと試みましたが、同じ瞬間に動画を止めるのは困難でした。というのも映像は全てのスピンの特定のポイントで見やすアングルから、判断が困難なアングルに切り替わるからです。

しかし、いつものように私の記事は長いので、各スケーターの北京での演技に関する私の見解は次回に回したいと思います。

*******************

☆この後、マルティーナさんは北京の主要選手のプログラムをスローで見直し、GOEおよびPCSの評価基準に則って得点を検証していきます。特定の選手達が、まさにこのジェニー・マスト氏が指摘する「よくある間違い」の通りに、ルールのガイドラインで解説されている基準から乖離した高得点を贈られているのがよく分かります。読んでいるだけで虚しくなってきますので訳しませんが、こちらから原文を読むことができます。

この記事で解説されている、実際にはISUのジャッジセミナーで講師のジェニー・マスト氏が解説しているPCS各項目の評価基準を読むと(GOEの各要件もそうですが)、もしルール通りに正しく採点されたなら、誰も羽生結弦には勝てない、それどころも近づきもしないだろうと思います。彼はここで解説されていること全てを完璧に実施出来ているだけでなく、あまりにも「完璧」を追求し続けたために、更にその先、誰も見たことのない境地に達してしまっているからです。

その一方で、最近の選手達が、PCSの基準とされていることが如何に出来ていないか、にも拘わらず如何に不相応な高得点を貰っているかが分かります。

最もジャッジの主観が入るPerformanceでさえ、プロジェクション(投影)、身のこなし、動きのバラエティとコントラストなど、複数の評価基準が定められており、その多くは年齢や経験を重ねてようやく得られる「成熟」が求められるものであり、決して4回転ジャンプが全て決まってガッツポーズをしたからといって、高得点を与えていい訳ではないのです。

最近の男子シングルではプログラム曲の内容や背景、リズムやフレーズに対する研究と理解、氷上におけるパターンやデザイン、要素への入りと出の工夫がますます疎かにされていると個人的に感じていますが(曲名と作曲者程度の知識しかなく、滑っている人もいますよね?)、それは選手のせいではなく、ジャッジの採点傾向とそれを放置しているISUのせいです。

PCSの基準として定義されていることを全て完璧に実施しながら、転倒などの大きなミスがあったプログラムより、これらの基準をほとんど満たしていないけれど、ジャンプを全て着氷したプログラムの方が演技構成点で高く評価されるのはおかしいですし、ルールにも則っていません。

しかし、ジャッジセミナーでは、このようにきちんと分かりやすく説明され、ご丁寧にジャッジが陥りやすい間違いについてまで解説されているのです。

ジャッジの皆さんはこのセミナーを受けていないのですか?
それとも居眠りしていたのですか?
それともルールを守ることより、自国連盟の意向に沿う方が大切なのでしょうか?

Published by Nymphea(ニンフェア)

管理人/翻訳者(イタリア在住)。2011年四大陸チゴイネ落ち @pianetahanyu