アンベージ・ウィンターコーナー「超一流選手は裏切らない」

毎週水曜日にOA Sportに掲載されている連載「アンベージ・ウィンターコーナー」第7回から
筆者がマッシミリアーノさんにインタビューする形式で先週1週間の冬季競技のハイライトについて解説しています。

とりあえず羽生君の部分だけ抜粋します

原文>>

超一流選手は裏切らない:
羽生、シフリン、サーブリーコヴァーが軌跡を残す

 

フランチェスコ・パオーネ(2019年11月27日)

(NHK杯について)具体的な議論に入ろう。
羽生結弦が披露した内容について君の詳しい分析を聞かせて欲しい。

予想通りあっさり300点を超えた。
2大会連続でこの大台を超え、これまでのキャリアでは合計9回300点超えを果たしている。
これは圧倒的な記録で、国際大会で300点越えを5回以上果たした選手は他に誰もいない。
4度目のNHK杯優勝によってグランプリ大会20回目の表彰台(男子シングルでこの記録を上回るのはプルシェンコのみ)、国際大会24回連続表彰台を記録した。
またグランプリ2戦における4つのプログラムの合計得点(627.64)はグランプリ史上最高の圧倒的高得点である。

しかしながら、札幌で羽生は二つの顔を見せた。
ショートプログラムでは日本の規格外の選手は良い意味で和やかでリラックスしているように見え、本番の演技にもかなり余裕があった。

一方、フリープログラムではより緊張していた。
まるでトリノのファイナルに意識を集中させるために、この大会を怪我なく一刻も早く優勝で終わらせることを目標にしているように見えた。

この人物の器の大きさを考慮すると、「怪我を避ける」の意味はあくまでも婉曲的である。
というのも、フリープログラムの最後の1分では何もないところから即興で4トゥループ/3トゥループのコンビネーションを引き出し、続いて3アクセル/オイラー/3サルコウを成功させた。
(これほど鬼リカバリーを)絶対的自信を持って決断し、簡単にやってのけたという事実は、彼の現在のコンディションの良さ、そして彼のリスクに対する考えを物語っている(彼にとってのリスクとは一般的なリスクの観念とはかけ離れている)。

2日間の試合での唯一のミスはトゥループが思いがけず抜けてしまったために入らなかったコンビネーションジャンプ、4トゥループ/オイラー/3フリップだけだが、今回のケースではミスよりも得点の損失を最小限に抑えるために咄嗟に「Bプラン」を実行できる彼の冴えわたったメンタルに衝撃を受けた。

今回良かった点として、ステップシークエンスに何の乱れもなかったこと、更に練習で何度も成功し、試合でも効果的に決まった4ループの安定感が戻ってきたことが挙げられる。
それ以外については、ショートプログラムのスピン(特にスライングキャメル)がいつもほど完璧ではなかったために、シーズンベストの更新を逃したが、フリーでは同じことを繰り返さず、「トラベリング」したり、正確に実施されなかったスピンは1つもなかった。

こうなるとファイナルで披露される構成が非常に気になる。
新しいジャンプを加えるかどうかは分からないが、試合後のインタビューでは謎めいた発言をしていた。

唯一確かなことは、3月の埼玉世界選手権での敗北の雪辱を果たしたいという彼の強い気持ちは静まるどころか更に燃え上がっているということだ。

従って、きっと素晴らしいものを見られることになるだろう。
しかも、ファイナル男子フリーが行われる12月7日土曜日は2度のオリンピックチャンピオンの25歳の誕生だ。

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フリー冒頭のポーズ、足が小刻みに震えていて、こんなのは初めて見ましたので「緊張している?・・・大丈夫かな・・・」と思いましたが
4ループが決まり、次の4サルコウは笑ってしまうほど余裕がありました。
練習では怪我への恐怖からわざと開いて降りていたのに・・・何というメンタルでしょう!

3ルッツがプログラム最後のジャンプだった頃は「最後のルッツ・・・お願いルッツ🙏!」といつもドキドキしていましたが、プログラム前半に組み込まれたこのルッツはもはやトランジションの一部になっていて、失敗しそうな気配すらない(鬼門の3ルッツと言われていたのは一体何だったのか)

2本目の4トゥループが抜けたのにはびっくりしましたが、そこからが凄かった。
そこまでは抑え気味に丁寧に滑っている印象でしたが、リミッターがカチッと外れる音が聞こえたようでした。
本人はリカバリーはおまけのようなものと言っていましたが、今大会の一番のクライマックスだったのではないでしょうか。

この「アンベージ・ウィンターシリーズ」今回で7回目なんですね
(全く追いつけていない・・・aWN5W61

これまでの連載のタイトルは以下の通りです:

  • 第1回「羽生結弦からアリョーナ・コストルナヤまで~グランプリ大会の見どころ」(GP開幕前)
  • 第2回「羽生とリッツォにとっての重要な岐路、スケートカナダ」(スケアメ後)
  • 第3回「惑星ハニューにようこそ!結弦がヒエラルキーを覆す」(スケカナ後)
  • 第4回「不在の羽生が大会を支配する」(仏杯後)
  • 第5回「イタリアの3エクセレンス、アリアンナ・フォンターナ、マルティーナ・ヴァルチェピーナ、マッテオ・リッツォ」(中国杯後)
  • 第6回「エフゲニア・メドヴェデワ、アレクサンドラ・トゥルソワ、宇野昌磨の明暗」(ロステレ後)

いずれも興味深い内容なので、羽生君部分だけでも今シーズンが終わるまで訳せればと思います。(ごめんなさい・・・気長に待っていてください)
そして私は今晩放送予定のマッシミリアーノさんのポッドキャストが恐ろしい😱・・・

こちらは国営テレビRai 2の6時半のニュースから
グランプリファイナルの紹介です。羽生君のOriginの映像が使われています
エレナさんが該当部分を切り取ってくれました。いつもありがとう!
Grazie Elena!💛

最後のヴァレンティーナ・マルケイさんのインタビュー
「この大会を見た若い子達がフィギュアスケートの素晴らしさを知り、スケートを始めたいと思ってくれれば」

Published by Nymphea(ニンフェア)

管理人/翻訳者(イタリア在住)。2011年四大陸チゴイネ落ち @pianetahanyu