イタリア解説EuroSport版「平昌2018~ネイサン・チェンSP+」

アンジェロさんのブリザート解説
普段穏やかなで温かいアンジェロさんが珍しくかなり手厳しい、ほとんど叱責に近い解説
(ちなみに、アンジェロさんはネイサン選手を高く評価しています)

元オリンピアンならではのごもっともな意見で、羽生君が何故ショート無敵なのか、その理由にも触れていますので、印象的な部分を抜粋したいと思います。

Nathan2018OSP

実況:マッシミリアーノ・アンベージ(M)
解説:アンジェロ・ドルフィーニ(A)

 

A:力を見せつけた羽生
ライバル達は彼を追わなければならない

M:最初はアメリカのネイサン・チェンだ
リスクを冒して4ルッツを跳ぶか見てみよう

A:ネイサン・チェンの構成に非常に興味がある
彼はコンビネーションを4ルッツから4フリップに変更し、ソロジャンプを4トゥループにしている

M:このジャンプの成功率の問題のせいでね。
(4ルッツは)多大なエネルギーを消耗するジャンプだ

羽生も4ルッツを試合で成功させたけれど、このオリンピックでは封印した。
フリーの途中で気が変わらない限り

A:彼にとって鍵になるプログラムだ

いや、ルッツに挑戦する!!!
4ルッツで転倒!
構成を変更した

非常に重いミスだ

A:4トゥループでステップアウト
しかもステップはなかった
コンビネーションにすることも出来たのに・・・いやそれどころか

M:コンビネーションにするべきだったんだよ

A:次はアクセルだ

なす術がない
3アクセルでもステップアウト
ネイサン・チェンは大遭難だ

羽生を遥か遠くから追うことになる
それどころか実質、彼より格下の多くの選手達に抜かれる恐れがある

M:羽生のプログラム構成が予定と異なっていたように、彼も当初の戦略では4ルッツは跳ばない予定だった

A:分からない
でも僕の意見をもう一度言う。さっきも話していたことだけれど、
僕はリンクに降りる5分前にプログラムを変更しない

M:でもこの2年間、常に演技中に構成を変更していた選手がいるとすれば、それは彼だ

A:確かにそうだ
でも結果を見てよ
ポジティブな結果が得られるわけがない
身体に染み付いた構成じゃないからだ

ここはオリンピックだ

オリンピックに来たら6分間練習の内容や、自分の前に起こったこと、自分の後に起こるであろうことに関係なく、予定通りの構成で行くべきだ。

もし完成度を求めるなら何度も何度も、繰り返し繰り返し繰り返し練習してきたプログラムを披露すべきだ。

だから僕は羽生のショートの戦略についてずっとサルコウとトゥループの構成を推奨してきたんだ。

M:その理由は、このエレメンツを跳ぶ彼がベストだからだ。わざわざハードルを上げる必要はない

A:全てのエレメンツで+2/+3を持ち帰れる
他の選手達は彼を追わなければならない。
彼より基礎点の高いプログラムを滑る選手にとっても困難だ。

何よりも、このネイサン・チェンがそうであったように、ライバル達は彼に追いつくためにリスクを強いられる。

問題は何か?
今回のネイサン・チェンの3アクセルはほぼ-3だ

でも仮に綺麗に決まったとしても彼が持ち帰れるGOEは0だ。もしかしたら+1を幾つかもらえるかもしれない

M:つまり金メダル争いから自ら脱落した選手が一人出た。
北米アナリストがオリンピックタイトルの大本命と予想していたネイサン・チェンだ。メダルを獲るのも難しいだろう。
勿論、ベストのネイサン・チェンはフリーで膨大な得点を握っている

でもどうぞ、羽生からマイナス30点と書いて下さい。

A:マイナス30点だろうね

 

<コリヤダ選手のリプレイ中>

M:羽生が一番滑走だと危険だ。
なぜなら彼がスケーティングの質の基準になるからだ

A:ジャッジに対してもね

M:評価が非常に厳しくなる
特に運悪く羽生の直後に滑らなければならなかったネイサン・チェンにとって
でも同じことがこれから滑る全ての選手に当てはまる

A:特にあのようにハイレベルなパフォーマンスが脳裏に鮮烈に残っている場合、他の選手達はその他大勢になってしまう
コリヤダは残念だった
彼は非常に優れた資質を持つ選手で、ベストなコリヤダなら羽生とアリエフの間に割り込むことが出来ただろうけれど、人生最高の演技が必要だった

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ネイサンの今季のショートプログラム、素敵だな~と思ったらシェイリーンの振付なんですね。
今回、放送時間が深夜から早朝ということもあって、実況付きで放送されたのはショート、フリー共に最終グループのみ(ショートはその前のグループのアリエフ選手から)
なのでネイサン選手のフリーは残念ながら実況がありませんでした。

アンジェロさんとマッシミリアーノさんは、ネイサンとボーヤンを回転と踏切がクリーンなクワドジャンパーとして高く評価していますが、アンジェロさんはどちらかというと表現力やスケーティングの資質も兼ね備えたよりコンプリートなネイサンの方を評価し、マッシミリアーノさんは断然、ボーヤン推し。
なのでボーヤンとネイサンの解説では結構二人の意見が対立することがあって面白いです。

羽生君を語る場合はお互いに競い合うように手持ちのあらゆるボキャブラリーを駆使して絶賛するので、止まらなくなってしまう感じです
そして二人共完全にオトンになってしまう

動画が無くて残念なのですが、今回はアンジェロさんの氷のように冷たい「結果を見てよ」に凍り付きました・・・こんなの初めて聞いたのでちょっとびっくり・・・普段穏やかで優しい口調なだけに怖かった・・・A9smBスケートのコーチでもあるアンジェロさん、優しそうと思っていたけれど、実はものすごい鬼コーチなのかも

 

Published by Nymphea(ニンフェア)

管理人/翻訳者(イタリア在住)。2011年四大陸チゴイネ落ち @pianetahanyu