ポッドキャスト「Kiss&Cry」第1回(その3)

ここからロシアと日本の女子選手の熾烈な五輪代表争いの展望に関する話、そして現在の4回転時代の話題へと移行していきます(今回は羽生君成分は少な目)
長くなり過ぎるのでここからは核心部分を抜粋・要約します。

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出演
司会:アレッサンドロ・ジュヌッツィオ
解説:マッシミリアーノ・アンベージ(M)(イタリア・ユロスポ実況/コラムニスト)

 

M:今シーズンは多くのトップ選手がシーズン序盤から非常にいいコンディションにあることに気が付いた。

羽生はショートで記録を更新したし、宇野昌磨は2つのプログラムで高得点を出した。

女子選手もそうだ。

メドヴェデワは初戦から230点近い高得点を獲得し、ザギトワはシニアデビューでいきなり220点。日本の本田真凜も初戦で200点。本田はソルトレイクシティの大会に出場したけれど、もしロンバルディア杯に出場していたら彼女もあと15点は高い得点だった。

日本の樋口新葉も220点近い得点。

つまり日本とロシアの選手は最初からエンジン全開でシーズンを始動した。

なぜなら彼女達がオリンピックに出場するには、まず国内の熾烈な戦いを勝ち抜かなければならないからだ。

心配なのは、彼女達は9月10月11月の間で心身共に消耗し切ってしまい、命運を喫するグランプリファイナルや国内選手権にピークを持って来られない恐れがあるということだ。

それにもし熾烈な国内争いを勝ち抜き、オリンピック代表に選ばれたら、今度は1か月半の間に体力を充電し、しかるべき調整をしてオリンピックに再びピークを持ってこなければならない。

日本では2枠を樋口、本田、宮原、白岩、三原、本郷、坂本の7人の選手で争う。

ロシアも状況はたいして変わらない

ロシアではエテリ・トゥトベリーゼ門下の選手が圧倒的に強い。

ラジオノワはスケーティングスキルは向上したし、表現力もある選手だけれど、ジャンプの質で他の選手に太刀打ち出来ない。

彼女はシニアでメドヴェデワに勝ったことのある唯一の選手だけれど(2015年ロステレコム杯)、未だに13歳の時と同じ技術でジャンプを跳んでいて、身体が成長したために適応出来ていない。

トゥクタミシェワは傑出したジャンパーで、トゥトベリーゼ門下の選手よりずっと質の高いジャンプを跳ぶ。華やかな選手だけれど、3アクセルを入れない限り、彼女達には勝てない。

マリア・ソツコワはメドヴェデワと同い年だが、あらゆる観点において彼女に劣っている。

ポゴリラヤはメドヴェデワとおそらくザギトワ以外のトゥトベリーゼ門下の選手を脅かすことの出来る唯一の選手だろうが、スピンの質や、トランジションの質と密度で彼女達に劣っている。非常に華のある選手だがそれだけでは試合には勝てない。

だからロシアの代表争いも熾烈だが日本に比べたら予想しやすい。怪我がなければメドヴェデワとザギトワが頭一つ抜けている。

日本のほうが混戦で予想が難しい。

(カロリーナはこうした少女達と闘わなければならないという話題は省略)

そんなわけで非常にハイレベルなシーズンが始まる。

ネイサン・チェンは4ループを成功させて、史上初めて5種類の4回転ジャンプを成功させた選手になった。

宇野昌磨もフリーに4サルコウを入れたから彼も4種類の4回転ジャンプ

羽生は4ルッツで4種類目

ジン・ボーヤンもまだ試合では成功していないけれど4ループを練習している。

彼は非常に質の高い4ルッツを持っているし、既にサルコウとトゥループも成功させているから4回転ジャンプが5本、または6本のフリーに挑むだろう

まさに4回転時代

これらの選手達は歴史のページを塗り替えていて、この傾向に適応出来ない選手は、彼らから一時代ほどの差を開けられてしまう。

まさに新時代だ。

おそらくプルシェンコが競技したかった時代

2年前、プルシェンコは「羽生は平昌五輪で4クワドを跳ぶだろう」と発言した。当時、皆4クワドとは4本のクワドという意味だと解釈していたが、実際には4本ではなく4種類のクワドという意味だった。羽生とアイスショーを一緒に回っていた彼にはそれが分かったのだ。

彼は自分も2種類目の4回転ジャンプを習得し、平昌五輪に出場して羽生と競技したいと発言していたが、年齢や体力の問題で断念した。

プルシェンコも若い頃、イタリアの夏期講習で参加した時に四回転のフリップやルッツに挑戦していたが、当時のプルシェンコにこれらの4回転ジャンプは必要なかった。

当時の彼のライバルと言えばジュベール、カリスマ性はあったけれど、スピンやスケーティングなどフィギュアスケートのジャンプ以外の部分であまりにも劣っていた。

そしてランビエール、芸術性においては議論の余地なく当時のナンバーワンだが、3アクセルが苦手という致命的な弱点があった。勿論、世界王者にもなったこともあり、オリンピックメダルも獲得した素晴らしい選手だが、プルシェンコとは別の惑星の選手だった。

つまり彼はヤグディン引退後、ライバル不在で結局これらの4回転ジャンプを習得することはなかった。

あれからフィギュアスケート界は驚異的な進化を遂げた。
おそらく羽生が4回転アクセルでこの革新時代を締めくくるだろう。

そしてこうした革新は何を引き起こすか?

ルールの見直し、そうだろう(笑)?

To be continue…

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訳さなかった前半、2) ジュニア・グランプリの話題で印象的だった部分

 今やロシアというより世界最強のエテリ・トゥトベリーゼ門下の練習方法について。

現在、女子のフリープログラムは7トリプル+2ダブルアクセルが最低条件になっていますが、トゥトベリーゼ門下の選手達は普段の練習のランスル―では9トリプル+2ダブルアクセルのフリープログラムを滑っているのだそうです。

フリー後半に3Lz-3Loを余裕で着氷するザギトワ選手は普段の練習ではここで3Lz-3Lo-3Tを跳んでいると。同じようにメドヴェデワ選手はランスル―で3-3の連続ジャンプのところを全て3-3-3の構成で滑っているのだそうです(実際、バルセロナGPFの公式練習のフリーのランスル―で3連続トリプルを3回入れていました)。

だから彼女達にとって、試合では練習よりずっと簡単なプログラムを滑るので、精神的にも余裕があるし、ミスが少ないのだと

私はエテリ門下の選手はみんなメドちゃんのコピーに見えて、ちょっとサイボーグ養成所みたいで個人的に苦手なのですが、確かに強いですね・・・3アクセルか4回転ジャンプがないと太刀打ち出来なさそう・・・

Published by Nymphea(ニンフェア)

管理人/翻訳者(イタリア在住)。2011年四大陸チゴイネ落ち @pianetahanyu