OA Sportより「全日本: 羽生が再び圧勝。エイリアンが4アクセルに初挑戦」

お馴染み、イタリアのスポーツメディアOA Sportの記事です

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ファブリツィオ・テスタ
(2021年12月26日)

羽生結弦が大差で圧勝した全日本フィギュアスケート選手権(埼玉)のフリープログラムで、両足着氷で回転はまだ完全ではなかったものの、不可能と言われているエレメント、4回転アクセルに初めて実戦で挑戦した。真の奇跡に向けて、必要不可欠な最初の鋲だった。成功すれば歴史に永遠に刻まれる前人未到の偉業になるはずだ。

二度のオリンピックチャンピオンは「天と地と」の旋律に乗せたフリーの傑作を披露し、前述のジャンプに加え、3本の4回転ジャンプ、すなわち4サルコウ、4トゥループ2本(3トゥループとのコンビネーションとオイラー/3サルコウとのコンビネーション)、見事な3アクセル2本、そして単独の3ループを着氷し、スーパーアリーナを熱狂の渦に巻き込んだ。エイリアンはステップシークエンスと3本のスピンでもレベル4を獲得し、満点に近い出来栄え点を積み上げて何と211.05(114.25+96.80)、トータル322.36を叩き出し、またしてもこの競技を新たな時代に突入させた。

オリンピック銀メダリストの宇野昌磨のリアクションもポジティブだった。ようやく我々が知っている才能を取り戻した宇野は、4本の4回転ジャンプ、ループ、サルコウ、フリップ、トゥループ(ただし1本目の同種ジャンプで転倒したためREP扱いになった)を綺麗に決め、2本の3アクセルを合わせて193.94(101.64+90.30)を稼ぎ、合計295.84だった。

最後に鍵山優真(Yuma 「Piuma(羽毛」)も非常に良かった。2本目の3アクセルで小さなステップアウトがあったものの、3本の4回転ジャンプを綺麗に決めたスーパーポジティブな演技で197.26 (105.68+91.58)で3位だった。

リザルト

プロトコル

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☆毎日、演技動画を何度もリピせずにはいられない上、怒涛のようなインタビュー、記事、情報の量に全く追いつけていない状態です。
まさに長い絶食の後の過剰摂取🤣

メディアの皆さんも羽生砂漠が長く、羽生結弦の誕生日ってだけで紙面記事まで出したほどですから、大会前も「羽生結弦は出場してくれるかな?出てくれるかな?」とドキドキしながら正式発表を待っていたと思います。そして出場した上、ショート新プログラム、4A挑戦、ショートもフリーも圧勝、オリンピックで4A決めて勝ちに行く宣言、と最初から最後まで圧巻の羽生劇場をこれでもかというほど見せつけられ、文字通りお祭り状態です。

最初の独占インタビューが公開されたのが22日の夜、メダリストオンアイスのあった27日まで正味5日ほどだったのに、一カ月ぐらい経過したように感じられるほど濃厚な5日間でした。
フジテレビは笑いが止まらないんじゃないですか?
改めて羽生結弦ありきのフィギュアスケートなのだと痛感させられたのではないでしょうか。
そして、どんなに期待されても、その期待を遥かに上回るドラマを見せてくれる羽生結弦、恐るべし・・・
しかも、怪我開け、初戦、帯同コーチ不在というハンデがあったにも拘わらず

そしてついにはっきり明言しましたね
「4Aを決めて三連覇を目指す」と

彼がこれまで一度も北京を目指すとは言っていませんでしたから、書きませんでしたが、私は随分前から最終的に彼は北京に行くことになるのではないかと思っていました。
本人が望むと望まざるに拘わらず、そういう運命ではないかと。
モントリオール世界選手権が中止になったのも、ストックホルムのフリー直前に喘息の発作を起こして優勝を逃したのも、スケートの神様が用意した五輪三連覇の伏線のように思えました。

これは私の想像ですが、羽生君自身は北京には行きたくなかった、その前に4アクセルを成功させて引退したかったのではないかなと思います。
オリンピックに出場するなら、勝たなければならないことを彼は知っています。
そしてそれが難しいことも。
彼が「難しい」と考える理由には、自分がプラス項目を全て満たした完璧なエレメントを実施し、エレメントと振付が一体になったトランジション豊かなプログラムを滑っても然るべき得点を貰えない、一方でライバルは転倒してもシリアスエラーが発動せず、長い助走からあまり美しくないジャンプを実施してもGOEもPCSも気前よく貰える、という不可解なジャッジ傾向があると私は思います。

だから彼としては何としてもNHK杯で4アクセルを成功させたかったのだと思いますが、スケートの神様と五輪の女神がそんなことは許さなかった。
羽生結弦に最も相応しい舞台はオリンピック、NHK杯なんかで終わらせてたまるかあ~!と(NHKさんゴメンなさいw)

羽生君はオリンピックのユニホームに手を通した瞬間、「勝ちに行くんだ」と闘志が湧き起こってきたと言っていました。この全日本を終え、五輪が自分を呼んでいる、五輪に行くのが自分の運命だと受け入れて覚悟を決めた、私にはそんな風に見えました。
あれだけ「北京は考えていない」と言い続けてきた彼が「4Aを決めて三連覇を目指す」と言い切ったのです。途方もない勇気と覚悟のいる発言だった思います。
「4アクセルへのこだわりを捨てて勝ちに行くなら、他の選択肢もあるけれど、4アクセルこそが北京を目指すと決めた理由だから、アクセルを決めた上で優勝を目指したい」という発言に、ソチオリンピック後の彼の言葉を思い出しました。
どの番組だったか、「フリーで4トゥループ2本にする選択肢もあったのに、何故リスクの高い4サルコウを入れることにこだわったのか?」という田村岳斗さんの質問に対して、羽生君はモチベーションのため、自分はモチベーションを上げるためにより難しいジャンプに挑戦することが必要なのだと答えていました。
ソチでサルコウが必要だったように、既に二連覇を果たし、あらゆるタイトルを総なめにした彼が、自分の人生プランに入っていなかった北京を目指すには4アクセルが絶対に必要なのだと私は思います。

4アクセルはいわば「人類初の天王星着陸」ほどの難業であり、難度において4サルコウとは比較にはなりませんが、ソチの頃は、「地球編」だった羽生結弦物語が、その後「宇宙編」、「冥界編」を経て、今はさしずめ「天界編」です。そして、瀕死の重傷を負う度に前より強くなって蘇る属性を持つ主人公も数々の逆境を経て、今や神のレベルにアップグレードしていますから、「天王星着陸」レベルの技に挑戦しなければストーリーが成り立ちません😂

冗談はさておき、この全日本で4Aを入れ、転ばずに立てたことは彼にとって大きな一歩になりましたが、加えて大会中、精度の高いテレビカメラがあらゆる角度から捉えた、公式練習と本番における4Aのスロー映像は、貴重な材料になったのではないでしょうか(映像を睨みながら鬼解析している姿が目に浮かぶようですw)

どうか健康で、4Aが入った完璧なプログラムで北京の表彰台の一番高い場所に立って下さい。
でもまずはゆっくり休んで、酷使した身体を回復させて下さいね
素晴らしい5日間をありがとう!

Published by Nymphea(ニンフェア)

管理人/翻訳者(イタリア在住)。2011年四大陸チゴイネ落ち @pianetahanyu