イタリア・ユロスポ版解説の書き起こしです
Elena Cさんが動画を上げて下さいました!
ありがとうございます!Grazie mille!
実況:マッシミリアーノ・アンベージ
解説:アンジェロ・ドルフィーニ
(演技前)
マ:さあ羽生結弦の番だ
昨日に引き続き、ジン・ボーヤンがハイレベルな演技をした後で滑ることになった。
昨日は何の問題もなかった。
今日はどうなるか見てみよう。選手の才能は議論の余地がないけれど、スケートカナダの時に比べるとフィジカルコンディションは別物のような。
ア:コンディションは上がっている。羽生結弦のプログラムも非常に高難度。
観客の期待は最高潮に達していて、この瞬間、水を打ったように静まり返っている
(演技中)
ア:王家の4サルコウ
ア:完璧な4トゥループ
ア:非常に難しい入り方の3フリップも完璧
非の打ちどころのない始まり
ア:非常に鮮烈なステップシークエンス
ア:さあここから2本目の3トゥループに向かう
ア:4トゥループ/3トゥープ(笑)で後半を開始
ア:3アクセル/2トゥループ、完璧!
ア:異なるイーグル、異なるステップ、そして3アクセル/1ループ/3サルコウ!これも非の打ち所がない
ア:何の問題もない3ループ
ジャンプは1つ。しばしば彼を苦しめた3ルッツ
でも今日は違う!完璧な3ルッツ!
彼も思わずガッツポーズ(笑)でも当然だろう!
(TESは)既に100点を超えている。しかもプログラムはまだ終わっていない
羽生は何を成し遂げたのか
ア:最後のスピン
ここでも僅かなブレもない
得点を見てよ!(笑)
(演技後)
マ:これはフィギュアスケートのアントロジーだ!
今日からこの競技は全く別のものになる!
羽生は革命を起こした
スポーツの歴史を作るプログラムがある
ソルトレイクシティ五輪のアレクセイ・ヤグディンの『ウィンター』もそうだろう。
でもこれはその上を行く。
これはソルトレイクシティ五輪の後、フィギュアスケートを管理するために考案された採点システムが崩壊した瞬間だった
技術点120点!これが一体どういうことか分かる?
ア:全く驚異的。このような演技は前人未到の領域だ。
これ程のレベルな羽生は初めて見た。いや事実を言えば、彼以前には誰一人、このようなレベルに近づくことすら出来なかった。
マ:当たり前だろう。
これは芸術と卓越した技術の完璧な融合だ。
全てのエレメンツの前に複雑怪奇なステップシークエンスかトランジション要素が散りばめられている。
3アクセルの前に彼が何を発明したか?
ア:何か恐ろしいものだ。イーグルで始め、エッジを変え、それから他のステップを入れて最後に振り返って3アクセル/1ループ/3サルコウ、完璧な着氷
彼は未曾有の選手。
我々はこれまでハイレベルな多くの選手の技術的に素晴らしい演技の数々を見てきたけれど、そんな現在のスケート界においても、彼は無双の存在。
彼自身以外に、彼と比較出来るものは存在しない
マ:その通り
彼はまさに自分自身と戦っている。
今日の後、これ以上何を発案出来るのか想像出来ない。
この演技を超えることは非常に難しいことだろう
でも彼には出来る
それが出来る者がいたとしたら、それは彼だ
マ:ブライアン・オーサーは「言葉がない」と言った
ア:そうだね。「言葉がない」と言った。正直、僕達も同じだよ
聞いた?「アリガトウ」と言ったよ。観客に感謝している。
違うよ、ユヅル。君に「ありがとう」だ
この歴史に刻まれる大会になったNHK杯で計り知れない価値のある珠玉を1つではなく、2つも僕達にプレゼントしてくれて
マ:全くだ。非の打ちどころのない出来栄えの3本のクワド、圧倒的なクオリティの7本のトリプル
2本目の4トゥループの入り方を変えたことに注目して欲しい。
こうして4トゥループ/3トゥループを跳んだ。
ア:驚異的だ
つまり・・・ユヅルはプログラム後半を4トゥループ/3トゥループで開始するけれど・・・
マ:僕には(このコンボを後半に跳んだ選手は)思い当たらない
ア:不可能だよ・・・フィギュア史上最も偉大な選手達にとっても最も難しいエレメントだ。
彼はそれをプログラム開始から2分後に跳んだ。しかもこのクオリティで
マ:忘れてはならないのは、これは彼が思い描いている通りのプログラムではないということだ。
3本目のジャンプ、フリップをおそらく彼はあまり気に入っていない。
本当はここで4ループを跳びたいと思っている
ジン・ボーヤンに「OK、君は未来かもしれないけれど、今はまだオレの時代だ」と言うために
ア:(笑)でも問題は今のままの彼でも無敵ということだ
マ:ジン・ボーヤンと羽生結弦は2歳少し違うことも忘れてはならない
ア:確かにジン・ボーヤンはとても若いけれど、羽生だって競技人生の長いベテラン選手ではない。
もはや長い間、世界のトップに君臨しているけれど
マ:彼が健康だとこのような傑作を描くことが出来る。
だってこれはフィギュアスケート史上に刻まれるプログラムだ。
そして羽生結弦は自動的に伝説になった。
ア:僕達は歴史が塗り替えられる瞬間に立ち会った。僕達はこの競技の伝説、まさにサイエンスファンタジーの世界にいる
マ:320?
何点出ると思う?
ア:(笑)
マ:歴代最高得点は295点
彼は25点も更新する。しかも11月に!
ア:そう11月に!(笑)
要するに、ユヅルは成し遂げたことは衝撃的だった。
歴代最高得点を粉々に粉砕するだろう
今現在、彼に近づける者はいない
(得点表示)
マ:ウォー!!!
ア:322.40点!!!!(笑)
彼らも信じられないようだ。
僕達も信じられないよ
演技構成点はほぼ100点に近い!
でも他にどんな得点を出せる?
マ:当然だろう
PCS97.20点はパトリック・チャンが出した記録を上回る。五輪だっけ?(←エリック・ボンパール杯の間違いでこの後の女子の試合で訂正しています)
ア:でもこのようなパフォーマンスにどうやったら10点以下を付けられる?不可能だ・・・
何か比類のないことをやってのけた
最初から最後まで一つ一つのエレメンツが全て完璧だった。
322.40点、2位とは一体何点差?(笑)
マ:56点
ア:困惑する点差だ
マ:言っておくけれど2位の選手は中国の歴代最高点を更新したんだよ
266点は普通にグランプリ大会を優勝出来る得点だ
☆そして翌日のエキシ(これは生中継でした)放送では、製氷中に羽生君のフリープログラムの映像が再び紹介されました。
演技映像の後のお二人のコメント:
マ:これは昨日、フィギュアスケートを変えた男、羽生結弦によって彫刻された芸術作品だ
ア:レディース&ジェントルマン。我々はたった今、フィギュアスケート史上最高のフリープログラムを再び見ました。
技術と芸術性、スケーティングのクオリティ、これら全ての観点においてこれほどの完成度を目の当たりにするのは何か驚異的なことだ
全てが詰まっていた
観客も、ユヅルも、ジャッジも、そしてテレビで観戦していた全ての視聴者もそのことに気が付いた。
驚異的だった
24時間が経った今も、こうしてこの演技を見返すと鳥肌が立つ
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☆最初の4トゥループが決まった時、何か途方もないことが起こる予感がして身体が震えました。
歴史的瞬間をライブで見ることが出来て幸せでした。
羽生結弦という人間と同時代に生き、彼の成長をリアルタイムで見ることが出来る幸運は、例えばモーツァルトの演奏を生で聴くことが出来た18世紀末のウィーンに住んでいた上流社会の人々とか、ポンペイの遺跡発見に立ち会った人達とか、印象派の誕生を目の当たりにした19世紀後半のパリの知識人達に相当すると私は思います。
夢のような3日間だった・・・
羽生君、生まれてきてくれて、フィギュアスケートをやってくれてありがとう!