Neveitaliaに掲載された中国杯男子フリーの記事です。
記事を書いているのはイタリア・ユーロスポーツ実況のマッシミリアーノ・アンベージさん。
当時は衝突事故のショックが大き過ぎて、記事が掲載されていたことに気が付きませんでした。
(2015年11月8日)
(翻訳は3位のドーンブッシュ選手までです)
マキシム・コフトゥンが自身初のGPシリーズ優勝を飾った上海の中国杯は、競技の結果ではなく、男子フリー6分間練習中に起きた開催国のエース、ハンヤンと五輪王者、羽生結弦の恐ろしい衝突事故によって記憶される大会となった。
スケーター達はジャンプの助走に入り、スピードを出して滑っていたため、衝突の衝撃は凄まじいものだった。
この事故が両選手に与える身体的影響の重度は未だ不明だが、両者とも激痛にも関わらず競技を強行することを望んだ。
肩を負傷し、顎を怪我したヤンは、 自国開催のGP大会を6位で終えた。
一方、顎と頭部を負傷した羽生は、5度の転倒にも関わらず2位を獲得した。
しかしながら、仙台の二十歳が、直前のアクシデントにも拘らず、2本4回転ジャンプと7本の3回転ジャンプをストイックに跳び続けたことを強調したい。
抱きかかえられるようにキス&クライに向かった羽生は、得点が表示されると堰を切ったように泣き崩れた。
理性で判断するならば、2人の選手はリンクに立つべきではなかったのかもしれない。
しかしながら彼らのスケート愛、そして観客(より下品な応援の仕方をする盲目的なファンをも含む)を尊重する強い気持ちは、何よりも勝っていた。
いずれしても今日、ここで生まれた感動は、最も重要な大会における神演技に匹敵するものだった。
当然のことながら、ハンヤンと羽生結弦が今後のGPシリーズに出場するのか、それともこの第3戦で終止符を打つのかはまだ分からない。
中国人選手は、更衣室で眩暈を訴え、そのまま担架で救急車に運ばれ、精密検査を受けるために病院に搬送された。
一方の羽生は、病院に泊まり、状態に急変がない限り、明晩、母国に戻る予定だ。
競技の話題に戻ると、ロシアのコフトゥンは技術点、演技構成点共に大会ベストの得点を獲得したが、高難度ジャンプのミスにより大量の得点を失った。
羽生に次ぐ3位に入ったのはアメリカのリチャード・ドーンブッシュで、自身初のGPシリーズ表彰台となったが、成長中のカリフォルニア出身の23歳にとっては悔いの残る試合になった。というのも、最初の三分間は完璧だったフリープログラム終盤で完全に迷走し、ミスを連発したからだ。
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☆ 日本で脳震盪の危険があるのに滑るべきではなかったと賛否両論が巻き起こり(実際には頭は打っていなかった)、事情も知らない専門家やら芸能人やらが、したり顔で好き勝手な議論を繰り広げていた頃、マッシミリアーノさんはこんなに温かい記事を書いてくれていたんですね。