大分前の記事なりますが、ISUのルール変更保留に関するOA Sportの記事です。
ファブリツィオ・テスタ2020年6月19日
ISUが後退した。
9月にグランプリ大会で開幕するフィギュアスケートの来シーズンでは、5月13日に発表されたような基礎点変更などのルール改正は一切い粉われないことになった。6月18日のISUのコミュニケーションNo.2332によって発表された。
この決断の理由は、全体的に練習再開が遅れており、国や地域によって条件が異なり、このような大きな変更に来シーズンから対応するのは難しいとISU評議会が判断したためだ。
「COVID-19の世界レベルでの感染拡大とアイスリンクと練習の再開が遅れていること、そしてISUメンバーからのフィードバックも考慮した」
更に「評議会は前述のISUコミュニケーションNo.2323/2324を直ちに保留にすることを決定した。前のISUコミュニケーションNo.2253/2254は引き続き実質的に有効のままである。評議会は、技術委員会と協力して、ISUコミュニケーションNo.2253/2254に幾つかの補足と小さな修正が必要かどうか、またどの程度必要かを現在検討している」と書かれている。
この方向転換が、来季に向けてより効率的な戦略を既に計画していた選手やチームの卓上のカードを変えることになるのは間違いない。
ルール変更ではルッツとフリップの基礎点がループと同等になるはずだった(3回転5.30点、4回転11点)。
以前のルールに戻ったことで、基礎点はルッツ5.90 (3回転)/11.50(4回転)、フリップが5.30(3回転)/11.00(4回転)、ループ4.90(3回転)/10.50 (4回転)になる。また1/4回転不足のq判定、プレローテーションと粗悪な踏切に対する規定を含むエレメンツの評価に関する改正も凍結された。
しかしながら、こうなるとルール改正は2022年北京冬季オリンピック後まで持ち越される可能性も出てきた。ISU副会長アレクサンドル・ラケルニクはRSportの電話インタビューに対し「現行ルールは少なくともあと2年は持ち越されるだろう。オリンピックシーズンには通常ルール変更は行われない」という短い声明を出し、このことを肯定した。
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☆そして先程、微修正されたルール、コミュニケーションNo.2334が発表されました。
基礎点は変更なし、チートジャンプに関する記述も削除されていますが、ジャスト1/4回転不足は「q」扱いで基礎点そのまま、GOEでのみ減点というルールだけは導入されます。
基礎点の変更はコンピューターで数値を変更すればいいだけで、「q」こそテクニカルパネルが短期間で対応するのが最も難しい変更だと思ったのですが・・・
ていうか、これではただ回転不足に甘くなっただけじゃないですか???😦
チートジャンプ減点の明記については、これまでのルールにも「稚拙な踏切」という項目はあったわけで、ジャッジの皆さんに「Poor Take-off」とは具体的にどんな踏切なのか、例を上げて分かりやすく説明した、いわば補足のようなものだと思っていました
ですからこの記述がなくなったからといって、クリーンでない稚拙な踏切のジャンプに気前よく加点を与えても良いということにはならないと思います(しかし、この「稚拙な踏切」、先シーズンのルールでは-2から-3だったのに、ドサクサに紛れて-1から-3に減点が軽減されています!😠)
いずれにしても「ジャンプが音楽に合っている」(GOEプラス要件)、「意表を突く独創的な入り」(GOEプラス要件)、「長い助走」(GOE-1から-3)といった私のような素人でも肉眼で簡単に判断できる項目さえ正しく評価出来ないジャッジの方には、チートジャンプの判定はハードルが高過ぎるのではないかと心配していました。
産経新聞のこちらの記事では、一度決定されたルールが1か月ほどでお蔵入りになったのは、選手やコーチ、ISU役員から疑問の声が上がったからだと書かれています。
国際スケート連盟が規定変更を保留 選手らの声で方針転換(産経新聞)
どの国が抗議したのかは大体想像がつきますが、いずれにしても連盟として正式に抗議したわけではなく、ISU幹部と懇意のどこかの国の連盟のお偉いさんとかコーチが、こんなご時世ですから電話かメールで個人的に文句を言ったのではないかと思われます。
そしてその程度の横槍が入ったぐらいで一度正式に発表したものをあっさり引っ込めてしまうISUは組織として一体どうなのか?
5月12日付けコミュニケーションNo.2323/2324のリンクは既に削除されています。
PDFファイルのURLに直接アクセスするとこれ
一度正式に発表したコミュニケーションなのだから、何も削除せずアーカイブに残しておけばいいのに・・・
これはもう保留ではなく、完全に却下の扱いですね・・・
ただ、羽生君にはあまり影響はないと私は思います。
彼の直接のライバルであるネイサンは正しい技術でトゥジャンプを跳んでいる数少ない選手の一人ですから、チートジャンプの厳格化は関係ありません。
現時点でネイサンの4ルッツ、4フリップに対して羽生君は4ルッツと4ループです。
4フリップと4ループの基礎点の差は0.50、GOEが満点+5だったと仮定した場合の得点の差は0.75で、3アクセルのGOEの差で簡単に埋まる程度の点差です。
ネイサンが4ループを装備してくる可能性もあるかもしれませんが、羽生君には4Aという最終兵器がありますから👽
いずれにしても、彼にはルールやジャッジのことなど気にせず、己の信じる道をひたすら邁進して欲しい。
そして結果的にその道の先にある、彼にしか入れない未知の境地こそ、宇宙最強なのだから。