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Sportlandiaより「サーシャ・マルティネス」

前回に引き続き、書店を経営するライター、マルティーナ・フランマルティーノさんのブログから。

ジャッジに関する分析記事第3弾、メキシコジャッジ、サーシャ・マルティネスの分析です。

 

原文>>

 

マルティーナ・フランマルティーノ著

2020年8月3日

 

サーシャ・マルティネスはここ数年間でかなりの数の試合で採点しています。私は全ての試合の統計を取りましたが、あまり多くの名前を挙げ過ぎると読者が混乱するかもしれないと思い、個人的に興味のあることだけを要約しました。

ナショナルバイアス、つまり自国の選手に対する贔屓採点に関する要約です。

これは一般的な問題です。
数年前の記事が興味深い統計を出しています:
https://www.nbcnews.com/storyline/winter-olympics-2018/think-olympic-figure-skating-judges-are-biased-data-says-they-n844886
オリンピックのジャッジにバイアスがあると思いますか?データは可能性があることを示しています

記事のグラフにはアメリカ、イタリア、そして日本を含む数多くの国が示されています。

イタリアを挙げたのは私がイタリア人だからです。自分の国を正義のモデルと主張するつもりはありませんが、誠実で公正な人間は世界中どこにでも存在します(いずれ、イタリアジャッジについても調べるつもりです)。そして日本を挙げたのは羽生結弦が日本人だからです。いずれ日本のジャッジについても何が出てくるか調べていくつもりです。

 

こちらも興味深い記事です:

https://www.buzzfeednews.com/article/johntemplon/the-edge

トップレベルのフィギュアスケートのジャッジ達は、常に自国のスケーターを贔屓している。 そして、これらのジャッジの多くが今ここ、オリンピックにいる

オリンピック前のこの記事の中ではローリー・パーカーが、中国のチェン・ウェイグアンとフアン・フェン、イタリアのヴァルター・トイゴ(過去に資格停止処分になり復帰)などと共にあまり公正でないジャッジとして名前を挙げられてれています。

しかしながら、問題はナショナルバイアスだけではありません。
2002年のオリンピックのスキャンダルを覚えていますか?

フランスジャッジとロシアジャッジが共謀し、フランスジャッジはペアの試合ではロシアペアがカナダペアを上回って金メダルを獲るのを助け(ペアのジャッジパネルにロシアは含まれておらず、フランスのペアは試合に出場していませんでした)、その引き換えとして、ロシアジャッジはアイスダンスでフランスペアがイタリアペアに勝つのを助ける(ジャッジパネルにフランスは含まれておらず、イタリアペアとフランスペアは五輪前の2シーズン、世界選手権と欧州選手権の金銀メダルを分け合っていました)という確約を結びました。
試合の結果はご存じの通りです。フランスジャッジはペアで約束を果たしますが、その後不正を犯したことを告白します。アイスダンスではイタリアペア(と同じくメダルを狙っていたカナダペア)が転倒し、銀メダルはロシアペアの元に転がり込みました。
しかし、これは明らかに「私はあなたを助けるから、あなたは私を助けて」という交換採点です。

 

リンクした記事でもこの問題を喚起しています。何故ならより分かり難いからです。

ある国のジャッジが別の国の選手を助ける理由は幾つか考えられますが、実際、何人かのジャッジは自国以外の選手、または彼らの直接のライバルに妙な得点を与えています。

私に関心があるのはここからです。

ジャッジの名前が公表されるようになってから、サーシャ・マルティネスは3つの国際大会で羽生結弦を採点しています:2017年四大陸選手権、2019年オータムクラシックインターナショナル、2020年四大陸選手権です。

 

最初のスクリーンショットには4つの表が含まれています。

上段の表はメキシコ選手の得点のみがまとめられています。マルティネスは2016年-2017年シーズン以降の国際大会19試合でジャッジを務め、内10試合で自国の選手を採点しました。自国の選手に対しては常にその試合における自身の平均より高得点を出しています

誤解のないようにこの一文の意味を説明しましょう。

2016年ジュニアGPドイツ大会でマルティネスはショートプログラムだけ採点しました。

1位だった韓国のジュンファン・チャはジャッジパネルから76.82点を受け取りましたが、マルティネスが出した得点は78.11でした。つまり他のジャッジ達の平均より1.29点高かった訳です。

一方、ショート2位だったアメリカのアンドリュー・トルガシェフの得点は72.48点、マルティネスの出した得点は80.24点で、平均と6.76もの点差がありました。

マルティネス(と他の2人のジャッジ。ただ私は彼らには興味はありません)はチャではなく、トルガシェフに1位の得点を与えました。

チャに+1.29、トルガシェフに+6.76という具合に、私は出場選手全員について最終得点との誤差(プラスまたはマイナス)を調べ、合計して平均値を出しました。

結果、この大会においてマルティネスは他のジャッジに比べて平均+1.27点高めの点を出していたことが分かりました。全ての点差はSkatingScoresで簡単に見つけられます:

 

本題に戻りましょう。

「Points」はメキシコの選手がその大会で獲得した得点です。2つのケースではショートプログラムのみ、その他のケースでは2つのプログラムの合計です。「Martinez」と書かれた列は当然、マルティネスが出した得点を示しています。「Media M.」はマルティネスの平均とジャッジ平均の誤差を示しています。

通常、甘目ですが、幾つかの女子の試合ではやや厳しめです。

しかし、全選手に対して基準が統一されていれば大きな問題ではありません。「Differenza」の列は、特定の選手に対するマルティネスの得点が、彼女自身の平均基準からどれだけ乖離しているかを示しています。

大きな差(ショートのみで1.50以上、2つのプログラムの合計で4.50点以上)を黄色マーカーで強調しました。

 

マルティネスは採点した10試合全てにおいて自国の選手に高い得点を与えており、内7試合では非常に高い得点を出しています。

これはナショナルバイアスです。しかし、私はスクリーンショット下段の表にまとめた別の3試合におけるマルティネスの採点にも注目しました。

表には各大会における上位6選手しか載せませんでしたが、平均は大会に出場した全選手の得点から計算した数値です。

羽生に対してマルティネスは常に彼女自身の平均基準より低めに採点しています。

1度はかなり低く、後の2試合ではやや控え目ですが、マルティネスが羽生に与えた得点のマイナスと、彼の直接のライバルに与えた得点のプラスを足すとその差は更に大きくなります。

最後の列にその差が示されています。羽生から引かれた数値と他の選手達に足された(時には引かれた)数値の合計を出しました。

何故、彼女は他の選手に比べて羽生にひと際厳しいのでしょうか?

本人に訊いてみることが出来ればいいのですが、それは無理ですから試合別に分析していきましょう。

 

2017四大陸選手権

2017年四大陸選手権は金メダルを争った唯一の大会でした。他の2つの大会では彼と勝負出来る選手はいませんでした。

ショートプログラム、ユヅルはコンビネーションでゲームを落としました。2サルコウ-3トゥループは有効なコンボですが、6.30点しか稼げませんでした。このコンボが綺麗に決まったグランプリファイナルでは17.37点を持ち帰りましたから大きな失点です。

いずれしても、彼はミスをしましたから、当然得点に響きました。ショートは3位。得点の誤差は許容範囲です。

そしてフリー1位、総合2位でした。以下がジャッジ達が与えた得点です:

最も寛大だったのは台湾ジャッジの Ko-Man Tingで、310.55ですが、Tingはネイサン・チェンに対してもっと寛大で12.42点も高い得点を与えています。

次に評価が高かったのは日本の久保田雅子で、平均より6.74点高い301.45点を出しています。一方、チェンに対しては平均より0.28点低い評価でした。

贔屓だったと思いますか?数字はそう言っています。

久保は宇野に対しては更に寛大で、平均を7.73点上回る得点を与えました。チェンとの点差は8.01ですから誤差は大きいと言えますが、最も大きかったわけではありません。

中国ジャッジについてはノーコメントです(ハン・ヤンに平均より+12.70も高い得点を与え、一方で他選手を下げることにより、彼を10位から6位まで上昇させようとしました)。調査に値すると思いますが、私にはジャッジ全員について語る時間はありません。

アメリカのローリー・パーカーはチェンを平均より4.02点高く、羽生を平均より6.71点低く採点していますから、プラス/マイナスで10.73もの誤差があります。

メキシコのサーシャ・マルティネスはチェンには1.52点しか盛っていませんが、羽生に与えた低評価(平均-8.56)によって、10.08点もの誤差が生まれました。久保が羽生に与えたメリットよりもずっと大きな点差です。

有利な採点をしたジャッジが1人だった羽生に対し、2人のジャッジから有利に採点されたチェンが羽生を破って優勝しました。

しかしかながら、トータルスコアだけでは説得力が十分ではないように思いますので、フリーに関しては、上位6選手のプロトコルもまとめました:

大会プロトコルはこちらです: http://www.isuresults.com/results/season1617/fc2017/

 

ユヅルはどんな演技をしたでしょうか?
4ループ、4サルコウ、3フリップを決め、最高のスタートを切ります。4サルコウ-3トゥループを跳ぶ予定でしたがダブルになり、咄嗟に予定を変更してオイラー(当時はシングルループ、1Loと上記されていました)を付け、サードジャンプとして4サルコウを跳ぼうとしますが(グランプリファイナルの公式練習にいた人は、彼がこのようなコンビネーションに挑戦するのを目撃しています)止めます。おそらくスピードが足りないと判断したのでしょう。プログラムの唯一のミスでした。彼はすぐに立て直し、最後の2つのエレメントを3アクセル-2トゥループから4トゥループ-2トゥループへ、3ルッツから3アクセルへ急遽変更しました。

得点を見て下さい。

オーストラリアジャッジのリサ・ジェリネクがマルティネス同様、最も低い点を出していますが、彼女は+3はショートプログラムでも一握り(宇野、羽生、チャンだけに僅か)、フリーでは1つも出していないことが分かります(きっと+3のボタンが壊れていたのでしょう・・・)

全体では4人のジャッジが羽生よりチェンに高い得点を与えています。オーストラリアのリサ・ジェリネク、アメリカのローリー・パーカー、メキシコのマルティネス、ニュージーランドのサンドラ・ウィリアムソン・リードリーです。

GOEを見ると、3人のジャッジが羽生に+3を1個も与えていません。

+3を誰にも出さなかったジェリニク、パーカー、そしてマルティネスです。

マルティネスに関しては+3が1個もないこと以上に、+2でさえジャンプには1個しかなく(2017年のルールでは3点満点の実質加点が+2.10点のトリプルに1個。4回転と3アクセルでは実質加点+3になります)、後は+1が並び、0が2個あることに衝撃を受けます。

特に2本目のジャンプだった4サルコウと最後の3アクセルが0なのは驚きです。

この2つのジャンプは本当に褒めるところが全くない出来でしたか?
それともマルティネスの基準は極端に厳しく、本当に素晴らしい見事なジャンプにしかプラスのGOEを出さなかったのでしょうか?

それでは男子の試合全体で彼女が+1から+3までのGOEをどれだけ出したのか調べてみましょう。

左の表はショート、右の表はフリーです。
表に記載されたジャンプはマルティネスから+1以上のGOEを与えられたジャンプ、つまり羽生の4サルコウ(GOE1.43、マルティネス0、+3が1個)と3アクセル(GOE2.43、マルティネス0、+3が5個)より高く評価されたジャンプです。右から2番目の列がマルティネスのGOE、最後の列はその選手が実際に獲得したGOEです。

マルティネスが羽生の4Sと3Aより高いGOEを与えたジャンプの中にはレスリー・イプのショートとフリーの3ループ(GOE-0.40、-1が5個)、マイケル・クリスチャン・マルティネスの2アクセル(GOE-0.21、-1が4個)も含まれています。存在する動画が少なく、これら全てのジャンプをお見せ出来ないのが残念です。

動画の存在するプログラムから選ぶと、宇野昌磨のこの3ルッツはマルティネスの基準では+1に値しました:

ジャンプのスクリーンショットを獲るのは厄介な作業です。遅かれ早かれ、私は動画の編集を学習することに専念しなければなりません。

一段目の画像ではプレローテーション(ISUメンバーのほとんどが知らない用語です)が目を引きます。高さを測るのは難しいですが、並みに見えます。

2段目の2枚目以降の画像では宇野は既に着氷しています。完璧ではなかった着氷後、バラスを取るために移動する右手の動きに気が付きます。勿論、見苦しくはありませんが、宇野は着氷を堪えるために腕を使わなければなりませんでした。余裕のあるジャンプのように着氷したエッジを滑らせず、大急ぎでもう片方の足を氷上に置いています。

 

これは羽生の3アクセルです。レイバックイナバウアーの後、振り返って跳び上がります:

 

スクリーンショットからでも非常に高さと幅があることが分かります。
バックの広告のどの位置に身体があるかを見るだけで十分です。

膝をしなやかに屈曲させて何の問題もなく着氷しています。常に頭を上げ、腕からは最小限の力みも感じられません。

一番下の段はジャンプの出です。彼は何をしますか?
急いでもう一方の足を着いて逃げますか?
まさか!彼は小さくジャンプして方向転換し、既に振付の動きに戻っています。

こちらはチェンのフリーの3番目のジャンプ、4回転トゥループです。
マルティネスの評価では0、つまり羽生の3アクセルと同レベルでした:

入りにイーグル、非常にいいです。トゥを突き、少しプレロテがあります。
ジャンプは高さがありますが、幅はあまりないように見えます。問題は着氷です。

着氷を上手くコントロール出来ず、チェンはバランスを取り戻すためにオーバーターンし、大急ぎでもう一方の足を着き、幾つかのクロスオーバーを入れて逃げ去ります。

このジャンプは、本当に羽生の3アクセルと同じ評価に値しますか?

ジャンプの評価も対外ですが、演技構成点も負けていません。
パーカーは演技構成点においても、チェンのプログラムを最も高く評価しました。
彼女はチェンに最も高い演技構成点(共に2度転倒した宇野昌磨とパトリック・チャンも同点でした)を与えた唯一のジャッジでした。
一方、羽生には4位に相当する演技構成点を与えました。

マルティネスは羽生に宇野に次ぐ2位の演技構成点を与えていましたが、演技構成点については別の機会に掘り下げます。

 

マルティネスが羽生の採点を行った次の試合はオータムクラシックインターナショナルでした。

今回はフリーにおける回転不足判定についてはここでは詳しく取り上げません。
これはテクニカルコントローラーであったアメリカのロバート・ローゼンブルースとテクニカルスペシャリストであったメキシコのナンシー・ガルシアの管轄です。

事実、この大会のフリーの試合は、より高度な技術の導入とジャッジ育成の改善が必要であることを証明した大会となりました。

羽生のフリー冒頭の2つのジャンプは明らかに良い出来ではなく、大きくステップアウトしました:

ステップアウトの減点は-3から-4です。確かにこのようなタイプのステップアウトは最大-4に相当するでしょう。
でもプラス要件である「ジャンプの幅」を満たしていませんでしたか?
バックの広告または氷上の軌跡を見ると、ジャンプでどれだけ移動したかが分かります。
それに「音楽に合っている」も満たしていましたから、このジャンプは-2が妥当だったはずです。マルティネスの評価は-4でした。

一方、ケヴィン・エイモズのコンビネーションジャンプ、3アクセル-3トゥループの3TはDGで、プロトコルには<<マークが付きました。DGの場合、-3から-4の減点になります。

プラス要件の「独創的な入り」で+1だったとしても、「コンビネーションでジャンプ間のリズムが無くなる」(-2から-3)、 「拙い着氷」(-1から-2)などのマイナス要素を考慮すると、何故、-3という評価になったのか理由を説明して欲しいです。

誤差は僅かで、試合の結果には影響を与えませんでしたし、マルティネスは露骨におかしな得点を出さないよう注意していましたが、彼女の採点からはある傾向が見えてきます。そして、それはいつも同じなのです。
演技構成点においても、マルティネスはエイモズに断トツに高い93点という得点を与え、羽生に対する評価は平均をやや下回る89.50点でした。

 

最後の大会は2020年四大陸選手権でした。

羽生が優勝し、結果に議論の余地は全くありませんでした。

しかし、結果が正しかったからと言って、何も問題がなかった訳ではありません。

プロトコル:

韓国と中国と日本のジャッジに質問です:
4サルコウは+5に何が足りなかったのですか?

メキシコと韓国とオーストラリアとカザフスタンと日本のジャッジに質問です:
コンビネーションは+5に何が足りなかったのですか?

メキシコとアメリカとオーストラリアのジャッジに質問です:
3アクセルは+5に何が足りなかったのですか?

プラス要件は以下の通りです: 

  1. 高さおよび距離が非常に良い(ジャンプ・コンボおよびシークエンスでは全ジャンプ)
  2. 踏切および着氷が良い
  3. 開始から終了まで無駄な力が全く無い(コンビネーションジャンプではリズムを含む)
  4. ジャンプの前にステップ,予想外または創造的な入り方
  5. 踏切から着氷までの身体の姿勢が非常に良い
  6. 要素が音楽に合っている

+5を獲得するには最初の3つを全て満たした上で、4,5,6の内の2つを満たしている必要があります。

踏切前にステップがあり、踏切から着氷までの姿勢も完璧で、音楽に合わせて実施されました。

これらのジャンプに最後の3項目の何が足りなかったのですか?

心底、答えが訊きたいです。

 

スピンに移りましょう。

1つ目のスピンを中国ジャッジは+2、メキシコ、オーストラリア、日本のジャッジは+3と評価しました。
2つ目のスピンはメキシコとオーストラリアのジャッジだけが+3でした。
3つ目のスピンはまたしてもメキシコとイギリスのジャッジが+3でした(マルティネスはジェイソン・ブラウンの2つのスピン、ジュンファン・チャ、ハン・ヤン、ロマン・サドフスキーのそれぞれ1つのスピンに満点である+5を与えています)。

スピンのプラス要件は以下の通りです:

  1. スピン中の回転速度および/または回転速度の増加が十分
  2. 良くコントロールされた、明確な姿勢(フライングスピンの場合には高さ、空中/着氷姿勢を含む)
  3. 開始から終了まで無駄な力が全く無い
  4. 回転軸を維持する
  5. 創造的および/またはオリジナリティがある
  6. 要素が音楽に合っている

ますます困惑させられます。
演技に満足することがなく、常に更なる完璧を追求し続ける羽生でさえスピンに満足していると発言しました。

 

ステップシークエンスに移りましょう。+5と評価したカナダジャッジ以外、全員が+4でした。

ステップシークエンスのプラス要件はこちら:

  1. エッジが深く、明確なステップおよびターン
  2. 要素が音楽と合っている
  3. エネルギー、流れ、出来栄えが十分で、開始から終了まで無駄な力が全く無い
  4. 創造的および/またはオリジナリティがある
  5. 全身の優れた関わりとコントロール
  6. シークエンス中の加速および減速が十分

ここでもジャッジの目には、「独創性」、「全身のコントロール」、「加速と減速」の内の2つが明らかに足りなかったのでしょう。

 

演技構成点です。

ここでは別の表を用意しました。

ここには羽生がショパンを滑った全ての国際大会の得点をまとめました。

世界最高得点は黄色マーカーで強調しました。最後の四大陸選手権の上の二重線は採点コードが変わったことを知らせています。つまり技術点は直接比較出来ませんが、演技構成点は何の問題もなく比較出来ます。

2020年四大陸選手権より高い得点は全て太字にしました。

2017年ロステレコム杯では転倒がありましたから、当然、得点が下がりました。
他の大会の得点を見ましょう。彼が「最強はオレだ」という明らかなメッセージを発した2015年のグランプリファイナル以降、演技構成点は下がり続けています。

彼の演技は本当に前より悪くなっていますか?

全てのジャッジ(例外は1人もいません)がこのプログラムに低過ぎる得点を与えました。

この点において、2017年ヘルシンキのフリープログラムの史上最も過小評価された歴代最高得点といい勝負です。

そしてフリー
残念ながらこのSEIMEI 3.0のベストバージョンを見ることは出来なくなりました。
たった20秒の間に4サルコウ、3アクセル、3フリップ?
他の選手にこんな離れ業が出来るのか是非見てみたいです。しかも、ジャンプとジャンプの間にステップを詰め込みながら。

 

細かく見ていきましょう。

自国の選手により高い点を与える傾向はあります。

例外はカナダジャッジのベロニク・ゴセリンで、自国の3選手中、2人に対して他の選手より厳しい評価を与え、1人には寛大でしたが、平均との誤差は最小限でした。

試合全体での彼女の採点をチェックすると、4ルッツの得点はともかく、彼女の列にはあまり色マーカーが付いていません。

彼女はともかく、良識の範囲内のジャッジとそうではないジャッジがいます。

誤差の深刻度を理解するには、自国選手に与えた得点、及びその選手の上または下の選手に与えた得点によって順位を左右する可能性があるか否かを見なければなりません。

韓国ジャッジはチャの順位を1つ上げ、イ・ジュンヒョンの順位を2つ上げ、イ・シヒョンの順位はそのままでした。

オーストラリアジャッジはジョーダン・ドッズの順位を1つ上げ、ジェームス・ミンの順位を1つ下げ、ブレンダン・ケリーの順位はそのままでした。

サーシャ・マルティネスはドノバン・カリージョの順位を2つ上げました。

アメリカのロジャー・グレンは、どういう訳か鍵山優真に突然夢中になったようで、同国のジェイソン・ブラウンではなく、彼を銀メダルにしていました。グレンは鍵山のフリーがよほど気に入ったようで、クワド4本の羽生に対し、鍵山はクワドが2本しかなかったにも拘わらず、1位の得点を与えました。確かに羽生は1本で手を付き、もう1本で転倒しましたが、2人の間には8点半の基礎点の差がありました。

日本ジャッジは自国選手に平均より高めの得点を与えていますが(鍵山の得点だけが異常です)、順位が変わったのは友野一希(1ランクアップ)だけでした。

中国ジャッジはジン・ボーヤン、フー・ジャン、ハン・ヤンの順位を1つずつ上げました。

 

マルティネスに戻りましょう。
彼女は羽生に対して極端に厳しかった訳ではありませんでした。平均より-2.55低かっただけで、赤色マーカーは付いていません。彼女に関しては平均より4.06以上低かった得点だけ赤色マーカーで強調しました。

しかし、詳しく見ると、平均以下だった羽生に対して、彼のすぐ下の6選手には平均より高い得点を与えています。

上位選手の中で羽生だけが説得力のない演技だったということでしょうか?

そんなことがあり得ますか?

詳細を見て下さい。
マルティネスは羽生のフリーをブラウン(ミスはありませんでしたが、ノークワドで、TESは20点差。まさにGOEとPCSの奇跡です)、ジュンファン・チャ、影山優真に次ぐ4位にしています。
彼女以外で羽生を1位ではなく2位にしたジャッジは1人だけでした。驚くことはありません、上述したアメリカジャッジです。

羽生はフリーでは大きなミスが1つ、小さなミスが2つありました。

フリップのエッジがフラットと判定されたのは残念でした。3アクセルを別のジャンプの入りに使うのはまさにサイエンスファンタジーです。今後、二度と見られないのではないかと私は恐れています。
でもミスがあれば得点は下がります。私はただ、どの選手に対してもフラットまたは間違ったエッジが正しく判定されることを願っています。

また最初の4トゥループの着氷で堪えたため、コンビネーションのリズムを失いましたが、咄嗟にオイラー/3サルコウに繋げて救ったのは驚異的でした。

2本目の4回転ジャンプは回転不足で転倒しました。でも怪我をしませんでしたから、良しとしましょう。回転不足での転倒は彼の足首にとって非常に危険です。

ミス・・・SEIMEIにとっては残念でしたが、ミスをするのが人間です。特にこの時、氷は酷い状態でした。羽生は滑る前にリンクの一部に深い穴が開いているのを見つけましたから、氷のこの状態を把握していました。彼は怪我を怖れながら滑ったのかもしれません。

ステップアウトで手を氷に付いた4ルッツに2人のジャッジが-5を付けました。

この2人にマルティネスは含まれず、彼女の評価は-4でしたが、私は常に視線の範囲を広げて前後の脈略までチェックする癖があります。

-5ではなかった転倒ジャンプが存在するのです。

キーガン・ミッシングの転倒ジャンプに対する韓国ジャッジの評価と、カムデン・プルキネンの転倒に対するオーストラリアジャッジの評価を見て下さい。

羽生の4ルッツの幅と高さ、音楽に合っていたことを考慮すると-3が妥当な評価だったと思います。勿論、韓国ジャッジは-1、日本ジャッジは-2でした。

これも正しくない評価ですが、最終GOEは本来のあるべき得点より低い数値でした。
これは妥当な評価より低かった得点の一つです。


技術点に関しては、マルティネスは羽生に1番高い得点を与えていました。

演技構成点に関しては、羽生をジェイソン・ブラウン、ボーヤン・ジン、ナム・ニューエン、鍵山優真、ジュンファン・チャに次ぐ6位にしていました。
他のジャッジ達は羽生を1~3位にしています。

3大会中3大会全てにおいてマルティネスは羽生に特に厳しい評価を与えました。

これは単なる偶然でしょうか?

 

*************

これが、このジャッジがGOE0と判断した2017年四大陸選手権の3アクセルです

マッシさん:嘘だろう???プログラムから開始から4分後に!
アンジェロさん:信じられない!しかも何という3アクセル!戦意を喪失させるクオリティだ・・・

 

しかし、彼女にとってはプラス要件を1つも満たしていないジャンプだったのですね。

ルールが定める基準からあまりにも乖離していて、怒りを通り越して笑えてきます(いや、笑い事ではありません!)。

そして滑る度にブラッシュアップされ、「完璧の中の完璧」の域に達したショパンのバラード第1番のPCSが毎回下がっていったというのもあり得ません・・・

ジャッジは一体何を評価しているのか?💢

これ以上書くと激昂してしまいそうですので、「覚え書きあれこれ」のモモ博士からお借りした人生幸朗師匠に代わりに怒ってもらって、気持ちを鎮めたと思います

「責任者、出て来い!」

 

先日、ISUミーティングが開かれ、グランプリ大会は変則開催という形で予定通り行われると発表されました。

選手と関係者の安全と健康の保証、リスク管理の徹底、選手に余計な負担を掛けないという課題をクリアする必要はありますが、グランプリ大会が開催されることは良いことだと私は思います。

選手達はきっと試合をしたいと思うのです。

著述家の千田琢哉さんの名言にこんな言葉があります:

練習を積むのではなく、本番を積む

アスリートの本業は競技です。彼らは試合のために、試合という晴れ舞台で成果を見せるために日々、ハードな練習を積んでいるのです。
に今シーズンは五輪プレシーズンですから、オリンピック出場を目指す選手達は1回でも多く本番を経験しておきたいと思います。
リスクを冒してまで競技したくないという選手は出場を辞退すれば良いのです。

しかし、リモートジャッジやオンライン開催という案は正直、非現実的だと思います。

映像だけで採点するとなると、リンクの見通しやカメラアングルによって不公平が生じますし、時差の問題もあります。そもそも最前列で見ていてもな評価をするジャッジの皆さんが、正確に評価出来るとは思えません。

ただ、この非常事態が、複数カメラの設置による精度の向上、AIの導入といったジャッジングのテクノロジー化を加速させるきっかけになればいいですね。

 

しかしフランスのスケート連盟にグランプリ大会を開催出来るだけの余力が残っているのか心配・・・

ただでさえエリック・ボンパール社がスポンサーを降りて以来、資金不足に喘いでいると言うのに、コロナ不況に加え、フランスのフィギュアスケート界はこのところスキャンダルまみれで、スポンサーに名乗りを上げる企業があるとは思えません。

昨シーズンのフランス国際の会場リンクは最悪の状態でした。
究極難度に達した現在のフィギュアスケートでは、氷の状態が不適切だと思わぬ事故や怪我に繋がる可能性があります。
開催国が然るべき基準に準拠した会場と環境を提供出来るよう、資金面における援助も必要になると思います(アワードなどに投資している場合ではありません)。

Published by Nymphea

管理人/翻訳者(イタリア在住)。2011年四大陸チゴイネ落ち