Sportlandiaより「日本スケ連:まっとうな質問に答えるのは不公平である~他」

マルティーナさんは現在、出版社の締め切りに追われ、非常に忙しいそうですが、そんな中でも全日本のジャッジについて考察記事を執筆してくれていました。

原文>>

マルティーナ・フランマルティーノ著
(2020年12月25日)

後日にまた加筆するかもしれませんが、私はただそれを行う権限があるという言うだけで、何をしてもいいと思い込んでいる人達の傲慢に心底うんざりしていますので、今ここで何か書いておく必要があります。

フィギュアスケートはルールが明確で、皆に理解されている場合にのみ、ただのエンターテイメントではなく、スポーツと見なすことが出来ます。そこに秘密があってはなりません。ジャッジがマークを付けた時、そのマークはルールに則っていなけれえばなりません。エレメントが必須要件を満たしていなかった場合にのみ、そのエレメントを無効と判定することが出来ます。そして私達は、どのルールに違反していたのか知る必要があります。そうでなければ、ただのルールの乱用になりかねません。

私はこのような記事に遭遇しました:

https://news.yahoo.co.jp/articles/24a30f3410c8f00039e612818fb6b181f3935ed2

私は日本語が分かりませんが、誰かが英訳を投稿してくれました:

え・・・何・・・何ですって???他のスケーターに対して不公平になるから答えられない?何の冗談ですか?何の冗談ですか?

分かりました。それではプロトコルを見ていきましょう。まず女子から、無効になったエレメントだけを見ました。

 

スケーター6:宮原知子、2lo
3回転ジャンプが必須。宮原は2回転になってしまったので、説明は必要ありません。

 

スケーター20:竹野比奈、1Lz
宮原と同じ状況

 

スケーター29:滝野莉子、CCoSp
このケースではスピンです。何故、彼女のスピンは無効だったのか?一人のスケーターについて「彼女のスピンはルールXを満たしていなかった」と言うのにそれほど時間がかかるとは私には思えません。

 

男子

スケーター1:羽生結弦、CCSp
最初のコールはレベル2でした。スピンは何故「No Level」に変わったのでしょうか?彼らはスピンがどの必須要件を満たしていなかったか言うだけでいいのです。私達には他に何も必要ありません。私達は様々な種類のスピンとそのレベルについて2時間議論する必要はありません。

 

スケーター9:島田高志郎、 CCoSp
何故、彼のスピンは無効だったのか?私達はプレスカンファレンスの最初から最後までこの件を議論して欲しいと言っているのではありません。ただどのルールかが知りたいだけです。

 

スケーター22:木科雄登、 1Lz
宮原、滝野と同じケースで説明はいりません。問題は明白です。

 

スピンが無効になったのは59人中、たった3人です。この3件のケースについてルールを指摘するのにそんなに時間がかかりますか?

ルールが明白でなければ、あるいは公正に守られていなければ、フィギュアスケートはスポーツではなく茶番になります。

私にとって英語で書くのは難しいことですが、怒りが敢えて難しいことに挑戦することに私を掻き立てます。途中、イタリア語に戻しますが、イタリア語で書かれた本の一部を引用するためです。イタリア語-英語は自動翻訳で充分読めますので、皆さんに理解出来ると思います。もし興味をお持ちでしたら、この本には英訳版も存在し、タイトルは「Cracked Ice」です。この本はソニア・ビアンケッティ・ガルバートの著書「氷の亀裂」です。ご存じない方のために補足すると、彼女は25年間ISU内部にいる人間です。最初の21年間は一会員、その後フィギュアスケート技術委員長に就任し、1967年から1992年までの4年間は理事会の一員でした。彼女の意見では最も重要なことの一つは公正なジャッジです。カナダのスティーブ・ミルトンは著書「Figure’s Skating Greatest Star」の中で偏ったジャッジについて書いています。

 

あまりにも酷かったため、技術委員長のソニア・ビアンケッティの提案により、ソビエト連邦はシーズン全体を通して国際ジャッジの派遣を禁じられた(65ページ)。

 

つまり、彼女は公正を期するため、スケーターに対してではなく、腐敗したジャッジ達に対して、彼らの資格を剥奪したのです。「氷の亀裂」78-80ページ第9章より

ここで彼女が語っているのは1988年オリンピックの男子シングルの試合です。

私は男子シングルの審査委員長でした。オリンピックタイトルは1986年と1987年の世界チャンピオン、ブライアン・ボイタノ(アメリカ)とブライアン・オーサー(カナダ)の間で争われました。メディアと世間はこの大会を「ブライアン対決」と呼んでいました。ショートプログラムの最後の公式練習で、ブライアン・オーサーがジャンピング・ピルエットの前に一連の動作を実施しているのに私は気が付きました。美しく独創的な動きでしたが、私はこれらの動作と、ルールとの互換性に疑念を抱きました。万が一減点されたら、金メダルを逃すかもしれません。私の本能は、すぐにブライアンに知らせるよう促しましたが、私は自制しました。彼がどのような反応を示すか分からなかったからです:この可哀そうなこの青年は既にカナダという国の巨大なプレッシャーを背負っているというのに、これほど重要な本番の数時間前にこのようなことを知らされたら、パニックに陥るかもしれないと思ったのです。

私は午後中、どうするのが正しいのか考え続けました。オーサーとボイタノは共に素晴らしいスケーターで、どちらがオリンピックタイトルを獲っても私にとって変わりはありませんでした。私が望んでいたのは、2人のスケーターが共に実力を発揮してベストな演技をすることだけでした。しかし、この状況では一方がもう一方に比べて不利でした。彼の責任ではなく、彼のコーチのルールに対する知識不足のために。最終的に、私がオーサーに知らせないのは不公平で正しくないという結論に達しました。こうして私は電話の受話器を取り上げ、選手村のカナダ選手団に電話したのです。団長のジョン・マッケイと話し、あのピルエットの動作について知らせました。彼はあまり感情を示さずに私にお礼を言いましたが(おそらく彼にしたら厄介事を預かってしまった気分だったのでしょう)、私は肩の荷が下りた気持ちでした。私は自分が正しいと思ったことを実行し、これからどうするか判断するのは連盟の責任です。翌日、オーサーは完璧なショートプログラムを滑りました。彼のコーチは本番前にスピンの入りを変えることが出来ました。

 

ビアンケッティは「スピン」ではなく「ピルエット」と書いているので、その箇所の文章に少し違和感を覚えますが、彼女は、彼がミスを犯すのを待つのではなく、スケーターに知らせるのが正しいことだと判断しました。ジャッジは、スケーターが素晴らしく、観客に愛されているという理由だけで得点をプレゼントするのではなく、ルールブックを手に自分が正しいと思うスコアを与えなければなりませんが、スケーターのミスを指摘するのは、モラルに反するプレゼントではなく、正しいことです。

ビアンケッティは著書のこの直後の段落で1980年世界選手権を振り返っています。彼女のジャンプに関する表現は奇妙に思えますが、エピソード自体は興味深い内容でした。

 

ショートプログラムでスコット(ハミルトン)は3サルコウのジャンプコンビネーションを跳んでいました。試合前の公式練習中、私は彼が3サルコウをいつも両足で踏み切っていることに気が付きました。これはジャッジ達から厳しく減点される、致命的なミスです。スコットは才能溢れる将来有望な若い選手で、いつものことですが、試合前にこのミスを彼に知らせるのは自分の義務だと思いました。取り敢えず、アメリカ連盟に知らせましたが、私の起こした行動はスコットにとっても彼のコーチのドン・ローズにとってもありがたくないようでした。ムッとはされましたが、リスクを回避するために彼らはコンビネーションを変更することにしました。良かったです!

残念なことに、スコットは私が彼を助けるためではなく、彼を不利にするためにアメリカ連盟にこのような進言をしたと捉えました。
そんな馬鹿なことがあるでしょうか!
もし私にそのような意図があったなら、試合前に彼の連盟に知らせず、ジャッジ達が彼らの義務を果たすのを傍観したでしょう。そして、かなりの確率でスコットはトップ
5には入れませんでした。

 

つまり公正な試合のために、ジャッジはミスをスケーターに知らせることが出来るのです。

テクニカルパネルが1つのエレメントを無効と判断した時は常に、テクニカルパネルは理由を述べ、プロトコルに理由を記載するという新たなルールを設けるべきだと私は思います。全てのスケーターのために、そうでなければ、公正なスポーツではなく、権力を持つ者が好きなことを出来る権限の乱用です。


☆そしてこちらは連盟が判定理由を発表した後の12月26日の記事です。

スコアを変更するには

原文>>

マルティーナ・フランマルティーノ著
(2020年12月26日)

 

前田真美さん、柴田健吾さん、石川郁子さん。あなた方は結果が発表された後でスコアを変更することが可能なことをご存じですか?  おそらくあなた方の能力不足を晒すことにはなりますが、ミスを認め、それを正すことで、あなた方の誠実さとモラルを世間に示すことは出来るでしょう。

スコアが修正された例を2つ挙げましょう:

公式プロトコル:

http://www.isuresults.com/results/season1617/ec2017/ec2017_IceDance_SD_Scores.pdf

 

私はアンナ・カペッリーニのインタビューを覚えています。修正はスモールメダル授与式の後に行われましたので、彼らはスモールメダルを返還しなければなりませんでした。彼女は文句を言いませんでした。少し悲しいけれど、ルールはルールであり、彼らはミスを犯し、修正は正しい、彼女とラノッテはフリーダンスで金メダルを勝ち取るためにベストを尽くす、彼女はインタビューでそう話しました。

 

もう一つの例は2018年オリンピック女子ショートプログラムからです:

公式プロトコル:

http://www.isuresults.com/results/season1718/owg2018/OWG2018_LadiesSingleSkating_SP_Scores.pdf

スケーターがミスした場合にはミスの内容を述べ、あるいは自分のミスを認めてスコアを修正します。そうでなければ、フィギュアスケートは公正な競技ではなく、ジャッジによる恣意的な権限の乱用になります。

☆筆者プロフィール☆
マルティーナ・フランマルティーノ
ミラノ出身。
書店経営者、雑誌記者/編集者、書評家、ノンフィクション作家
雑誌等で既に700本余りの記事を執筆

ブログ
書評:Librolandia
スポーツ評論:Sportlandia

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☆マルティーナさんの全日本ジャッジの考察記事はこれで終わりではありません。
世界中のファンから大ヒンシュクを買っているジャッジ2のあり得ない採点についてもメスを入れています。

こちらの記事はもっと長いですので、後日翻訳したいと思います。

Published by Nymphea(ニンフェア)

管理人/翻訳者(イタリア在住)。2011年四大陸チゴイネ落ち @pianetahanyu