Sportlandiaより「開催国のオフィシャル達:アメリカ」

マルティーナ・フランマルティーノさんの分析シリーズ第7弾
今回は再びジャッジの話題です。

 

原文>>

 

マルティーナ・フランマルティーノ著
2020年8月10日

 

本題に入る前に一言お伝えしておきます。
試合の採点に関する当ブログ記事(ISUのタグのついた投稿)の全文または一部を当ブログの画像を転載しながらイタリア語またはその他のあらゆる言語で皆さんのブログ、またはその他のあらゆるスペースで紹介することを許可します。

私は試合の採点が公正にお行われることを望んでおり、より多くの言語で、具体的なデータを示しながら議論すれば、何かが変わるかもしません。

望みは薄いかもしれませんが、あるスケーターが誰にとっても不可能なことをやっているのを見た後、私は自分にとっての「不可能」の観念を変えようとしています。

幾つかは「無理そう」と思われることですが、「無理そう」だからと言って最初から諦めてしまう必要がありますか?

私達に出来るもう一つのことは、判定における主観を出来る限りなくすために先端テクノロジーの導入を要求するこの請願書に署名することです:

https://www.gopetition.com/petitions/figure-skating-to-improve-judging-system.html

評価における主観を制限する。
特定の選手に有利とかそういう問題ではありません。全ての選手が公正に評価されるべきです。

本題に戻りましょう。

ISUは今季グランプリ大会を開催国のオフィシャル達による国内大会にしようという考えです。

どの国にも全カテゴリーに競争力のある選手が揃っている訳ではありませんから、幾つかの大会はバランスが悪くなります。
しかし私が心配しているのは、選手のレベルよりジャッジのレベルです。

まずはスケートアメリカから:全てのアメリカジャッジを見ていきましょう。

国際大会で採点したことがあるジャッジ、だだし1試合に1人だけ。

何年も前に遡りますが、このような具体的で正確なルールがあります。

歴史を振り返ると、既に1908年のオリンピックで、この大会一度切りとなった種目、スペシャルフィギュアの金メダリスト、ロシアのニコライ・パニンは、男子シングルのコンパルソリーフィギュアでスウェーデンのライバル、ウルリッヒ・サルコウに次ぐ2位になった後、フリーを滑らずに棄権していることが分かります。

パニンはロシア人は1人だけ、スウェーデン人が2人のジャッジメンバーでは公正に評価されないと考えたのです。

サルコウがレジェンドであることは議論の余地はありませんが、もしスウェーデンジャッジも1人だったら・・・ひょっとしたら大会結果は変わっていたかもしれません。

それからほど遠くない1927年(1915年と1921年は世界選手権は確か開催されなかったはずです)の世界選手権で、非常に若いノルウェーのソニア・ヘニーが、1924年のオリンピック金メダリストで世界選手権五連覇中だったオーストリアのヘルマ・サボーを破り、自身初の世界タイトル(その後、ヘニーは世界選手権を10連覇します)を勝ち取りました。

この時、2人のジャッジがサボーを1位と判断したのに対し、ヘニーは3人のジャッジから最も高く評価されました。

サボーを1位にしたのはオーストリアとドイツのジャッジ、一方、ヘニーを1位にした3人のジャッジは全員ノルウェー人で、開催国もノルウェーでした。

このエピソードの後、各国が派遣できるジャッジは一人までとルールが変更されました。

それ以前は3つの異なるスケートクラブに所属するジャッジであれば問題はなかったのです。

無論、この変更だけでは、ジャッジ間の八百長を撲滅することは出来ず、実際その後も様々な不正が起こりました。

遅かれ早かれ、よりスキャンダラスだった案件ついて取り上げたいと思っていますが、ここでは1カ国のジャッジ達によってのみ評価された大会に集中したいと思います。

それはどの大会か?
国内選手権です。

国内選手権で樹立された記録が公式記録にならないのには理由があります。

ジャッジ達が自国の選手に世界記録を更新させるために過剰評価する可能性があるからです。

実際、ナショナルでは途方もないプログラムや、プログラムより更に途方もない得点を目撃することがあります。

理論上、国内選手権の得点は国内ランキングを決め、各国の連盟が個々の試合にどの選手を派遣するか決めるためにナショナルレベルでのみ考慮されるべきです。

実際、各国連盟はナショナルの結果に基づいて(それだけではありませんが)誰を競技会を派遣するか決定します。

しかし、その得点が国外では全く考慮されないというのは嘘です。
国際ジャッジは国内大会の得点を見ますし、これらの得点は彼らの記憶に残り、無意識の内に影響されるかもしれません。

外部の状況に影響されたジャッジの例をご覧になりたいですか?

このケースでは、このジャッジの評価に影響を与えたのは他のジャッジ達が出した得点ではなく、ネット上で勃発した論争でした。

2019年スケートカナダ

羽生に対して最も厳しかったオーストラリアジャッジ、リサ・ジェリネクの演技構成点はInterpretation以外の全ての項目が9.00点で、9.50以下の得点を与えた唯一のジャッジでした(Interpretationは9.50ですが、いずれにしてもカナダジャッジ、リン・デイと共に全ジャッジ中最も低い評価でした)。特に完璧だった3アクセルに与えられた+4には唖然とさせられました。+5に一体何が足りなかったのでしょうか?

誰にも理解出来ない評価でした。
実際、この日、私はネットでジェリネクに対する批判を多く目にしました。

その結果は羽生のフリープログラムのプロトコルで見ることが出来ます:

演技構成点は9.75点に上昇し、間違いを犯さないために全ての項目で同じ得点を与えています。各項目に大した違いはないですから、これで問題無しということでしょうか?

またどんなに大目に見てもでもせいぜい+1だった4ループに+3を与えています。このジャンプは0が妥当でしたから、羽生に対してかなり寛大だったと言えます。

このエピソードはジェリネクは悪意や不正ではなく、ただ単に正しく評価する能力がなく、ネットの意見に簡単に影響されるジャッジだということを証明しています。
彼女には再び試合のジャッジ席に座る前に、研修セミナーをしっかり受けることをお勧めします。

つまり、ジャッジ達はネットの意見に影響されるように、国内選手権を含む以前の大会の結果にも影響されるのです。

演技構成点については、今後掘り下げるつもりですが、ここではネイサン・チェンがシニアに上がってからの大会(ジャパンオープン以外)を分析するに留めます。

試合別の得点をシーズンごとにまとめました。
全米選手権は太字で強調しました。

「Classifica」の列にはチェンの最終順位、そして括弧内にショートとフリーの順位が記載されています。

2列目と4列目にはチェンがショートとフリーで獲得した得点。

昨シーズンは四大陸選手権に出場せず、世界選手権は中止になりましたので、チェンの最後の試合は全米選手権でした。

2016-2017年シーズンと2018-2019年シーズンで興味深い傾向が見られます。
全米前の大会の得点が全米後と比較して断然低いということです。

全米選手権の高得点が、国際ジャッジ達にチェンの演技構成点を引き上げさせたとは考えられませんか?

偶然だと言う人もいるでしょう。実際、2017-2018年シーズンにはこのような現象は起こりませんでしたから。

でも私の意見では、このシーズンでもこの傾向が確認出来るのです。

2018年の全米後にチェンが出場した試合はオリンピック団体戦のショートプログラムでした。

彼の演技はどのような内容だったでしょうか?

4F+2T、フリップの着氷はかなり前のめりになりましたが、何とか堪えてコンビネーションにしたのは見事でした。ただし、トゥループはダブルになり、GOEは当然マイナスでした。

ステップからのソロジャンプは4トゥループの予定が2トゥループになり、無効のジャンプだったため、得点にカウントされませんでした。そして3アクセルは転倒でした。

チェンはむしろ自分が受け取った演技構成点と、親愛なるアメリカジャッジのローリー・パーカー、カザフスタンジャッジのユーリー・グスコフ、オーストリアジャッジのトーマス・ビーグラー、こともあろうかPerformanceで彼に2番目に高い得点を与えたカナダジャッジのジャニス・ハンターに感謝すべきでしょう。
スピンの1つが-1だっただけで、3アクセル、4トゥループ、後半の3ルッツ/3トゥループを含む全てのエレメントがGOEプラス評価だったイスラエルのアレクセイ・ビシェンコより高得点です。
他の得点の詳細を見るつもりはありませんが、チェンのPerformanceは本当にビシェンコより高い評価に値したでしょうか?

団体戦での最悪の印象を引きずりながら個人戦に出場したチェンのショートプログラムは最悪で、全選手中17位に沈みました。

冒頭の4ルッツで転倒してコンボに出来ず、続く4トゥループもステップアウトでコンビネーションをリカバリー出来ず、当然GOEはマイナス。トドメは氷に両手まで付いた3アクセルでの2度目のステップアウトでした。
2回続けてプログラムのジャンプ要素が全滅だったため、演技構成点は下がりました。
フリーの演技構成点はシーズン前半の平均よりやや低い評価でした。
確かにチェンはクワドを6本降りましたが、フリップはGOEマイナスでした。

それにチェンの最悪のプログラムを2本続けて見た直後でしたから、ジャッジ達は彼に高得点を与えてよいものか、頭を切り替える必要がありました。

そして世界選手権です。

平昌の金メダリスト、羽生結弦はまだ怪我が回復していないため欠場。

休養を決めていたハビエル・フェルナンデスも不在(翌シーズンの欧州選手権が彼の最後の試合になりました)。銀メダリストの宇野昌磨はいましたが、片足を負傷していました。

状況がチェンに道を切り開きたがっていたとすれば、条件は全て揃っていました。

チェンは2本の4回転ジャンプの着氷が少し乱れ、GOEで少しマイナスされるものの、全選手中最も出来の良いショートプログラムを滑り、2度の欧州選手権銅メダリストのコリヤダ、同シーズン四大陸選手権の銅メダリストの若いヴィンセント・ジョウを上回り、既に世界選手権の表彰台に上ったことのある(銅メダル2度)ジン・ボーヤンを約6点差、宇野を7点以上引き離して首位に立ちました。

ショートプログラムの後、大自爆でもしない限り、チェンが優勝するのは明白でした。
4回転ジャンプ6本中2本がGOEマイナスでしたが、非常に高い技術点を獲得し、演技構成点でも国際大会で初めて90点を超えました。
彼の勝利はみんな知っていましたから、ご褒美に高得点を与えて何が悪いのでしょう?

 

私の意見ではもっと興味深いを状況を見るには2016-2017年シーズンまで遡らなければなりません。

1月の全米選手権でチェンは当時の彼にとっての最高得点を獲得しました。
2月の四大陸選手権。
ここで少し触れるだけに留めますが、この大会については今後再び取り上げたいと考えています。

ショートはチェンが1位、羽生は挽回してフリー1位ですが、タイトルは総合で羽生を上回ったチェンの元に転がり込みました。

そして3月の世界選手権。

四大陸選手権で過去2シーズン世界選手権銀メダリストだった羽生と宇野を上回ったチェンは優勝候補の一人としてこの大会に臨みました。

過去2シーズン世界王者のフェルナンデスが同シーズンのグランプリファイナルで四連覇を達成した羽生、宇野、そしてチェンより下の順位で、ボーヤン・ジンとパトリック・チャンもファイナルと四大陸どちらでもチェンを下回ったことを考慮すると、若いチェンは間違いなく優勝候補の一人でした。

しかし、事は思った通りには行きませんでした。ショートプログラム6位、フリーは4位でしたが、最終順位でも6位に留まりました。

ショートプログラムは3アクセルで転倒しますが、演技構成点は43.11でした。-1の要素が3つあったものの、全体的にGOEプラスだった四大陸選手権とほぼ同じ点です。

羽生に勝ったばかりだから、高い演技構成点を与えて良いということでしょうか?

しかし、表彰台を狙っていた選手にとって最終順位7位は満足の行く結果であるはずがありません。

ジャッジ達の脳内でチェンに対する評価は暴落しました。

私の妄想だと思いますか?
シーズン最後の試合となった世界国別対抗戦を見ましょう。

この大会でチェンはミスをしませんでしたが、演技構成点は下がりました。

何故なら、その直前の大会で上出来とは言い難い結果だったからではありませんか?
国別対抗戦のチェンの2つのプログラムは決して期待外れの出来ではなかったはずです。

これは前の試合がジャッジの先入観に影響を与えた例です。

ジャッジ達が最近の試合の結果に影響されるなら、国内選手権の結果に影響されない訳がありません。

 

得点だけ見ると、2019年の全米選手権でチャンは2つの圧巻のプログラムを滑ったように見えます。でも私は得点だけでなく、プロトコルと実際の演技も見ました。

これがフリーです:

チェンは0:40から動き始めます。冒頭は特に難しいことはしていません。プログラムの世界観に入るためにその場で幾つかの動きを行っています。勿論、私はこのようなタイプのプログラム開始に文句があるわけではありません。

ショパンでは羽生は冒頭の15秒間静止したままですが、このプログラムのスタートとしては完璧な振付です。

ジェーン・トービル/クリストファー・ディーンは彼らのボレロの冒頭で跪いていますから、得点に繋がることは何もしていませんが、視聴者をボレロの世界観に引き込みます。従ってこのような冒頭は何の問題もありません。

3段目の中ほどからチェンは本格的に動き出します。おそらくチョクトー、そしてミニ・イナバウアー。クロスオーバーの間に幾つかのステップを挟んでチョクトー。

0.53から4ルッツの助走を始めます。

その間、チェンは何かやってることを見せるためにチョクトーを挟み、直線滑走に入りながらエッジチェンジを行います。ルッツのトゥを突くのは1:03。少し助走が長過ぎませんか?


着氷する否やもう一方の足も氷に付きます。つまり流れのある着氷ではありません。

その後、クロスオーバー、スリーターン、チョクトー
1:12、3段目3枚目のスクリーンショットで再びリンクの端から端まで助走しているのが分かります。
それどころか、コーナーから既に助走を始めています。

幾つかのクロスオーバー、チョクトー、1:23で準備し、1:25でトゥを突いています。

ここで2つのことに注目しなければなりません。

1つ目は長い助走です。-1から-3の減点のはずです。

2つ目は・・・エッジはチェックしましたか?

最後の2枚のスクリーンショットではエッジはフラットに見えます。
もし!なら-1から-3の減点。しかし!マークも-1もありません。

総合評価はどうだったのか見てみましょう:

ジャンプはコンパクトに見えますから、プラス要件1)の「幅がある」を満たしていないように思えますが、このアングルからではよく分かりませんので、これ以上追求するのはやめましょう。

チェンはここに来て幾つかのステップは入れています(誓って言いますが、私は決して皮肉を言っているのではありません)。

スクリーンショットの連写はより長くなります。

ここではツイヅル、短いイーグル、シャッセやクロスオーバーよりは難しい幾つかのステップを入れています。そしてジャンプ、4トゥループに入ります。

1:47から助走を始めます。そう、ここではチョクトーを幾つか入れていますから、ただ漕いでいるだけではありません。1:55で離氷し、数秒後に着氷。

3段目の1枚目の画像を見て下さい。

ブレードが氷を削っているのが分かります。

ルールでは「scratching」は-1から-3のはずです。例えマイナスでなくても、エフォートレスではありません。つまり+3以上の評価を与えるべきではないはずです。そうですね?

トゥループの後、3アクセルに移ります。ここではチョクトーとスリーターンを含む助走は僅か7秒(2:07から2:14)でしたから、ツッコまずにおきましょう。

それから1本目のスピン、ステップシークエンス、最初のコンビネーション。この要素は驚異的なことにイーグルから実施しています。
しかし、チェンはフリーではいつもイーグルからのジャンプを入れていますから、常にジャンプの前に何も入れていない訳ではないのです。

一段目4枚目の画像は見事なプレローテーションに見えませんか?
4トゥループの着氷では、チェンは(彼にはよくあることですが)エッジがゆがんで片側に偏っています。勿論、ミスと言えるものではありませんが、このようなジャンプをエフォートレスと定義することは困難です。続く3トゥループは本当に小さなジャンプで、実質、離氷したその場所で着氷していますから、プラス要件1)の「ジャンプの幅」も満たしていません。

しかし、最も重要な問題は回転です。完全に回り切っておらず、回転不足です。コンビネーションがプログラム後半に実施されていることを考慮すると、基礎点が本来の15.07から14.15に下がり、GOE-1から-2が適用されなければなりません。つまり、このコンビネーションは基礎点で減点され、GOEは大目に見てもせいぜい+1です。
実際の評価はどうでしょうか?

2本目のコンビネーションに移りましょう。

スクリーンショットの数は多いですが、実際には簡単なステップだけで、あとはクロスオーバーばかりです。

3:26から3:40まで私は何も見逃しませんでしたが、難しいステップは1つもありませんでした。

それからトゥを突き、3ルッツ/3トゥループのコンビネーションを実施します。3トゥループは明らかにプレローテーションで、その場で離氷・着氷しており、数センチしか移動していません。

プラス要件1)を満たしていないと+4以上を与えてはならず、「稚拙な踏切(poor take off)はGOE-2から-3のはずです。しかも、着氷後、いつものように大急ぎで逃げ去っていますから、大目に見ても+1以上は困難と思われます。

先に進む前にクスリーンショットの連写をもう一度見直しましょう。

最後の段の中央の画像、ここでチェンは少しつまずいています。信じられない人は動画を見に行って下さい。

チェンは確かにつまずいています。

私の思い違いでなければ、これは、スケーティングスキルの評価に影響を与える要素になりませんか?

先に進みましょう。

チョクトー、スリーターン、そして3フリップからの3連続ジャンプです。

1段目の最後の画像、私にはエッジがフラットに見えますが、もっとはっきり見える画像が欲しいところです。

そしてコレオシークエンス、スピンと続きます。

私はルールを完璧に解釈出来ている訳ではありませんので、誰かに教えてもらいたいですが、「costume failure」の-1.00が適用される案件ではありませんか?

例え美青年であっても、私は演技中にスケーターのお腹は見たくはありません。

特殊なプログラムでエキシビションなら耐えられるでしょうか?(あくまでも「耐える」であり、「歓迎」ではありません)
いいえ、結構です。

2本目のスピン、シットスピンを見ましょう:

3本目のスピン:

シットポジションがちゃんと維持出来ていると思いますか?
臀部が膝よりの状態で2回転しなければなりません。

演技構成点に移りましょう。

技術要素に分類され、基礎点とGOEで評価されるステップシークエンスとコレオシークエンスを除くと、ステップから実施されたジャンプ要素は1つだけ、プログラムを表現するために特別なステップを入れていたパッセージは一箇所だけでした。

プログラムのその他の部分では、簡単なステップを時々入れながらリンクを端から端まで滑走しているだけです。しかも1度つまずいています。

演技構成点の要件はどうなっているでしょうか?

Outstandingは論外です。Excellentも私にはジョークに思えます。Very goodも褒め過ぎです。私は7.00から7.75に値するGoodが妥当だと思います。

公式プロトコルのスクリーンショットは十分見ましたので、SkatingScoresで総合を見ましょう: https://skatingscores.com/1819/natusa/men/long/

ジャッジ3、ジェシカ・バスガングは最初のスピンで指が滑って+5ではなく+3を押してしまったことを未だに悔んで悶々としているでことでしょう。

ジャッジ9は私達が良く知っているローリー・パーカーです。
GOEは自制したようで、3人のジャッジが彼女より高い得点を与えています。
しかし、演技構成点ではリミッターが外れたのでしょう。総合では全ジャッジ中2番目に高い評価を与えています。

彼女の気持ちになってみましょう。
ショートプログラムでは4人ものジャッジが彼女より高い得点を与えました。

どうしよう・・・
アメリカ・スケート連盟が来月のオリンピックに彼女ではなく、別のジャッジを派遣することにしたら?

自分に何が出来るのか、連盟に速攻でアピールした方がいいでしょう。

昨シーズン、パーカーは国際大会のジャッジを一度も務めませんでしたが、ISUコミュニメーションNo.2337:List of Referees, Judges, Technical Controllers, Technical Specialists, Data & Replay Operators season 2020/21 for Single & Pair Skating, Ice Dance and Synchronized Skating(2020/2021年シーズンのテクニカル及びジャッジ一覧)には彼女の名前はサーシャ・マルティネル、ヴァルター・トイゴの名と共に記載されています。

このジャッジパネルを国際大会で採用するのは勝手ですが、現実からかけ離れた得点で私達を仰天させるのは止めて頂きたい。

この全米選手権の後、チェンは埼玉世界選手権でノーミスと見なされるプログラムを披露しました。そして私達が見た通り、ジャッジ達は全米選手権のこのような評価に簡単に影響されたのです。

 

☆筆者プロフィール☆
マルティーナ・フランマルティーノ
ミラノ出身。
書店経営者、雑誌記者/編集者、書評家、ノンフィクション作家
雑誌等で既に700本余りの記事を執筆

ブログ
書評:Librolandia
スポーツ評論:Sportlandia

**************

私がネイサンを羨ましいと思うことが一つあるとすれば、彼が自国の連盟から全力で応援され、サポートされていることです。

アメリカはバンクーバー五輪の男子シングルで金メダルを獲得したイヴァン・ライサチェク以来、男女シングルでは世界チャンピオンを輩出していませんでしたから、アメリカ・スケ連は久々に自国が生んだ世界チャンピオンを歓迎し、全面的に推していこうという姿勢を清々しいほど大っぴらにしています。

一方、日本フィギュアスケート史上初の男子金メダリストであり、66年ぶりの五輪連覇という空前の快挙を達成した羽生結弦に対する日本スケート連盟の扱いはどうでしょうか?

先シーズンの全日本選手権、完璧なOtonalに私は国内大会だし114点ぐらい出るのではないかと思いました。
しかし実際は110.72、PCSは48.39で同シーズンのスケカナ(48.47)より低い評価でした。
全米選手権のネイサンなら115点はもらえていたのではないでしょうか。

全米選手権における自国選手爆盛りは今に始まったことではありません。

ネイサンが登場するずっと以前から、どのカテゴリーの選手に対しても国際大会の水準よりずっと高い得点が与えられていましたし、回転不足やエッジの判定も激甘でした。

そして、エース選手に対してだけでなく、最近の大会であれば、ネイサンだけでなく、ジェイソンもヴィンセント・ジョウも、女子ならアリサ・リウもマライア・ベルもブライディ・テネルも水準より遥かに高い得点をもらっていましたから、ある意味平等と言えます。

この傾向はロシア選手権でも同様ですし、他の国、例えばフランス選手権でケヴィン・エイモズが獲得した得点を見ても、国内選手権で得点が大盤振る舞いされるのは、どの国でも共通の傾向と言えます。

マッシミリアーノさんは、イタリア選手権でエッジエラーや回転不足を見逃し、GOEとPCSでバカ高い得点を出すのは、国外の大会で競技した時にあまりの得点の乖離に選手達がショックを受けてやる気をなくすから止めた方がいいと批判していました。

全日本は評価が厳しめなのでしょうか?

全体的に見るとそうとも言えますが、選手によって明らかにそうではないケースもあります。

私は2018年と2019年の全日本選手権の男子メダリストの演技内容と得点詳細もマルティーナさんに詳しく分析してもらいたい・・・

Published by Nymphea(ニンフェア)

管理人/翻訳者(イタリア在住)。2011年四大陸チゴイネ落ち @pianetahanyu