懐かしいスケートアメリカのパリ散を訳したついでにフリーの「ノートルダム・ドゥ・パリ」も(伊ユロスポ版は確か未出だったような気がします)。
2012年スケートアメリカと言えば、センセーショナルな「パリ散」歴代最高得点の後、フリーでまさかの大自爆という壮絶なジェットコースター展開で、ショートもフリーも別の意味で衝撃的な大会でした。
何故、大遭難のフリーの実況解説をわざわざ訳すのか?と言われそうですが、そこはさすがに羽生結弦の良き理解者あり、最古参ファンを自負するお二人さん、ミスの原因を冷静に分析しながら、羽生君の才能とポテンシャルを絶賛していて、私は素晴らしい解説だと思うのです。
エレナさんの動画です。いつもありがとう!
Grazie Elena!
実況:マッシミリアーノ・アンベージ(M)
解説:アンジェロ・ドルフィーニ(A)(国際テクニカルスペシャリスト)
M:羽生結弦
ショートプログラムで世界最高得点を叩き出したばかりだ。
ショートと比べてフリーはどうか興味がある。
というのも羽生は昔からフリー番長で、過去の試合ではショートでミスをして出遅れ、並外れたフリーで挽回することが多かった。
今日もそうなるか見てみよう。
スケーターの価値(才能)には議論の余地はない。
まだ18歳にもなっていない非常に若い少年だが、以前にも話したように、既にこの年齢で人生における重要な決断をした。
故郷を離れ、ブライアン・オーサーに師事するためにカナダに渡ったのだ。
その成果は彼のスケートからすぐに見て取ることが出来た。
曲はリッカルド・コチャンテの「ノートルダム・ドゥ・パリ」
アイスダンスのでデイヴィス/ホワイト組の演技でも聴くことになる音楽だ。
だから今シーズン流行っているテーマと言える。
A:最初のエレメントはトゥループ
4トゥループ、残念ながら・・・転倒
4サルコウで再び転倒。
羽生にとってやっかいなスタートになった
A:3アクセル
これは見事に実施された
足替えシットスピンも素晴らしい
A:そしてステップ
今シーズンからステップシークエンスのパターンも自由になった。
サークルやストレートラインの拘束はなくなり、完全に自由なパターンを描くことが出来る。
M:でもリンク全体をカバーすることが必須要件だ。
A:その通り
2本目の3アクセル、3トゥループとのコンビネーション
ルッツはダブルになってしまった。
2回転した後、空中で開いてしまい、両足着氷になった。
2本目のルッツは良かった
これはトリプルだ
A:3ループ
A:(スピンの)最後のビールマンポジションでの回転が少し足りなかった。
男子では非常に珍しいポジションだ
A:3フリップで転倒
非常に難しい入り方だった
ステップとフィギュアのムーブメントから実施されていた。
羽生は少し疲れてきている
これはコレオシークエンス
(ジャンプの転倒のせいで)開始が少し遅れた。
ここでもリンク全体をカバーすることが必須要件だから、このエレメントは0点になってしまう。
A:最後のエレメント、このコンビネーションスピンも疲れでベストの出来ではなかった
A:間違いなく、フィジカル面でまだトップコンディションではない羽生だ。
M:それにこれは非常にエネルギーを消耗するプログラムだ。
冒頭に4回転ジャンプ2本
3アクセル2本
3アクセルは並外れた技術を持つ羽生にとっては簡単なエレメントだけれど
A:彼にとっては、だね(笑)
M:僕が思うに2本目の3アクセルから窮地に陥ったんだと思う。
いつもほど飛距離がなく、少し前のめりで着氷した。
それでも3トゥループを付けたのは見事だったけれど、それ以降、このプログラムを滑り切るのが困難になった。
それに羽生には喘息の問題もあることも忘れてはならない。
だからトップコンディションでないと、この問題も加わって膝に来るんだろう。
A:間違いなくそうだろう。
それに滑りという点においても、終盤1分半は腕の動作がなおざりになり、リンクの端から端まで懸命に滑っているのが見ていて分かった。羽生のようなクオリティの選手には珍しいことだ。
しかし、シーズンのこの時期にこれほどテンコ盛りのプログラムを滑ることは、アスレチック面の準備という点において困難なことだ。
だから予定通りには行かなかったし、ミスも結構あったけれど、複数の3回転ジャンプ、特に素晴らしいクオリティを持つ3アクセル2本は持ち帰ることが出来た。
しかし、この選手は・・・もしこのようなプログラムをクリーンに滑り切ることが出来たなら・・・厄介な客どころではない、世界タイトルの真の大本命になることは明白だ。
M:昨シーズンに比べると、ジャンプ前のトランジションを変えてきたと思う。
ジャンプの前に必ずステップやフィギュアのエレメントが組み込まれている。
ある意味、チャンの技術を彷彿させるよね?
ジャンプの前に何か入れながら、同時にスピードを維持することは並大抵のことではない。
A:その通り。これを行うには規格外のスケーティングスキルが備わっていなければならない。そして彼にはそれがある。
M:ジャッジの多くが羽生のこの特性に気付き、実際にショートプログラムでは彼の演技構成点は急上昇した。
A:ショートプログラムは・・・君が先ほど言ったように世界最高得点だった。
いずれこのショートについてはテーマを広げて話したいけれど、ルールの変更も彼を有利にした。
このフリーではリンクの中ほどから開始されたコレオシークエンスでも何点かを失ったとは言え、彼が素晴らしい資質を持つスケーターであることに変わりはない。
君が先ほど言ったようにスケーティングの質はチャンと並ぶことが出来る。
トランジションもあった。
フリップでは入りのスピードが足りなくて転倒した。
つまり、ジャンプの実施に必要なスピードがなかった。
何故か?
見ていて気付いたと思うけれど、このジャンプの直前に非常に難しいエレメントが組み込まれていたからだ。
M:フリーの得点は勿論、総合でも小塚を上回るのは困難だろう。
ささやかな事だけれど、小塚はこれまでのスケートアメリカ大会記録、237.72点を大幅に更新した。
羽生も越えられるか見てみよう。
(得点表示)
M:羽生も越えたけれど、大会の勝者は小塚だ
しかも大差で。
ショートが終わった時点で羽生は10点近くリードしていたのに・・・
まあ仕方がない
ミスはあったけれど、羽生への評価に影響を与えることはないだろう。
つまり断然ポジティブということだ
A:当然だ
彼は多大な資質を持つスケーターだ
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☆この頃はまだ1本目の3アクセルを前半に跳んでいたんですね。
この次の大会、NHK杯から3アクセルが2本とも後半に移動しました(以降、3アクセル2本後半はデフォルト、最近では4T/eu/3Fを含むコンビネーション3本の後半固め打ちもデフォになりました😱)。
今年の四大陸選手権では久々に最初の3アクセルが前半でした。
あの4Sから助走レスで3A、アクセルの出で3Fと言う「Copyright © Yuzuru Hanyu 2020」のシークエンス、 音楽にもピタリとハマっていて凄く好きでした。
また見たいな~