イタリア解説EuroSport版「平昌2018:STUDIOメドザギ分析+インタビュー」

平昌オリンピック中毎晩放送されていたその日のハイライトを解説する番組STUDIOから
メドザギの分析とアリーナのインタビューが非常に興味深かったので翻訳します。

 

出演者

司会:
エットーレ・ミラッリア(司会)

ゲスト:
マッシミリアーノ・アンベージ(M)(ウィンタースポーツ専門ジャーナリスト)

 

司会:今日の女子フリーではカロリーナ・コストナーが多くの候補達と共に銅メダルを賭けて戦ったが結果は5位だった。
しかし金メダル争いは非常に若いロシアの選手2人によって宇宙レベルの頂点対決が繰り広げられた
ザギトワは15歳、メドヴェデワは18歳?

M:18歳になったばかりだね。確か1999年11月6日生まれだったと思う

司会:つまりロシアのオリンピック代表選手達は将来を保証されている訳だね
オリンピックだけ見ても、特にザギトワは凄い滑りだった

M:ザギトワとメドヴェデワでは議論は異なる
メドヴェデワは既に身体の成長が終わっていて、いずれにしても18歳だ

だからこの際、彼女の戦歴に欠けている唯一のタイトル、オリンピック金メダルを目指してこれからまだ何年も現役を続けることが出来る。

実際、試合の後、彼女は泣いていた。なぜならシーズンが始まったばかりの頃は彼女が絶対的な優勝候補だったからだ。
勝利はメドヴェデワのより若いリンクメイト、ザギトワが手に入れた。

彼女はメドヴェデワと違って、モスクワ生まれではなく、モスクワの名門クラブ、エテリ・トゥトベリーゼの学校でスケートを学ぶために移住してきた

エテリ・トゥトベリーゼはジュニアカテゴリーからあらゆる大会で勝利を手に入れているコーチだ。

アリーナはAK-47で有名なイジェフスク出身で13歳の時にモスクワに移住してきた。
最初の年はクラブに馴染むことが出来ず、苦難の連続で、故郷に帰ることも考えた。
しかし翌年、彼女は開花し、ジュニアカテゴリーのあらゆるタイトルを総なめにした
昨年の秋にシニアデビューし、グランプリ大会は二大会連勝、ファイナルも優勝、欧州選手権ではメドヴェデワを破って優勝

だからシニアでは鮮烈なインパクトを与えた
だって新人としてデビューしてから全ての大会で連勝しているわけだから
でも史上最年少の金メダリストではない。
なぜならタラ・リピンスキーは彼女より26日早くオリンピックで金メダルを獲得しているからだ。

タラ・リピンスキーは1998年長野大会で優勝した。
あの時も今回と全く同じシナリオだった。
大本命は同じくアメリカのミシェル・クワンだった。既に世界選手権で何度も優勝したことのある成熟した選手。
でもサプライズでタラ・リピンスキーが金メダルだった

ここでも同じことが起こった。
メドヴェデワはより成熟した、より多くのタイトルを持つ選手だったが、ザギトワの方が高い得点を獲得した。

いずれにしても2018年韓国大会は1998年長野大会以来の同国選手によるワンツーフィニッシュで、女子シングルで同国選手による五輪ワンツーフィニッシュはフィギュアスケート史上、3度だけだ。2度がアメリカ、そして今回のロシア
ロシアは2014年まで女子では五輪タイトルを獲得したことがなかったけれど、今回で二大会連続金メダルになった。敬意を表したい。
それにザギトワが優勝に相応しかった。なぜならもっと点差が開いてもよかったからだ

彼女はメドヴェデワより技術がしっかりしている。
今回、メドヴェデワはエッジで有利な判定を受けた。
踏切がアウトではなく、明らかにインエッジの3ルッツだ。
本来ならコントロールパネルから基礎点を減点されるべきジャンプだったが、メドヴェデワは最終的にこのルッツで、完璧に実施されたコストナーの3ルッツより高い得点を得た。
これもゲームの一環だけれど、あえて強調しておきたい。

司会:それではザギトワの言葉を聞いてみよう

M:喜んで

司会:僕達のスタッフはこの素晴らしい、フィギュアスケート界でより優れた才能を持つ15歳に間近でインタビューすることが出来た

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☆アリーナのインタビュー部分だけ動画を切り取ってみました

 

インタビュアー:オリンピック金メダルは人生を変えると言いますが、あなたはまだたった15歳です

アリーナ:オリンピック後、私の人生が変わるとは思いません。
唯一変わったことと言えば、今では私の首にこのメダルが掛かっているということだけです。

インタビュアー:あなたにとって、間違いなくこの競技を変えたカトリーナ・コストナーのような選手はどんな意味を持ちますか?

アリーナ:彼女には豊かな経験があります。
全てを兼ね備えたスポーツ選手で、ずっと歴史に残ると思います。

通訳さんがアリーナのコメントを最後まで訳してくれていないような😟・・・

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司会:彼女の言葉を聞いたけれど、驚かされた。
まず、まだ15歳とは思えないし、それにキャリアに向き合う聡明な姿勢は驚異的だ。
今回の金メダルをまるで当然の、そして必須のステップの一つのように捉えている。
「変わったことと言えば金メダルが首に掛かっていることです」って

M:彼女にはスタート地点から重要なアドバンテージがある。
技術的に非常に強く、そしてより美しい

このことはフィギュアスケートでは大きな助けになる

司会:つまり実力があり、美しいことが求められるんだね。

M:年齢に関係なく、彼女より美しいと言える選手はそんなにいない。
それに彼女は試練を経験している。つまり既にどん底を味わったことがある。
僕達はさっき彼女がモスクワに来てすぐ困難な時期を過ごしたと言った。
彼女は祖母と一緒にモスクワにやってきた。両親は彼女の故郷であるイジェフスクに留まったからだ
彼女が故郷に戻ろうとしていた時に転機が訪れ、今僕達が見ている選手、つまり圧倒的に強い選手になった。
技術的にこんな選手を見たのは始めだ。彼女はフリープログラムで質の高いルッツ2本、フリップ2本を含む7つのジャンプ要素を全て後半に跳んでいる

史上、ジュニアとシニアの主要大会で全てのタイトルを獲得したキムヨナに次ぐ2人目の女子選手になるまで、残すタイトルは一つだけだ。

そしてこのタイトルを数週間後にミラノで開催される世界選手権で獲得出来るかもしれない

疑問は何か?
彼女は世界選手権に出場するのか?出場しないのか?
今のところ不明だ。

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司会:2位のメドヴェデワについても話そうか

彼女は非常にハイレベルなフリープログラムを滑った。
彼女は肝心な時に最大限の力を発揮出来る選手だ
しかし突如として現れたこの若いリンクメイトが彼女の祭りを台無しにしたと言えるね。
メドヴェデワは現世界女王で、残された最後のタイトルを手に入れようとしていた

M:実際にはメドヴェデワのこれまでの歴史がそうだった。
メドヴェデワはエテリ・トゥトベリーゼ率いる名門クラブ、サンボ70の生徒だ。
彼女はこのクラブで育った選手だが、外部からやってきた選手がナンバーワンとして脚光を浴び、彼女は二番手で甘んじるという経験をキャリアの中で何度も味わっている。

皆、ユリア・リプニツカヤを覚えているだろう。
2014年のオリンピックで主役の一人だったリプニツカヤはトゥトベリーゼの指導を受けるためにエカテリンブルクから移住してきて、エテリ門下を代表する国際レベルのトップ選手にのし上がった。
この時期、メドヴェデワはリプニツカヤの引き立て役と見なされていた。
そしてその後、セラフィマ・サハノヴィッチがサンクトペテルブルクからトゥトベリーゼ門下に入ってくると、今度は皆セラフィマが最強の選手だと言い始めた。
でもメドヴェデワは大変な努力家で、多大な努力によってヒエラルキーをひっくり返し、トゥトベリーゼ門下ナンバーワンの地位を手に入れた。

今回はザギトワに立ち向かわなければならなかったけれど、ザギトワは手ごわい相手だった。なぜなら技術的にこれまで見たことがないほど圧倒的に強く、滑りもいい。

彼女のスケーティングスキルはトップカテゴリーに入るクオリティだ。
イタリアでは彼女のスケーティングを批判するコメントを時々見かけるけれど、ザギトワの滑りを注意深く分析すれば、かなりハイレベルだと言うことが分かるはずだし、間違いなくメドヴェデワがシニアに上がった頃のスケーティングよりずっとレベルが高い。

彼女がメドヴェデワが獲得した歴代最高得点に近い得点に達したことは決して偶然ではない。

メドヴェデワは240点を超えたことのある唯一の選手だけれど、彼女がこの得点を出したのは半分ショーのような大会だった。
一方、ザギトワはオリンピックで240点近い得点を出した。

司会:でも「先輩」にとってはほとんど刑を宣告されたようなものだよね。
自分より3歳若い少女が現れて、もはやヒエラルキーは設定されてしまった。これからはずっと万年2位の座を競うの?

M:いや、そうとは限らない
さっき説明したように、メドヴェデワは身体の成長が終わっている。つまり今のメドヴェデワがこれからずっと僕達が見ていくメドヴェデワだ。

だから、これから4年間、犠牲を払って辛い練習を続けられるほど意志が固ければ、まだまだ幾つものタイトルを勝ち取れるし、もしかしたら4年後のオリンピックの優勝候補になれるかもしれない。

ただし、トゥトベリーゼ門下には恐るべき選手達が控えていることも忘れてはならない。
まだジュニアのアレクサンドラ・トゥルソワは数日前、フリープログラムでクワドを決めた。
女子で4サルコウだ。そして4トゥループにも挑戦した
オリンピックでクワドを成功させた女子選手は未だかつて存在しない。
前途有望な選手達だ。今後、この幼い選手達が何をするか注目しなければならない。

メドヴェデワは成人した大人の女性になりつつある。
芸術的にも成熟し、彼女次第で今後の4年間も競争力のある選手であり続けることが出来るかもしれない。

ザギトワはどうなるか見て行こう。

ソトニコワはソチオリンピックの後、現役続行を宣言し、試みたけれど怪我が多すぎて、行く手を阻まれた。

ザギトワに続けていくモチベーションがあるか見なければならない

問題は何か?
これらの少女達には過酷な練習が課せられているだけでなく、非常に若くして燃え尽きてしまう可能性があるということだ。

つまり、金メダリストになると言うことは、自動的に裕福になるということだ。
殺到するアイスショーやテレビへの出演依頼、スポンサー契約などなど。

だからそんな中でどのように、そしてどのぐらいの間、試合と練習に集中し続けることが出来るか?

もし、ザギトワが練習と試合にフォーカスし続けることが出来れば、まだ数年は続けられるし、もしかしたら次のオリンピックでも競技できるかもしれない

でも他のことに気を取られてしまうようなら、彼女にとって前途は困難になるし、メドヴェデワにとってはチャンスだ。ただし年若い下の世代が台頭する可能性もあるけれど。

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☆ロシアは国中から優れた才能をスカウトし、こうして選び抜かれた選手達を徹底したスパルタ教育で育成する国家レベルの体制が整っているから、アリーナやトゥルソワのようなモンスター選手が次々に出てくるんでしょうね。しかもみんな熾烈な内部競争を勝ち抜いてきているせいか、メンタルが異常に強い。
日本にも樋口新葉ちゃんとか紀平梨花ちゃんとか才能的には凄い選手がいるのに、練習環境に差があり過ぎて、ロシアに勝てる気がしない・・・

東京の新葉ちゃんは毎日、練習可能なリンクをキープするのも大変とか
日本スケ連の皆さん、日本のダイヤモンドの原石にもっと恵まれた練習環境を!

Published by Nymphea(ニンフェア)

管理人/翻訳者(イタリア在住)。2011年四大陸チゴイネ落ち @pianetahanyu