誤訳か?悪意のある脚色か?

こんな記事を見ました
THE DIGESTの記事です

「カギヤマに驚き、ハニュウは…」ミス連発で3位に終わった羽生結弦に伊メディアは辛口評価!【フィギュア世界選手権】

SPで2位という鮮烈なデビューを飾った鍵山優真にも及ばずに3位に終わった羽生。表彰台には入ったものの、明らかに普段とは異なる“絶対王者”のパフォーマンスは、海外メディアでも波紋を広げている。

 イタリア・メディア『OA Sport』は、速報内で「ネイサン・チェンが大勝利を飾った」と覇者を絶賛したうえで、こう綴った。

 「カギヤマの銀メダルは日本にとっても、世界にとっても驚きだ。ハニュウは負けに等しい銅メダルだろう。彼のあまりに多くのミスはチェンから遠のき、ほぼ手中にあった金メダルを落とすことを意味していた」

 17歳の“新生”鍵山の鮮烈デビューと、ミスを重ねた羽生の失墜は、世界でも小さくない衝撃を与えているようだ。

 

構成●THE DIGEST編集部

ソース

 

OA Sportが羽生君を辛口評価?

ちょっと信じられなかったので元記事を確認し、意訳はせず、原文に出来るだけ忠実に直訳しました(時系列で更新されていくテキスト速報ですので、この記事で訳されていた部分だけ抜粋しました)

原文>>

14.55: E’ IL TERZO ORO MONDIALE PER LO STATUNITENSE NATHAN CHEN!!! Grandissima vittoria per lo statunitense, argento per la sorpresa giapponese Kagiyama, bronzo per un deluso Hanyu e quarto posto anche per il Giappone con un altro deluso di oggi che è Shoma Uno

アメリカのネイサン・チェンが世界選手権三連覇!アメリカ人の大勝利。銀メダルはサプライズで日本の鍵山、銅メダルはがっかりした羽生、4位も日本人、同じく今日がっかりした宇野昌磨

14.52: Tanti errori e oro che sfuma per Hany.

多くのミスで羽生の金メダルは消えてしまった。

 

THE DIGESTの記事とは随分ニュアンスが異なります。

速報ですから結果的に大差で優勝したネイサンの大勝利だったという事実を伝えているだけで、特に絶賛はしていません。そしてUn deluso Hanyu(英語でa disappointed Hanyu)、つまり「羽生にとってはがっかりな結果だった」というニュアンスの表現を使っていますが、これがどうして「負けに等しい銅メダル」、「彼のあまりに多くのミスはチェンから遠のき、ほぼ手中にあった金メダルを落とすことを意味していた」と辛口評価されたことになってしまうのでしょうか?

「多くのミス」(tanti errori)が「あまりに多くのミス」に誇張されています。
そして「負けに等しい」「チェンから遠のき」「ほぼ手中にあった金メダル」などという言葉はどこにも出てきません。
これは意訳レベルではなく、明らかに訳者の創作です。

THE DIGESTはアンサーと共にマッシミリアーノさんやジャッキーさんなど海外識者の発言や海外メディアの記事をよく取り上げていますが、なぜか採点やジャッジを批判する記事はほとんど取り上げません。

全日本のスピン判定に関する記事もオータムクラシックの疑惑の回転不足判定を批判する記事も埼玉世界選手権のPCSに疑問を呈する記事もスルーでした。

他のどーでもいい記事は取り上げるのに。

編集部の方はあらゆる記事を逐一チェックしているようですから知らないはずはなく、おそらく意図的にスルーしているのでしょう。

触れたくない記事を取り上げないのは勝手ですが、原文とは明らかに異なるニュアンスに脚色・創作した内容を「海外メディアの意見」として発信するのは捏造です。

ましてや自国選手を下げる内容に脚色するなど言語道断です。

直訳すると不自然な日本語になりますので、私も意訳することはありますが、原文のニュアンスが損なわれないようかなり気を付けています。

そしてこの記事の筆者は趣味で書いている個人ブログの素人ライターではなく、お仕事で書いているスポーツメディアのプロのライターのはずです。

翻訳記事を上げるならプロ意識を持って正確に訳すべきではないですか?

Published by Nymphea(ニンフェア)

管理人/翻訳者(イタリア在住)。2011年四大陸チゴイネ落ち @pianetahanyu