Neveitaliaポッドキャスト「ジン・ボーヤン革命が始まる」

イタリア・ユーロスポーツ実況のマッシミリアーノ・アンベージさんが今シーズンからNeveitaliaでポッドキャストを始めました(毎週月曜日21時15分放送)。

フィギュアスケートだけでなく、スキー、ボブスレー、バイアスロンなど全てのウィンタースポーツについて解説するという内容で、タイトルは「Tutti contro Ambesi」

日本語に訳すと「アンベージに全員反論」という感じでしょうか。

マッシミリアーノさんは辛口で容赦なくズバズバ切り込む解説で有名で、ファンもいますがアンチも結構いるようです。それでこういうタイトルなのかなと・・・

でも実際に聴いてみると、マッシミリアーノさんは、ユロスポ実況以上に言いたい放題ですが、聞き役の男性は至って大人しく、というか圧倒されて口を挟めない状態?

ほとんどマッシミリアーノさんのモノローグのような番組でした。

しかし長さが 159分・・・羽生君のことを話すなら聴くけど、どの辺りで話すか分からないし、全部聴く時間と忍耐はないし・・・と思っていたらイタリアフォーラムのスピッチーネさんが犠牲的精神で視聴してくれて、羽生君の話題が出たところを教えてくれました!

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ポッドキャスト「Tutti contro Ambesi」より
第10回『ボーヤン・ジン革命が始まる』

こちらから視聴出来ます>>

前半はスキーのクロスカントリー、ボーヤン選手の話題は89.35からです。

(抜粋・要約)

今シーズン、男子シニアにデビューする天才的な選手の話をしよう。

その名はジン・ボーヤン
中国の選手でまだ17歳、10月に18歳になる。

彼はこれまで前例がないほど4回転ジャンプを自由自在に跳ぶことが出来る。

これから本格的にシニアデビューをするわけだが、彼の登場でここ数年のフィギュアスケート、特に男子シングル(女子は少し遅れをとっているが、いずれ女子も同じ傾向になっていくだろう)の傾向は決定的になるだろう。

彼は今シーズンのフリーで4回転ジャンプを4本跳ぶ。考えられないような構成だ。

先日の国内大会では4本共とりあえず着氷した。4Lzはステップアウトでお手付きだったが転倒せず着氷、4Sは前のめりで着氷、ボーナス点が付く後半に4T2本。

何故、ここでジン・ボーヤンを取り上げるかというと、まさに男子シングルの方向性を象徴する選手だからだ。

新しい採点システムが採用された当初、技術点と演技構成点の割合はほぼ同じ(50%対50%)と考えられていた。

しかしながら、今後ルールが改正されない限り、このバランスは変わっていくだろう。

例えばジン・ボーヤンは技術点では人類が到達可能な限界に近い得点を獲得出来るかもしれないが、表現力が乏しいから演技構成点は低い。

勿論、現在の演技構成点は単純に芸術性、表現力の評価ではなく、フィギュアスケートの技術的部分も含まれているから、旧採点システムの芸術点とは違うし、昨シーズンに比べれば少し改善されたけれど、この面においてこの選手にはやはり限界がある。

無論、振付けで表現力の乏しさをある程度カムフラージュすることは出来る。だからこそ、現在、スケーター達は自分の欠点を隠してジャッジに上手くアピールできるプログラムを作ってもらうために振付師に大金を払うのだ。

ジン・ボーヤンは技術的レベルを大幅に上げれば勝てる選手になれることを証明出来るかもしれない。

昨シーズン、僕は冗談ではなく、ボーヤンはある意味『アンテ・ハニュウ』(この場合、羽生選手の前身と言う意味)だと発言した。

結果、「ボーヤンはいつも下を向いて滑っているのが見えないのか」「彼はただ氷を削っているだろう」「比べものにならないほど酷いスケーティングが見えないのか」とまあ、抗議と非難が殺到したわけだけれど・・・彼らの言うことは、一部については確かに一理ある。

実際、先シーズンのジン・ボーヤンはずっと下を向いたまま滑っていた。でも今シーズンは少しマシになったから少しずつ成長はしている。

でも中国スケート連盟はこのように考えた。
技術点を極めれば表彰台に乗ることが出来ると
だからジン・ボーヤンはこの戦略を実践しているわけだ。

最近の男子シングルを分析してみよう。

演技構成点を例に挙げると、90点を獲得した選手はこれまでに僅か6人だけ。到達可能な演技構成点の上限は100点で、PCS最高記録はパトリック・チャンが獲得した96.50。

一方、技術点で90点越えを果たした選手は13人いる。
そうなると、技術点に力を入れた方が有利という結論に達する。
しかも技術点の上限は100点ではないのだ。

先週の日曜日、ボーヤンが披露したかったフリープログラムの基礎点(ジャンプ要素、レベル4と仮定したスピン、ステップのGOEを含まない合計点)は100.45。

つまり、彼がプログラムに組み込まれた要素を全て完璧にこなした場合、技術点は110点に達する計算になる。

つまり、中国の考えはこうだ。
とりあえず技術点110点を持ち帰る。

勿論、今日明日には無理だろう。でも2018年には更に高い技術点を獲得出来るようになっているかもしれない。

技術点で110点を稼ぐ選手は、演技構成点でも少なくとも70~75点ぐらいは獲得出来るだろう。
そうすると合計は180~185点になる。

これまでにフリーで180点以上を出した選手はほんの僅かだ。
歴代最高点(196.75点)を出したパトリック・チャン、羽生、190点を超えた3人目の選手になったテン、180点を超えたことがあるのはハビエル・フェルナンデス、引退した町田、同じく引退した高橋、そして一時代前の2011年に180点越えを果たした小塚。

ジン・ボーヤンはいよいよグランプリシリーズでシニアデビューするが、彼が何を見せてくれるか楽しみだ。

彼のショートプログラムの構成は4Lz-3Tという尋常でないコンビネーション、後半に3アクセルと4トゥループ。

つまりショートの技術点で彼に近づける選手は存在しない。
彼が転倒せずにショートプログラムを滑り切ったら90点は獲得出来る。

そう考えると、羽生結弦と言う名の選手以外はいずれジン・ボーヤンにかなわなくなる可能性がある。あるいは四天王と言える選手(四天王とは羽生結弦、パトリック・チャン、デニス・テン、ハビエル・フェルナンデス、すなわち傑出した技術と優れた芸術性を兼ね備えた選手達のことだけれど)の誰か以外は。

当然、羽生は(四天王の)他の3人に比べると頭一つ抜けている。

羽生結弦が今シーズンから3本の4回転ジャンプと2本の3回転アクセルを入れたプログラムに挑むことを忘れてはならない。

彼が跳ぶ3アクセルは4回転ジャンプ同様の得点を余裕で稼ぐことが出来るから、結果的に4回転ジャンプを5本跳ぶのと同じことになる。
だから4回転ジャンプ4本、3アクセル1本のボーヤンと技術的に同じ内容になる。

プログラムの難度を上げた時、実際に全ての要素をこなして滑り切れる選手は限られてくる。だからこそ今後、技術面の重要性はますます高くなっていくだろう。

おそらく、羽生は男子シングルの方向性がこうなることをいち早く予見していたのだろう。

中国は技術で攻める戦略を取るしかないようだから、その他の選手達がどう対抗していくか見物だ。

例えば、ハビエル・フェルナンデスは3アクセルを2本にしてフリーを4回転ジャンプ3本、3アクセル2本の構成にすることが出来るが、現時点では4回転ジャンプ3本+3アクセル1本で止まっている。

デニス・テンは4回転ジャンプ2本、3アクセル2本の選手。

パトリック・チャンがどうするかも興味深い。
彼はキャリアの中で何度も優勝してきたけれど、4トゥループ2本、3アクセル1本の構成だ。
おそらく、今の男子シングルの状況を見ると難度を上げる必要があるだろう。

フィギュアスケート史上稀に見るスケーティングスキルを持つパトリック・チャンは演技構成点で途方もない高得点を稼ぐことが出来るけれど、今後、それだけでは不十分になる可能性がある。

勿論、ジン・ボーヤンも、他の選手も高難度プログラムを実際に滑りこなせるか見てみないといけない。

実際、先日の中国国内大会では、ノーミスの演技をしたハンヤンがボーヤンを破って優勝した。基礎点ではボーヤンより20点近く低いハンヤンだがGOEを稼ぎ、最終的に技術点95点を獲得した。

各要素の質を評価するGOEも勝敗を左右する重要な要因だ。

USクラシックでフリーで4回転ジャンプを3本決めて優勝したサモーヒン選手の話題は省略

つまり今日のフィギュアスケート男子シングルは新次元に入った。勝負の土俵に上がりたければ4回転ジャンプを跳べなければならない。

4回転ジャンプがなければ主要大会で表彰台に上ることは出来ない。

例えばジェーソン・ブラウンは強力な選手があまりいない大会、あるいはクワド持ちの選手がミスを連発すれば勝てるかもしれないが、優勝するには他の選手のミスが前提になる。

実際に、4回転ジャンプを安定して跳べる選手がいなかったアメリカはバンクーバー五輪のイヴァン・ライサチェク以来、おこぼれで満足するしかなかった。
他の国が高難度化していったのに対して、アメリカはこの進化に乗り遅れていた。
この意味で、ジュニアグランプリ大会のフリーで4回転ジャンプを2本決めたネイサン・チェンは注目すべき存在になる。

結論として今日、技術点の占めるウエートは演技構成点に比べて大きくなった。

羽生結弦、パトリック・チャン、テン、フェルナンデス、高橋、町田、少しランクが下がるがジェレミー・アボットはジャンプでミスを連発しても、議論の余地のない傑出したスケーティングスキル、細部まで洗練された振付け、繋ぎの濃さによって80点以上の演技構成点を獲得することが出来るが、技術点頼みの選手はジャンプでミスをすると演技構成点も大幅に下がり、下位に沈む可能性がある。

だから彼らにとって演技構成点を当てにせず、80点、90点、100点と技術点で稼ぐ方がより簡単という結論に至るのだろう。

 

 これまでのポッドキャスト(第1回から第9回)はこちら>>

第1回(こちら>>)では前半が元婚約者のドーピング問題を巡るカロリーナ・コストナー選手の出場停止処分についての考察、後半でソチ女子シングルのアデリーナ・ソトニコワ選手の正当性について議論していました。

マッシミリアーノさんは、ソチ女子メダリスト、アデリーナ、ヨナ、カロリーナのプログラム難度、基礎点、ジャンプに入る前の工夫やステップ、トランジションを細かく、具体的に考察し、アデリーナが一番金メダルに相応しく、文句のつけようのない結果だった力説しています。

ちなみに、女子フリーで2位に相応しかったのは、本当は真央ちゃんだったと言っていました!

第2回は・・・途中で挫折(こめんなさい、マッシミリアーノさん!!)

第3回から第9回は未聴

第11回
こちら>>

ジュニアGPポーランド大会、ネーベルホルン杯、ロシアカップの感想でした。
印象に残ったところをご紹介すると

山本草太君
とにかく絶賛。4トゥループのクオリティは羽生を彷彿させる。
これまで苦戦していた3アクセルもマスターしたようだ。
ショートは繋ぎがまだ薄いのでファイナルに向けてまだ進化出来るし、フリーは2本目の3アクセルを入れることが出来る。つまりまだまだ伸びしろがある。
ファイナルは彼のネイサン・チェンの一騎打ちになるだろうが、マッシミリアーノさん的にはポテンシャルは草太君のほうが上

ポリーナ・ツルスカヤ選手
特殊なメンタルを持つ選手
ショートのフリップで転倒した時、まさに転倒中の彼女の瞳に炎が閃くのを見た。
この瞬間、フリーは完璧以上の神演技をするだろうと確信したら、まさにその通りになり、驚異的な演技で自己ベストを更新した。
彼女は例えば練習でルッツを80本跳んだら、全部成功させないと気が済まないタイプ。
高さと幅のあるジャンプは衝撃的。
彼女ならいずれ4回転ジャンプを跳べるかもしれない。それぐらい3回転ジャンプは全て完璧。

ネーベルホルン杯
マックス・アーロン選手の表現力を酷評。
ブライアン・ジュベールと同じように、演技力・表現力の乏しさをカムフラージュしやすいテクノやラップなどの音楽を使うべきとか、上半身の使い方が変とか、少なくともラフマニノフのようなドラマチックで抒情的な音楽で滑るべきではないとか、とりあえず言いたい放題

ロシアカップ
シニアはエリザヴェータ・トゥクタミシェワがインフルエンザで体調不良にもかかわらず優勝。
質の高いトリプルアクセルとルッツを跳ぶエリヴェベータが今シーズンも最強の存在になるだろう。
アデリーナ・ソトニコワ(ロシアカップではフリーだけ)は背中の怪我のため、レイバックスピンとトランジションの一部省略した演技だったが、ジャンプの調子は戻してきている。
ただあと数キロ痩せるべき。
スケーティングスキルと表現についてはカロリーナがいない今の女子シニアではソトニコワがナンバーワンだろう。
宮原知子のように2A-3Tを後半に2本入れる戦略で行けば最強になるはず。
(この構成は)実に賢明で効率的だということに、ロシアの選手はなぜ気が付かないのだろう。
ジャパンオープンで宮原の演技を間近で見れば目から鱗で分かるかもしれない。

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☆ 長いし、技術的な話ばかりで需要ないよなあ~これ・・・と思いながら最終的にこんなに(全部ではなく、羽生君に関係ある部分の抜粋ですが)訳してしまった・・・

でも高難度過ぎて転倒だらけの演技は見ていて辛いし・・・(ミハエル・ブレジナ選手とか・・・)
やはりバランスが大事だなあと思います。
ちなみにイタリアフォーラムの人(ゆづフォーラムだけでなく、その他のフィギュアスケートフォーラムの人も)はジャンプを跳ぶだけのミニロボットのようなボーヤンが勝ちまくる時代になったらフィギュアスケートは終わりだと言っています。

いずれにしても、ISUは4回転ジャンプ転倒のGOEマイナスを-3から-4に増やし、更に高難度な4回転ジャンプに挑戦する選手にとっては逆風のルールになりましたが、選手達の進化に対する意欲と技術の高難度化は止められなかったようですね。

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