NEVEITALIAに掲載されたUSクラシック男子フリーの記事です。
羽生結弦選手の名前も出てきます。
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(2015年9月19日)
チャレンジャーシリーズの開幕戦となったUS国際フィギュアスケーティングクラシック(開催地:ソルトレイクシティ)の男子シングルは予想外の表彰台と技術面における興味深い傾向が見られた大会となった。
オフシーズン開けの試合だったこともあり、ショートプログラムは正直期待外れだったが、フリーでは風向きが変わった。合計7本の4回転ジャンプが決まったことが証明しているように、多くの選手がレベルのハードルを上げることに成功した。
しかしながら、多くの選手が3回転アクセルで失敗し、プログラム後半で失速したことも特筆しなければならない。
いずれにしても、シニアの今季最初のこの大会は、ここ数年の傾向を改めて証明するものだった。
すなわち、全体的にプログラムの高難度化が進んでいることを考慮すると、表彰台を目指すには、フリーで4回転ジャンプと3回転アクセルを合わせて3本入れることが必要最低条件になった。勿論、この進化に肉体的限界がどこまでついて行けるかが興味深いところだが、開幕したばかりの今シーズンを通して、間もなく正確な答えを知ることが出来るだろう。
この意味において最も注目されているのは、フリーで2本の3回転アクセルと3本の4回転ジャンプを跳ぶことを表明している日本の羽生結弦と、4本の4回転ジャンプに挑戦する可能性のある中国のボーヤン・ジンである。
こうなると自動的に秤の針はますます技術志向に傾き、技術点の占めるウエートが演技構成点に対してより多くなる。TES(total elements score)100点は多くの選手が目指す大台となった。獲得可能なPCS (program components score) の上限も同じ(100点)だが、PCS90点は選ばれた僅かな選手にのみ到達可能な快挙であることも忘れてはならない。
ソルトレイクシティの大会は、7位に終わったアレクセイ・ビチェンコが持つ国内歴代最高得点を塗り替えたイスラエルのダニエル・サモーヒンが制した。
カリフォルニアに拠点を置く17歳はフリーで4回転ジャンプを3本跳び、数週間前にコロラドスプリングスで開催されたジュニアグランプリシリーズに引き続き、4トゥループの絶対的安定感を見せつけた。
プログラム後半にも4本の3回転ジャンプを決め、ステップシークエンスでも最高レベルを獲得し、もはや習慣になってしまっている3回転アクセルの転倒と、途中で止めてしまったスピンが1本あったにも関わらず、この試合の最高技術点を獲得した。
すなわち、技術的にも芸術的にもまだまだ伸びしろがあり、次の目標は3本の4回転ジャンプと6本の3回転ジャンプを完璧に決めることである。
サモーヒンに次いで2位に入ったのは、順調だったジュニアシーズンの後で、ようやくシニアの大会でも戦えるようになった日本の田中刑事だ。
もうすく21歳になう岡山県出身の選手は、ここ数年欠けていたスタミナを見せ、4サルコウ1本のフリープログラムを滑り切ることが出来た。僅かにステップアウトしたものの、4サルコウを着氷し、2本のフリップと2本のアクセルを含む8本の3回転ジャンプ(ただし2本目のアクセルはコンビネーションにならなかった)を降りた。
無論、国内のより有力な選手に対抗するには、田中は4サルコウの確率を上げ、ジュニアでは何度も決めていた4トゥループの問題を解決しなければならない。
僅差の戦いとなった3位争いは、新鋭ティモシー・ドレンスキーの攻撃をかわしたロス・マイナーに軍配が上がった。
今回、ショートプログラムの勝者は演技構成点のおかげで、1本のダブルアクセルと7本の3回転ジャンプ(その内の6本は見事な出来だった)を決めた年下の同国選手との技術点の差を埋めことが出来た。
だが、マイナーにとっては昨シーズンの課題がそのまま残されており、4サルコウ(今日もプログラムに組み込まれていながらダブルアクセルに変更した)無しでは、アメリカ国内のランキングで下位に沈むのは必須という予感がする。
優勝候補だった日本の宇野昌磨は、不本意なショートプログラムの雪辱を果たし、フリーではこの試合の最高得点を獲得して9位から5位まで一気に浮上した。
プッチーニのトゥーランドットの音楽に乗せてリンクに登場したジュニア世界王者は、24時間前に比べると見違えるほど活力に漲り、完璧に決まった2本の4トゥループ、イーグルからの3アクセル、後半に入れた3ループと3サルコウで彩られたフリープログラムの最初の3分間はスタンディングオーベーションの出来だった。
終盤、体力的にバテてしまい、以前から天敵となっている慣例のミスを幾つか犯した。宇野は2本目の3アクセルで転倒し、3ルッツがダブルになったが、これらのミスの後で最後のコンビネーション、2アクセル-1ループ-3フリップを決める根性を見せた。
全体的に新しいフリープログラムのポテンシャルは疑う余地がないが、パバロッティの声が際立つ音楽の盛り上がりがプログラム終盤で最高潮に達することを考えると、このプログラムを最大のポテンシャルで滑り切るには、完璧なフィジカルコンディションが必要になるだろう。
昨日と違って、山田真知子の教え子はプログラム構成点でも全選手中、最高の評価を得たが、こちらについても、予定されている本来のトランジション(繋ぎ)が全て入れば得点は更に上がっていくだろう。
大会唯一のイタリア人選手、カルロ・ヴィットリオ・パレルモは、ジャンプの失敗(特にループ)が響き13位に終わった。
最終結果
1) ISR – Daniel SAMOHIN
223.67 (3|2)
2) JPN – Keiji TANAKA
212.34 (5|3)
3) USA – Ross MINER
209.93 (1|5)
4) USA – Timothy DOLENSKY
209.04 (4|4)
5) JPN – Shoma UNO
207.41 (9|1)
6) USA -Richard DORNBUSH
191.02 (6|6)
7) ISR – Alexei BYCHENKO
183.09 (2|7)
8) CAN- Christophe BELLEY-LEMELIN
164.21 (8|8)
9) AUT – Andrew DODDS
159.77 (7|9)
10) FIN – Bela PAPP
147.60 (10|10)
11) LAT – Lukas KAUGARS
135.61 (11|12)
12) HKG – Leslie IP
135.34 (13|11)
13) ITA – Carlo Vittorio PALERMO
125.42 (12|13)
14) ESP – Javier RAYA
116.11 (14|14)
15) AUS – Jordan DODDS
113.79 (15|15)
WD – UKR – Yaroslav PANIOT
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