Neveitaliaより「羽生結弦の歴代最高得点の解説と今後の展望」

グランプリファイナル直後のマッシミリアーノさんの『羽生結弦』分析・考察記事です。
数字に強いマッシミリアーノさんらしく、これでもかというくらい、ひたすら数字の羅列
(果たして需要があるのかすごく疑問)
数字はお腹一杯!という人はパスして下さいね

 

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Analyse2015Dic16

原文>>

(2015年12月16日)

 

グランプリファイナル・バルセロナ大会中、羽生結弦は2週間前のNHK杯長野大会で出した歴代最高得点を粉々に粉砕した。

規格外の日本人選手は330点の壁を超えた。史上誰も300点越えを果たしていないことを考えると、これは唖然とするほどの快挙である。
何よりもオリンピックチャンピョンは分析専門研究家達をも極限へといざない、彼らは見解を広げざるを得なくなった。
というのも先週末からGOE満点で到達可能な最高得点について、ひらすら議論されているのだ。

勿論、カタローニャで起こったことを分析すると、冷たい数字だけを考慮しても、オリンピックチャンピョンが絶対的完璧にほぼ達していたことは明白である。

現在の状況と多くの選手達の爆発的な進化によって、男子シングルの現在の採点システムを再構築しなければならなくなる可能性がある。

現在、他のカテゴリーでは問題がないことを考えると、演技構成点の各項目の係数を変更し、満点を100点から120点に設定する案が最も妥当だと思われる(すなわちショートプログラムは各項目×1.0から×1.2に、フリープログラムは×2.0から×2.4になる)。

このことを念頭において、ブライアン・オーサーの教え子がバルセロナのショートとフリーで実現したことを詳しく分析して行こう。

 

ショートプログラム

(括弧内の数字は獲得可能な最高点)

試合後、具体的に指摘しているように、羽生の主な悲憤は、テクニカルコントローラーによってレベル3と評価されたステップシークエンスだ。しかもステップはGOEがレベル3(3.3+1.5点)よりレベル4(3.9+2.1 点)の方が高くなる唯一のエレメントである。従って、羽生はこれで1.2点を取りこぼしたことになる。全体を見ると現在の構成での絶対的完璧に対して2.70点足りなかった。つまり、現時点で羽生が到達可能な得点は113.65である。仮説上、この得点を上回れる可能性があるのはジン・ボーヤンだけである(116.93)。

ジャンプ要素(4S, 4T/3T, 3A*)
基礎点 – 34,45 / GOE – 8,71 / 合計 43,16 (43,45)

スピン要素 (FCSp, CSSp, CCoSp)
基礎点 – 9,70 / GOE – 4,15 / 合計 13,85 (14,20)

ステップ(StSq)
基礎点 – 3,30 / GOE – 1,50 / 合計 4,80 (6,00)

ショートプログラム基礎点 (BV) – 47,45 (48,05)
出来栄え点(GOE) – 14,36 (15,60)
技術点 (TES) – 61,81 (63,65)
演技構成点 – (PCS) 49,14 (50,00)

ショートプログラム得点 – 110,95 (113,65)

 

フリープログラム

(括弧内の数字は獲得可能な最高点)

フリーでも羽生はステップシークエンスのレベルと出来栄え点で『大量の点』を取りこぼした。ステップの満点から1.34点も足りなかった。

現在の構成で獲得可能な最高得点は225.79なので、バルセロナで獲得した点は 6.31点及ばなかったことになる。仮説上、この得点を上回れる可能性があるのは中国のジン・ボーヤンだけである(234.60)。

ジャンプ要素 (4S, 4T, 3F, 4T/3T*, 3A/2T*, 3A/Lo/3S*, 3Lo*, 3Lz*)
基礎点 – 79,89 / GOE – 18,63 / 合計 98,52 (101,19)

スピン要素 (FCCOSp, FCSSp, CCoSp)
基礎点– 10,00 / GOE – 3,64 / 合計 13,64 (14,50)

ステップ(StSq, ChSq)
基礎点 – 5,30 / GOE – 3,46 / 合計 8,76 (10,10)

フリースケーティング基礎点 (BV) – 95,19 (95,79)
出来栄え点 (GOE) – 25,73 (30,00)
技術点 (TES) – 120,92 (125,79)
演技構成点 (PCS) – 98,56 (100,00)

フリープログラム得点 219,48 (225,79)

トータルスコア – 330,43 (339,44)

 

今後の展望

この選手が何度も見せてくれた挑戦への意欲と才能を考慮すると、今後の幾つかの可能性について推測することが出来る。

羽生の構成難度を大幅に引き上げることが出来るジャンプ要素は4ループだ。
彼は公式大会で成功した選手がまだいないこのジャンプを試合以外で何度も決めている。

フリープログラムでは、3フリップ(基礎点5.3)の場所に4ループ(基礎点12.00)を入れるというのが現実的な仮説だ。3フリップは3サルコウ(基礎点4.4x1.1)または3ループ(基礎点5.1×1.1)の代わりにプログラム後半に入れることが出来る。

最初のケースでは、羽生は3アクセル/ループ/3フリップという平凡ではないコンビネーションジャンプを跳ばなければならなくなるが、8.59点 (基礎点 7.69 + GOE 0.9)上乗せすることが出来る。一方、3ループを3フリップに置き換えた場合、得点は最大7.82点(基礎点6.92 + GOE 0.9)上がる計算になる。3フリップをプログラムから排除した場合、メリットは7.6点(基礎点 6.7 + GOE 0.9)に『下がる』。

ショートプログラムでは4トゥループ/3トゥループのコンビネーションジャンプを後半に移動する可能性も除外出来ない。この場合、得点的には1.46点上乗せすることが出来る。

スピンで改善の余地があるとすれば、フライング足換えシットスピン(FCSSp)を足換えキャメルスピン(CCSp)に変更することだ。これで0.2点のメリットがある。

 

2015年末の時点での歴代得点ランキング
(トータルスコアで250点を超えた選手)

歴代最高得点は300点を超えた史上初の男子、羽生結弦が保持している。今シーズン中、マックス・アーロン、宇野昌磨(日本)、ボーヤン・ジン(中国)、アディアン・ピトキーエフ(ロシア)が試合で250点越えを果たした。歴代高得点上位18得点中、8得点が日本選手の得点であることが目を引く。

1) HANYU Yuzuru (JPN)
330,43 (G.P.Final 2015, Barcelona)

2) CHAN Patrick (CAN)
295,27 (Trophèe Eric Bompard 2013, Parigi)

3) FERNANDEZ Javier (ESP)
292,95 (G.P.Final 2015, Barcelona)

4) TEN Denis (KAZ)
289,46 (F.C.Ch.2015, Seoul)

5) MACHIDA Tatsuki (JPN)
282,26 (W.Ch.2014, Saitama)

6) UNO Shoma (JPN)
276.79 (G.P.Final 2015, Barcelona)

7) TAKAHASHI Daisuke (JPN)
276,72 (W.T.T.2012, Tokyo)

8) JIN Boyang (CHN)
266,43 (NHK Trophy 2015, Nagano)

9) BROWN Jason (USA)
263,17 (W.T.T.2015, Tokyo)

10) ODA Nobunari (JPN)
262,98 (Q.O.W.G.2013, Oberstdorf)

11) PLUSHENKO Evgeni (RUS)
261,23 (E.Ch.2012, Sheffield)

12) FARRIS Joshua (USA)
260,01 (F.C.Ch.2015, Seoul)

13) YAN Han (CHN)
259,47 (F.C.Ch.2015, Seoul)

14) AARON Max (USA)
258,95 (Skate America 2015, Milwaukee)

15) KOZUKA Takahiko (JPN)
258,41 (W.Ch.2011, Mosca)

16) LYSACEK Evan (USA)
257,67 (O.W.G.2010, Vancouver)

17) MURAKAMI Daisuke (JPN)
256,47 (F.C.Ch.2015, Seoul)

18) MURA Takahito (JPN)
255,81 (Skate Canada 2014, Kelowna)

19) VORONOV Sergei (RUS)
252,55 (E.Ch.2014, Budapest)

20) REYNDOLS Kevin (CAN)
250,55 (F.C.Ch.2013, Osaka)

21) AMODIO Florent (FRA)
250,53 (E.Ch.2013, Zagabria)

22) PITKEEV Adian (RUS)
250,47 (Rostelecom Cup 2015, Mosca)

 

250点以上

これまでに250点を超えた得点が記録されたのは94回である。最も多いのがパトリック・チャンで22人の選手が250点越えを果たしている。

16 (36 試合中) – CHAN Patrick (CAN)

14 (37試合中) – FERNANDEZ Javier (SPA)

13 (25試合中) – HANYU Yuzuru (JPN)

9 (43試合中) – TAKAHASHI Daisuke (JPN)

5 (16試合中) – PLUSHENKO Evgeni (RUS)

5 (16試合中) – MACHIDA Tatsuki (JPN)

5 (28試合中) – TEN Denis (KAZ)

3 (30試合中) – ODA Nobunari (JPN)

3 (36試合中) – KOZUKA Takahiko (JPN)

3 (3試合中) – JIN Boyang (CHN)

3 (4試合中) – UNO Shoma (JPN)

2 (8試合中) – MURAKAMI Daisuke (JPN)

2 (13試合中) – AARON Max (USA)

2 (14試合中) – YAN Han (CHN)

2 (34試合中) VORONOV Sergei (RUS)

1 (30試合中) – AMODIO Florent (FRA)

1 (5試合中) – FARRIS Joshua (USA)

1 (8試合中) – PITKEEV Adian (RUS)

1 (試合中12試合中) – BROWN Jason (USA)

1 (19試合中) – MURA Takahito (JPN)

1 (23試合中) – REYNOLDS Kevin (CAN)

1 (25試合中) – LYSACEK Evan (USA)

260点以上

260点以上の得点が記録されたのは52回で、この大台を超えたのはたった12人の選手である。最も多いのはパトリック・チャンである。

13 – CHAN Patrick (CAN)

11 – HANYU Yuzuru (JPN)

9 – FERNANDEZ Javier (SPA)

4 – TAKAHASHI Daisuke (JPN)

4 – TEN Denis (KAZ)

3 – MACHIDA Tatsuki (JPN)

3 – JIN Boyang (CHN)

1 – ODA Nobunari (JPN)

1 – PLUSHENKO Evgeni (RUS)

1 – FARRIS Johsua (USA)

1 – BROWN Jason (USA)

1 – UNO Shoma (JPN)

270点以上

現在までに25回、7人のスケーター(その内4人が日本人)が270点を超える得点を出している。

8 – HANYU Yuzuru (JPN)

6 – CHAN Patrick (CAN)

6 – FERNANDEZ Javier (SPA)

2 – TEN Denis (KAZ)

1 – MACHIDA Tatuski (JPN)

1 – TAKAHASHI Daisuke (JPN)

1 – UNO Shoama (JPN)

 

280点以上

280点を超えたのは13回だけである。僅か5人の選手がこの快挙を達成している。

7 – HANYU Yuzuru (JPN)

3 – CHAN Patrick (CAN)

1 – FERNANDEZ Javier (SPA)

1 – TEN Denis (KAZ)

1 – MACHIDA (JPN)

こちらの記事は羽生結弦選手 応援ブログにも掲載して頂いていますので、こちらでもお読み頂けます!

 

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マッシミリアーノさん・・・何気に鬼・・・(愛の鞭?)
羽生君がすご~く気にしているステップシークエンスのレベル3をチクチクと・・・
それに 4S, 4T, 4Lo / 4T-3T*, 3A-2T*, 3A-1Lo-3F*, 3Lo*, 3Lz*って・・・何ですか~そのジャンプ構成は???
(その内、3A-2Tを3A-3Loにすれば何点、3Lzを4Lzにすれば何点更に上乗せ出来るとか言い出しそう・・・)

しかも、これまでの分析記事では羽生君を『世界のその他』(rest of the world)で一括りにされてしまっている現世界王者のハビ君や3度世界王者のパトリックを含む他の選手達と比較していましたが、今回の記事では羽生君のプログラム構成で獲得可能ないわゆる『満点』と比較してここが何点足りなかった、ここで何点取りこぼしたとダメ出しているし・・・(そしてボーヤン選手以外のその他の選手は全く登場しなくなってしまった)
そもそも現在の採点システムに満点の概念があるなんて今まで思いつきもしませんでした。

ちなみに全日本直後の昨年1230日に放送された前回のポッドキャストで、マッシリアーノさんは「全日本の羽生の得点は極めて妥当かつ公正で国内大会の恩恵は何一つ受けていなかった。今の羽生なら世界中、何処のどの大会でも同じ得点が出るはずだ」と熱く力説し(マッシミリアーノさん、落ち着いて~!誰も全日本の羽生君の得点に文句つけてないし・・・)、「今回、僕らは人間バージョンを見たけれど、いずれにしても彼は地球人ではない!」と断言していました・・・(もはや2~3つミスしたぐらいでは人間と認めてもらえない羽生君・・・)

そう言えばそれ以降、ポッドキャストは放送されていません・・・
1回放送のはずなのに。
全米選手権とかカナダ選手権とか欧州選手権ハビ君300点越えとか、話題は山ほどあると思うのですが・・・
やはり羽生君の試合がないとやる気が出ないとか。
確かに120150分ひたすらしゃべり続けるって大変ですよね・・・
よほどの情熱がないと出来ない。

 

Published by Nymphea(ニンフェア)

管理人/翻訳者(イタリア在住)。2011年四大陸チゴイネ落ち @pianetahanyu