アレッサンドラさんの現地レポ「RE_PRAY横浜公演楽日」

作家でバレリーナのアレッサンドラ・モントゥルッキオさんによる横浜公演楽日の感想です。

今日は何を話せばいいのでしょうか?
皆さんがまだ知らないことは何でしょうか?

朝からぴあアリーナ周辺がお祭り騒ぎだったことはもう話しました。プレゼントの交換、プーの雨、8000人もの観客が驚くほど整然と素早く入場する様子について。
そして公演はもう見ましたね?
だから?
だから私は、今日のRE_PRAYが、土曜日のようなレベルで、ユヅが満足してツアーを終えられることを祈っていました。しかし、彼は土曜日以上でした。一緒に振り返っていきましょう。

いつか終わる夢
プロジェクションマッピングを生で、しかもショーのオープニングで見るのは常に衝撃的です
。すぐにブラックホールに飲み込まれるよう感覚を覚えます。ただそれはブラックホールではなく、ユヅの芸術であり、彼の魂であり、私達は井戸に落ちて、次の瞬間、不思議の国にいるアリスのようです。

氷上の模様はユヅのエッジから生み出されているように見え、音楽は彼の身体から発せられているようです。今日、ユヅの滑りは土曜日より更に強烈でした。これは簡単なプログラムではありません。確かにジャンプやスピンはありませんが、特定のポジションを長くキープするのは、筋力的に非常にハードです。
例えば?
終盤近く、2つのアラベスク(というより、2つのペンチェと言った方がいいでしょう。つまり足を高く上げ、背中を前に傾斜させたアラベスク)で、リンクを端から端まで横切るところ。ユヅは非常にゆっくり滑っており、片方のエッジだけでバランスを維持するには、腹筋と臀部を収縮させなければなりません。これをアラベスクポジションの足の大腿四頭筋と大臀筋に大きな張力がかかっている状態でやらなければならないのです。いわゆるパワー系の動きは、体力を消耗します。そして、この振付の中にはこのような動きが多く含まれています。

鶏と蛇と豚
舞台演出、衣装、楽曲、振付、演技、全てにおいて壮麗なプログラムです。RE_PRAYの中で最も「踊った」作品であり、実際、振付はMIKIKOが担当しました。彼女は偉大な人物であり、様々なジャンルを取り入れ、唯一無比の新しいスタイルを作り上げました。この場合、ランウェイのモデルウォーキングに着想を得た、非常に高いハイヒールを履いて踊るヴォーギングの影響を強く受けています。当然のことながら、12~14センチのヒールを履いていたら、足では大した踊りは出来ません。従って、手と腕の動きが要になります。ジェスチャーとこれらの動きは非常に素早く、エレガントで、多くの場合、「描写的」です。つまり、歌詞の内容を説明したり、日常的な行為を再現したりするのです。ヴォーギングでは大抵、メーキャップやショッピング、モデルウォーキングなどの動きが再現されますが、当然のことながら、「鶏と蛇と豚」はそうではありません。歌詞で表現されているコンセプトを強調しており、同時に最高レベルのヴォーギングと同じように、非常に素早く、明確で、洗練されています。
モダンとコンテンポラリーの典型的な短縮形があり、ユヅは、時には足と手を同時に別々のアクセントに合わせて動かし、驚異的なコーディネーション能力を見せつけました。音楽の異なるアクセントとリズムを捉えて振り付けるのは簡単なことではありませんし、全ての振付師がやっている訳ではありません。
MIKIKOはやっています。何故なら、結弦がこの方向性で彼女に付いてこれることを知っているからです。

そして、言葉と呼吸のリズムに合わせてお立ち台へ。音楽無しでダンスが成立することは殆どありません。私が記憶する限り、プレルジョカージュの『白雪姫』における、伴奏なしのパ・ド・ドゥぐらいしか思い浮かびません。ゴーティエによるこの短くて風刺的な振付(100ポジション)では、ステップのきっかけは殆ど声のみでした。

その後、MIKIKOが現れて、言葉と呼吸だけでユヅを躍らせ、彼は途方もありませんでした・・・・それから、モデルに変身して、お立ち台から降り、足を交差させるランウェイでしか見られないウォーキングと身のこなしでリンクから立ち去ります(理由は分かりませんが、私は「鶏と蛇と豚」が死ぬほど好きなのです)。

阿修羅ちゃん
会場は熱狂しました。私達がアンダスタン、アンダスタンと叫んでいたのは聞こえましたか? おそらく聞こえていたでしょう。私達の足が踊っていたのは見えましたか?おそらく見えていなかったでしょう。でもユヅは私達を見ていて、振付の間中、私達にちょっかいを出してきました。ここが日本であることに感謝しなければなりません。もしイタリアなら、何枚かのブラジャーがリンクの上を飛び交ったでしょう。

Megalovania
生で見るとめまいを起こします。氷上に映し出されるあの渦巻きは、本当に素晴らしいけれど、催眠どころか、吐き気を起こさせそうになります。そして私はこう問わずにはいられません。彼は一体どうやっているの?ただでさえ、スピンは不安定で、アイスショーのスポットライトの下で実施すればより困難になるはずです・・・氷上にカラフルな渦巻がある中で、実施するとなると・・・この渦巻の上で、渦巻と一緒に回る?そしてこの渦巻の上でマネージュ(大きな円を描きながら進むこと)を行う?常軌を逸しています。

破滅への使者
6分間練習が始まった時、私は不安だったと認めなければなりません。ここまでに滑ったプログラムで、ユヅは既に300%の力を注いでいました。
どうやってこのようなフリープログラムに立ち向かうのか?
でも6分間練習は絶好調で、私は少し安心しました。しかし、不安が無くなったわけではありません。
本番のプログラムが始まった時、私は胸の前で両手を組み、祈りのポーズになっていました。私の周りも皆同じでした。おそらく、皆の祈りが通じたのでしょう。ユヅはついにクリーンな破滅への使者を滑りました。(2本目の4Tはよくリンクの外に飛び出しませんでしたよね?本当にスレスレでした。
私は、ユヅが地球と同じにように、自転と公転が出来る、という説明に辿り着きました。彼はジャンプする時、リンクに沿って公転する能力があるのです。言ってみれば、空中で曲がることが出来るということです。そうでなければ、どうやって最前列のFanyuの腕の中に着氷せずに済んだのか説明が付きません)。
それだけではありません。彼の腕、頭部、胴体の動きを見ましたか?この奇妙で難解な音楽を如何に力強く、雄々しく演じていたか見ましたか?かつて、アンジェロ・ドルフィーニは、「Origin」について、彼の意見では、「荒々し過ぎて」ユヅには向かないプログラムだと言っていました。私にとって、「破壊への使者」はORIGIN 3.0と言えます。ダークで官能的で「荒々しい」。そして、今回はドルフィーニもこの選曲に異論はないはずです。

そして、フィニッシュでユヅは叫びました。獰猛に、野性的に。私達は、見ず知らずの相手と泣きながら抱き合いました。そしてトイレに駆け込む代わりに、先ほど目撃したことに圧倒され、恍惚と座席に座ったまま製氷タイムを過ごしました。

いつか終わる夢;Re
見返して確認する必要がありますが、2度目のアラベスクの後、パッセの足を引き、デべロッペ・アラセコンドを行った時(もう何のことだかご存じですね)、彼は小さくジャンプしたように見えました。彼は物事をより難しくするのが大好きなのです。

天と地のレクイエム
今日の演技は驚異的でした。まだ暗闇の中、中央に移動しながら、彼は既にプログラムに入り込んでおり、胸は既に嗚咽で震えていました。そして、点灯し、消灯し、オレンジ色の灯りから白い灯りに変わるあのランタンは、まるでアリーナに飛んできて、私達をユヅのいるリンクに連れていってくれそうに見えました。後は・・・私達全員の魂はそこ、彼と共に氷上にありました。

あの夏へ
今日も完璧でした。そして、今日もある意味で新しい「あの夏へ」でした。帯状の裾と彼がどれほど遊んだか。あのスパイラルは?私は右サイドに座って、スクリーンを見ていました。彼は左サイドで足をアラベスクポジションに展開し、スパイラルは半周続きました。脚は1ミリも下がることはありませんでした。膝は真っすぐ伸び、足はバレエダンサーのように、少し斜め上に向けられていました。傑作です。

春よ来い
彼はこのプログラムを何度滑ったでしょうか?何度も滑っています。しかし、毎回、新しい作品なのです。土曜日の「春に来い」がエアリーで、ユヅが明日を信じる微笑みが浮かべていたとしたら、今日の「春に来い」は、より感動的で内面的でした。それに、これはRE_PRAY本編の最後のプログラムで(この後に滑るプログラムはアンコールです)、今日はツアー最終日ということで、ユヅはこのショーに別れを告げながら滑ります。最高の形に昇華されたRE_PRAYは、世界に解き放たれ、Fanyuの心の中に永遠に留まることになるでしょう。一方、結弦は別のプロジェクトと別の目標に進むことが出来ます。ハイドロブレーディングを行った時、彼は横浜のリンクをキスするのではなく、抱きしめました。挨拶、そして愛の告白です。

Let Me Entertain You
お祭りでした。ワン、ツー、スリー、カオスです!ユヅが3Aで転倒したのは大したことではありません。転倒しないに越したことはありませんが、お祭りで酔っぱらて、よろめいたようなものです。

SEIMEI
彼の表情が一瞬で変わったことに気が付きましたか?
先ほどの酔っぱらいは消え、戦士が現れました。滝のような汗を流し、言葉にならないほど疲れていても、ユヅはスピンとコレオシークエンスの前に幾つかの新しい振付を考案しました。この数小節の音楽を「無駄」にしないために。もはや会場総立ちです。皆、呆然とし、幸福感に包まれ、動転しています。私も訳が分からなくなっていました。

ロンド・カプリチオーソ
誰かはこう思ったことでしょう「これもやるなんて無茶よ!死んでしまう!」
他の誰かはこう思ったでしょう「エネルギー抑え目で行くでしょう」
一方ユヅは、ミリ単位に正確な動きと無限のパワーと優美さを伴う、未だかつてないほどエネルギッシュなステップシークエンスを実施しました。特筆に値するのはタン・ルヴェです(空中で脚を横に伸ばしてジャンプする技)。完全に真っすぐ伸びた膝、見事なアン・ドゥオール(外旋)、肩と背中の完璧なポジション。

もう「ありがとうございました!」と叫ぶ時が来ていました。ユヅが大声で叫び、私達も叫びました。皆で一緒に叫んだ訳ではなく、各々が別々に叫んだので皆さんに聞こえていたかどうか分かりませんが、私達は間違いなく「ありがとう!」と叫び続けていました。

ありがとう、ユヅ!

私もそう叫んでいました。私の隣の人も叫んでいました。後ろの人も前の人も、反対サイドの人も、皆が皆、全員が叫んでいました。
ありがとう、ありがとう、ありがとう。
私にはあなたが観客に向けて言った言葉は理解出来なかったけれど、そんな事は重要ではありません。私はあなたに賛同し、あなたは私の魂で、私の心なのです。
例え一生かかっても、私はあなたが与えてくれたもの全てにお返しすることは出来ないでしょう。
これが千秋楽で良かった・・・もし次の公演があったら・・・ここで目撃したものを再び見ることが出来ないと考えるのは耐えられなかったでしょう。
ありがとう、ありがとう、永遠にありがとう、ユヅ。

知ってる?私は明日、仙台に行くのよ。
まだあなたを手放さないために。
何度でも繰り返します、ありがとう。



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☆スケートをやるアレッサンドラさんは、Myスケート靴を持参していて、火曜日はアイスリンク仙台でスケートを楽しんだそうです!

「井戸に落ちて、次の瞬間、不思議の国にいるアリス」とは言い得て妙ですね。
そうか・・・私達はユヅルの国のアリスなのか・・・
確かにあの時間、私達はRE_PRAYワールドという異次元の世界に連れて行かれました。
非現実的で夢のような空間に没入し、圧倒され、鳥肌が立ち、言葉では言い表せない感動の渦にのみ込まれた時間・・・
この2日間におけるこの私の没入体験が何だったのかを理解し、言葉で語るにはまだ時間がかかりそうです。

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Published by Nymphea(ニンフェア)

管理人/翻訳者(イタリア在住)。2011年四大陸チゴイネ落ち @pianetahanyu