2024年2月19日、歴史が生まれた日

今、ITA Airwayの機内にいます。明日から3月中旬までずっと忙しく、しばらくブログを更新出来ないと思いますので、12時間のフライト時間を活用して何か書くことにしました。
どこから始めたらいいのか・・・

私は今回の帰国中、幸運にも17日と千秋楽、両日の公演を現地で観戦することが出来ました。

土曜日の公演が終わった時、私は圧倒され、呆然としながら、もう一度観ることが出来る幸運に感謝すると同時に、この日の出来があまりにも素晴らしかったので、ああ、今日が配信なら良かったのに・・・という思いがちょっと頭をかすめたことを白状しなければなりません。2日目は体力的によりキツイ上に、千秋楽、生中継という重いプレッシャーがかかるからです

しかし、2日後の月曜日、「アポトーシス」(神格化、極致)が起こりました。
その場に居合わせた私達は歴史を目撃した証人でした。

RE_PRAY横浜公演千秋楽のパフォーマンスは、肉体的限界の既成概念を打ち砕き、技術要素のクオリティにおいて究極の域に達したという点においてスポーツの歴史を塗り替え、フィギュアスケートのライブパフォーマンスと映像芸術の融合によってゲームの世界観や倫理観を描いた革新的な作品であったという点において、そしてライブで演じられた各プログラムの芸術的完成度という点において、パフォーミングアートの歴史に新たな1ページを書き加えました。

スポーツ的観点からも、芸術的観点からも、誰も想像もしていなかった境地。

この日、披露されたRE_PRAYは最初から最後まで完璧でした。
こんなことが可能なのか?

確かに彼はこれまでも「完璧」に達した演技を何度も披露しています。
2015年NHK杯とグランプリファイナルのショパンとSEIMEI、2017年ヘルシンキ世界選手権のホープ&レガシー、2018年ロステレコム杯のオトナル、2020年と2021年の全日本のLet Me Entertain You、ロンド・カプリチオーソ、天と地と、2021年四大陸選手権のショパン・・・

しかし、いずれも2分半または4分のプログラムです。2時間以上に渡る公演で、同じ完成度、クオリティで最初から最後まで滑り切る、そんなことは絶対に不可能だと思っていました。
しかも、彼は文字通り、全てのプログラムの最初の一秒から最後の一秒まで感情と魂を注ぎ、文字通り全身全霊の演技でしたから、体力だけでなく感情的な消耗もかなり激しかったはずです。
4分のフリープログラムでも、多くの選手が体力を温存するために、あるいはジャンプに集中するために振付がお留守になっているところが少なからずあるというのに・・・

29歳というフィギュアスケート競技では一般的にピークを過ぎた年齢の選手が、2時間の公演をこのクオリティで滑り切る。しかも、会場には彼だけを見に来た7000人の観客、メディアが詰めかけ、日本中の映画館でライブビューイング、世界配信という想像を絶するプレッシャーがかかる状況下で。
そして、何よりも本番にコンディションを合わせ、公演が終わるまで無事に乗り切らなければならない。試合や他のアイスショーと違って補欠や代役はいません。怪我や病気で穴を開けることは絶対に許されないというプレッシャー。

スポーツ報知の高木恵さんが「覚悟の質が違う」と書いていましたがその通りだと思います。
現役のスケーターとその指導者はRE_PRAYを見るべきです。そして練習方法の一環が明かされたRE_PRAY舞台裏のドキュメンタリーや千秋楽の囲み取材のインタビューの内容を省察すべきです。

唯一無比の才能を持つスケーターが、誰よりもストイックに努力したからこそ可能になった奇跡。羽生結弦になるのは不可能ですが、彼のアプローチの仕方や練習方法を参考にし、学ぶことは出来るはずです。もし愚かな派閥意識に捕らわれて、誰もそうしようと思うスケーターやコーチがいないなら、日本のスケート界は終わっています。

いつか終わる夢
美しいスケーティングを見せるプログラム。まるで彼のブレードが氷上に図形を描いているように見えるのは、マイクロメートルレベルの精度を持つ彼のスケート技術があるからです。そして音楽が彼の身体から鳴っているように見える。これについて、バレリーナのアレッサンドラさんは、スローで観察すると、彼は音に1/1000秒先駆けて滑っているから、まるで彼自身の身体から音楽が発せられているような錯覚を見る者に与えるのだと分析していました。抒情的で美しい旋律を紡ぎ出す、流麗で美しいスケーティング、どこを切り取っても美しい完璧なポージング。このプログラムに見る者を異空間に引き込む磁力があるのは、全てが至高の技術に裏打ちされているからです。これまで、私はこのプログラムをノートパソコンの小さな画面でしか見たことがなかったのですが、今回、現地とディレイビューイングで、彼のスケーティングに呼応して現れる、視界いっぱいに広がる壮大なプロジェクションマッピングと膝の屈曲だけでリンクの端から端まで移動してしまう彼のスケーティングの美しさに圧倒されました。
現在の競技界では殆ど得点に反映されない技術、精度、クオリティ。それどころか、ジャンプ偏向の現行ルールと評価傾向では、ジャンプを失敗しないために、疎かにされている部分です。しかし、フィギュアスケートとは元来、エッジで氷上に図形を描くことから始まったスポーツです。この「いつか終わる夢」を1部と2部の冒頭に持ってきた選択は、「夢」からゲームが始まるというストーリーテリングの意味でも、元祖フィギュアスケートの真髄であるスケーティングを堪能させるプログラムから各章を発展させていくという点においても非常に秀逸で意味深いものでした。

鶏と蛇と鶏
人外感が凄い!(笑)
横浜の鳥蛇は、何というか本当に人間に見えませんでした。
ノッテ・ステッラータやホワイトレジェンドが白鳥、ホープ&レガシーや「あの夏へ」が精霊だとすれば、この三毒様は魔物とか物の怪とかそっち系の生き物に見えました。まるで蛇の化身のようにしなる肢体・・・
この振付を考案したMIKIKOさんは天才ですが、その斬新で比類のない振付が、埼玉、佐賀と披露される度に進化し、横浜では霊界レベルに達していました。

この楽曲のテーマである三毒とは、仏教における人間の最も根本的な3つ煩悩のことです。

  • 貪(鶏)むさぼり(必要以上に)求める心。「欲」・「ものおしみ」・「むさぼり」と表現する
  • 瞋(蛇)怒りの心。「いかり」・「にくしみ」と表現する。
  • 癡(豚)真理に対する無知の心。「おろかさ」と表現する。

つい当てはめてみたくなります

  • 貪(鶏)=彼のスケートだけでなくプライベートにまで自分の願望と理想を押し付けようとする身勝手なファンと彼の私生活まで貪ろうとする三流メディア
  • 瞋(蛇)長年、羽生君に憑りついて離れないアンチと彼の結婚でアンチ化した元ファン
  • 癡(豚)三流メディアの捏造記事やワイドショーに群がる野次馬根性丸出しの大衆

彼が何故この曲を選んだのか、改めて考えてしまいます。

プラトン`のイデア論に由来する「真善美」という言葉があります。認識上の真理と、倫理上の善、そして、審美上の美という人間の精神が究極的に求める普遍的な価値を意味する言葉で、要は嘘・偽りがなく、倫理的・道徳的に正しく、美と調和している状態のことです。そして、羽生結弦はまさに真善美の化身のような人だと思います。彼が私達の生きるこの時代、地球に、日本に生まれてくれたことを感謝すると同時に、煩悩だらけのこの世界は真善美の彼には汚過ぎたのだと申し訳ない気持ちになります・・・

ゴシック風の黒い衣装に身を包って深紅の光の中で妖しく、狂おしく舞う羽生君は醜い世界に怒り、苦悩する真善美の化身のようにも見えました。

ゲーム画面のドット絵のキャラクターから実写アクションへ
PCの小さな画面ではなく、舞台の大スクリーンで見るこのシーンはド迫力でした。
埼玉公演の配信で初めて見た時にまず思ったのは、これは二次元の容姿・頭身の羽生君だから成り立つシーンだということです。

Megalovania
前にも書きましたが、生MegalovaniaはPC画面に見るより、何十倍もカッコ良かったです。それに私は彼のパンケーキツイヅルが大好きなんですよ。ホワイトレジェンドで最初に見た時は目が釘付けになりましたが、あまり見られる機会のない技なんですよね。ロミジュリ1のステップにも手を広げた短いバージョンが入っていましたが、ホワイトレジェンドほど長いパンケーキツイヅルは以降見たことがありませんでした。だからMegalovania ではたっぷり見ることが出来て大満足でした。そして現地では猛速度で旋回しながらこちらに迫ってきましたから、ド迫力でした。とにかく最初から最後まで凄まじいスピードとキレで圧倒されました。

破滅への使者
横浜千秋楽の演技は本当に衝撃的でした。
彼はどんなジャンル、キャラクターも完璧に自分のものし、彼の代表作にしてしまうことが出来ます。ノッテ・ステッラータや「春よこい」のような精霊系、プリンスやLet Entertain Youのようなロックスター系、ショパンのバラード1番やロンド・カプリチオーソのような珠玉系、ホープ&レガシーや悲愴のような森羅万象系、SEIMEIや「天と地と」のような神降臨系などなど

中でも私が特に魂を揺すぶられ、病みつきになってしまうのは、より野性的で、刹那的で激しい、暴れ馬系のプログラムです。象徴的なのがロミオ+ジュリエットで、ニースのあのロミオはおそらく「まだ」日本の羽生結弦を知らなかった、会場に居合わせた観客に「集団ヒステリー」を起こさせました。

「破滅への使者」は、ロミオの激しさとORIGINの魔王感が融合されたようなプログラムで、埼玉公演で初めて披露された瞬間から、私は心を鷲掴みにされました。
しかし、横浜公演の演技を見て、埼玉版はまだまだ発展途上段階だったことが分かりました。横浜版は埼玉、佐賀と比較すると、最初から最後までブラッシュアップされ、あらゆる細部まで磨き上げられていました。
そして各エレメントの質!
4T-eu-3S-eu=3Sの5連続ジャンプは後半のジャンプのクオリティじゃないですよ!
そもそも4T-eu-3Sのコンビネーションを後半に飛べる現役の選手だってほんの数人しかいないというのに、4曲を全身全霊で滑った後に、このような高難度プログラムをこのクオリティで、完璧に滑れるようになるために、彼は一体どのくらい練習を積み、どのくらい努力したのでしょうか?
最初の4Tの後、足を左右に振り上げる振付は、埼玉初日の配信を見た時にとても印象的だったのですが、埼玉2日目と佐賀では蹴りが少し控え目になっていました。
しかし、横浜公演では、両足共、思い切り高く蹴り上げていました。体力のキツイ後半の、高難度連続ジャンプに入る前のトランジションでこのクオリティです。

私はゲームをやらないので、このプログラムのキャラクターであるクジャのことは全く知りませんでした。横浜公演の前にゲーマーの方の解説を幾つか読みましたから、埼玉、佐賀を見た時に比べれば知識はありました。しかし、人の書いた「あらすじ」を読んだだけですから、例えば自分で実際に読んで共感した小説の主人公や、あるいは子供の頃、よく見ていて思い入れがあったり、カッコいいと思っていたアニメのキャラと違って、自分の心の中に入っているキャラクターではありません。しかし、原作のキャラクターを理解していなくても、無問題でした。
埼玉でも佐賀でも横浜でも、私は羽生結弦を通して、彼に憑依したクジャの魂を見ました。そして、彼にはそのプログラムのテーマやキャラクターについて何の知識がなくても、見る者を感情移入させる能力があるのです。
ニースのロミジュリだって、演技前に曲名はアナウンスされませんし、ニノ・ロータ版のロミオとジュリエットほどポピュラーではありませんから、会場には彼が演じているのがロミオだと知らずに見ていた人も大勢いたことでしょう。しかし、そんなことは関係なく、彼の演技に引き込まれ、感情移入し、涙を流したのです。

「破滅への使者」にはクレイグ・アームストロング作曲の「ロミオ+ジュリエット」のサウンドトラックのような、抒情的で心の琴線に触れる「感動的な」メロディーはありません。
むしろ、旋律的な部分が少なく、不協和音が続く前衛的で非常に難解な楽曲です。いわゆる「助けてくれる」曲ではないですから、演技に魅力がなければ、きっとよく分からない謎プログラムになっていたでしょう。

横浜の「破滅への使者」は、圧倒的なラスボス感、魔王感に加え、ニースのロミジュリの暴れ馬風味が加わった魂の演技で、演技終盤、私は自分の見ていることが信じられなくて、頭を抱えていました。

あの夏へ
彼の誕生から競技界で頂点を極めるまでの半生を描いたGIFT前半で披露された「あの夏へ」は、明らかに震災、津波、そしてその後の再生の兆しを表現していました。一方、RE_PRAYでは同じプログラムに全く違う意味、ストーリー上の役割が与えられていました。「進める・・・神様が導く方へ、水が照らす方へ・・・」というナレーションから開始するRE_PRAY版「あの夏へ」では、命を掴み取らない選択をしたために枯渇し、失われた水が再び戻ってくる、大地が浄化され、再び潤う、そんな情景が浮かびました。
しかも、土曜日も千秋楽も右側の席でしたから、結弦ハク様があのアラベスクのスパイラルで私の目の前を通り過ぎて行かれたのですよ!その美しさたるや・・・
どう表現すべきかずっと考えているんですが、未だに適切な言葉が思い浮かびません。
この世のものとは思えないほど美しかったと言っておきます。

横浜千秋楽で頂点を極めたアイスストーリー「RE_PRAY」はパフォーミングアートの歴史を塗り替える革新的な芸術作品だと思います。
千秋楽のMCではディスク化について言及していました。Megalovaniaの作曲家であるトビー・フォックス氏を埼玉公演に招待したのも、将来的なディスク化を見据えてのことなのかなと思いました。
でも1年後とかでいいので、地上波でも是非放送して欲しいです。金曜ロードショー枠に相応しいと思ったのですが、映像の権利を持っているのはテレビ朝日ですから無理ですね(笑)。
いずれにしても、これほど革新的な芸術作品が、お茶の間の一般視聴者の目に触れないのはもったいなさ過ぎます。GIFTもRE_PRAYも、映像作品としても素晴らしいですから、カンヌやヴェネツィアの国際映画祭の特別部門とかに出展して欲しいぐらいです。日本でも世界でも、彼のファンやスケートファンだけでなく、もっと広い層、広い分野の視聴者や専門家に見てもらいたいです。

今回のツアーでは会場だけにのべ11万5千人の観客が詰めかけ(しかも、行きたくてもチケットが当たらず行けなかった人が大勢いるのです)、全国の映画館でライブビューイングとディレイビューイング(私の行ったTOHOシネマズ新宿は一週間前に既にチケット完売、東京都の映画館はほとんど完売したようです)。CS放送、Beyondの世界配信を見ていた人を含めると、一体どれぐらいの人がRE_PRAYを見たのか想像もつきません。

一言で言うとRE_PRAYは興行的にも内容的には空前の大成功を収めました。
埼玉から始まり、横浜の神演技で極致・完成した単独公演ツアー。
「見たか世界、これが羽生の力です」という西岡アナウンサーの名解説が脳内再生されます。

後ろ盾を持たず、電通やIMGなどの巨大エージェンシーに属さない羽生結弦が、競技を引退しても尚、圧倒的人気で、一人勝ちしていることを快く思わず、潰そうとする勢力があるのは私も感じています。なりふり構わず妄想・捏造記事を乱発する週刊誌、そんな記事がYahoo Japanに上がる度にコメント欄にワラワラと湧いてくるらしいアンチコメ要員(幸いにも2022年4月以降、ヨーロッパからはYahoo Japanが見られなくなりましたので、私はそんなゴミを目にしなくて済みますが)、明らかに不自然であり、何か組織的なものを感じます。

この業界を牛耳っている人達は、思考回路が30年以上アップデートされていないようで、未だに理解していないようですが、今はもうテレビなどのメディアを使って人気を操作出来る時代ではありません。ましてや週刊誌ごときが、C級のコタツ記事で羽生結弦の人気を少しでも陰らせることが出来ると考えているのだとしたら、思い上がりも甚だしいです(むしろ彼らのやっていることは、日本のメディアの質の低さ、人権とプライバシー侵害に対する意識の低さを世界中に知らしめる行為であり、同じ日本人として本当に恥ずかしいです)。

羽生結弦を舐めないで欲しい。
彼は誰よりも負けん気が強く、生まれながらの戦士で、手の付けられない暴れ馬で、頭脳明晰な軍師なのです。こんな卑劣な工作に負ける訳がありません。
そして、私は、正義は勝つと信じています。
彼を冷遇したスケート界の現在の衰退ぶりと、羽生結弦のプロアスリートとしての輝かしい成功がそれを物語っていると思います。

このRE_PRAYの大成功は、羽生結弦の強さ、そして彼が別次元にいることを改めて見せつけました。
そんな彼が、ファンを信頼し、頼りにしてくれるのは嬉しいことですよね。

大丈夫

私達はあなたを信じ、応援し続けますよ!
RE_PRAY単独公演ツアー大成功おめでとうございます!
再びあなたを氷上で見られる日を楽しみにしています。

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Published by Nymphea(ニンフェア)

管理人/翻訳者(イタリア在住)。2011年四大陸チゴイネ落ち @pianetahanyu