アレッサンドラさんの現地レポ「RE_PRAY横浜公演1日目」

いつもバレエ的視点から素敵な考察記事を書いて下さる作家でバレリーナのアレッサンドラ・モントゥルッキオによる横浜公演第1日目の感想です。

公演前の他のFanyuとの交流エピソードは省きました。彼女がぴあアリーナに入場したところから訳します。

・・・・私はアリーナに入場し、自分の席を見つけました。通常、書店での著書のプレゼンテーションほどの時間(つまり僅かな時間)で席を見つけることが出来ます。リンクは遠いけれど、よく見えます。リンク全体、スクリーン、観客席全体が見渡せて、決して遠くはありません。
ええ、私はショーを楽しみます・・・そう、楽しむのよ・・・

・・・そして何が起こるのかまだ分かっていませんでした。
確かに、私はツアーの前の公演を配信で見ているし、ユヅを生で見たこともある、彼が何を滑るのか知っているけれど、このような体験をするための準備は何も出来ていなかったのです。

ユヅが「いつか終わる夢」を滑り出した時、私が胸を殴られるほどの衝撃を受けたのは・・・いわゆるショーの多次元性でした。
照明、映像、氷上のプロジェクション、この後に始まるナレーション、結弦、そして観客も、全ての要素が一体となり、このアリーナにいる私達一人一人が、まるでショーが目の前だけではなく、自分達の周りにあるような、絶対的で魔法のような没入体験に飲み込まれました。そして、全てが、より強く、より鮮明に、より深い意味に満ちたものになるのです。

そしてユヅ・・・そう、ユヅ

(天井席なので)時々はスクリーン越しに彼を見るだろうと思っていたけれど、そうはなりませんでした。
例え、遠い席からでも、彼の存在はあまりにもカリスマ的で、氷上を支配する能力はあまりにも圧倒的で、その視線はあまりにも強烈で、私は催眠にかかったように彼から目を離すことが出来ませんでした。同時に、彼の世界、しかしあなたにとっても意味を持つ世界へあなたを連れていく比類のない能力を持つこの男性を前にして、信じられないという気持ちになるのです。他のアスリートとは勿論、他のアーティストや優れたコミュニケーターと比べても、ユヅが並外れているのは、彼はただ聞く価値のある素敵な物語を語るだけでなく、あなたを物語の一部にしてしまうのです。
彼は、自分の魂をさらけ出すことを恐れないだけでなく、彼の魂の中にあなたを入れてくれるのです。そして、彼の魂の純粋で並外れた世界の中に、あなたは自分の魂も見出すのです。

全てのプログラムがそうでした。

氷上に開花する全ての模様が、まるでスケート靴を通して彼の心から生まれてくるように見える「いつか終わる夢」

更に磨き上げられ、洗練された「鶏と蛇と豚」。ダンスとフィギュアスケートの完璧な混交。腕の動きに合わせて、足で、爪先で細かいステップを踏んでいます(配信の画面では、渦を描くような複雑で細かいこの足の動きには気が付きませんでした)。しかもユヅは帝王のように悠然と階段を登るところの最後で転がります。そして起き上がって、これまでに私達の見た振付に戻るのです。これまでにない鮮烈さで。

エアリーで、動きのあらゆる細部まで磨き上げられたホープ&レガシー(教本通りのフリップとルッツ)は、あまりにも人間的で霊的で涙が溢れました。

このほどエネルギッシュなメガロヴァニアは見たことがありません。 渦巻や円や動く幾何学的な図形が描かれた氷上で実施されるスピンと マネージュ(大きな円を描きながら進むこと)は、めまいを起こさせます。氷上を叩いたり、削ったり、突いたりするエッジの音だけが響く無音パートで感じた鳥肌にこのめまいが加わります。

まるで焼かれる前に離れることの出来ない炎のように、苦しいほど美しい「破滅への使者」。6分間練習は完璧でした。プログラムでは小さなミスが2つありましたが(終盤のステップアウト)、ユヅは全てをコントロールしていて、動作とリンクと観客を支配していました。壮麗で巨大な4回転ジャンプ、非常に高さのある3アクセル。ユヅが氷上に倒れ込んで一部が終わった瞬間、喉の奥に燻っていた感情が爆発しました。

製氷タイム、私達は殆ど感想を交わしませんでした。話をするには私達は動転し過ぎていて、まだRE_PRAYに浸り過ぎていました。こうして外面は静かだけれど、内面では超新星が爆発しているという、訳の分からない状態のまま、あっという間に30分が経過し、後半が始まりました。

ピアノの旋律に乗せた破壊的な白衣装の「いつか終わる夢」

まるで初見のような錯覚を起こさせる感動的で壮大な「天と地のレクイエム」。最後のスピンは、軸が一点から1ミリも動くことなく、驚異的な回転速度でした。

「あの夏へ」(夏の日、というより真夏の夜の夢のようです)は、非現実的なほど全てが完璧でした。非常に長いスパイラル、音楽が終わった後も数秒間続く振付は、一つの物語が終わっても、人生は続いていくとユヅが言いたがっているようでした。最後にまるで愛撫するかのように、彼の頭部に残った衣装の裾の1本が何と美しかったことか・・・

「春よ来い」は私は既に生で見たことのある唯一のプログラムでした。私はこの振付を数えきれないほど見返しましたが、決して見飽きることはありません。何故なら、見る度に違うからです。今回の「春よ来い」には、より良い明日がやってくることを願うだけでなく、その明日がきっとやってくると約束するような空気がありました。

でもやってきたのはユヅでした。

エンドロールの後、RE_PRAYの黒シャツに黒いパンツ姿のユヅがマイクを手にリンクに現れ、観客に語り掛けます。当然のことながら、日本語です。彼が何を話しているのか知りたいですが、この際、問題はありません。誰かが彼の言葉を英訳してくれるはずです。今重要なのは、彼が陽気で、楽しそうで、それどころか、まだ私達に与えるエネルギーと光に満ちているのを見られることです。
そして、私達は彼に応えようとします。
LET ME!
ENTER!
TAIN YOU!
と大声で叫びながら。そして拍手し、声が枯れるまで叫びます(OK、私の声が枯れたのは、彼が『Shake your ass(ケツを振れ)』という歌詞に合わせた動きを私の目の前で行った際に起きた心不全のせいだと認めなければなりません)。でも彼はこのような拍手喝采と大歓声に相応しいのです。

SEIMEIでもロンド・カプリチオーソでも私達は叫び、手を叩きました。そして彼が私達に挨拶しながらリンクを周回している時、私達は全員立ち、手を振り、彼のために歌いました。それは祝典であり、勝利であり、歓喜であり、彼から発せられ、8000人の観客によって反射された光であり、再生可能な純粋なエネルギーであり、理解であり、没頭なのです。
アモーレ(愛)なのです。

そしてユヅは解き放たれ、挨拶の周回は、もはや彼が気合や幸福感や氷への忠誠心の全てを爆発させる本格的な振付になりました。
羽生結弦、あなたは何という自然の力と澄み切った魂を持っているのでしょう!

公演が終わり、私たちは群れをなして外に出て、道路の静かな場所に着くとすぐに立ち止まりました。話すのは困難でした。自分達の感じたことを表現し、自分達が見たことを語るにはあまりにも不十分な幾つかの言葉をどもりながら発するのが精一杯でした。しかし、この「どもり」、自分よりずっと大きいものを表現しようとして、いっぱいいっぱいになってしまうこの感覚こそが真実なのでしょう。

事実を言えば、私は幸運にも明後日、彼を再び見ることが出来ます。
一度、羽生の泉を飲むと、また戻って飲まずにはいられなくなるのです。

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☆アレッサンドラさんは私と違って先行で楽日、リセールで17日のチケットを当てたくじ運の持ち主です。しかし、彼女曰く、プロローグ、GIFT、RE_PRAYの埼玉・佐賀公演は落選に次ぐ落選で、今回やっと当選したのだそうです。

彼女とはミラノで開かれた「羽生結弦」学会以来の再会でした。土曜日の公演の後、感想を語り合おうと出口で待ち合わせをしましたが、お互いすっかり圧倒されてしまっていて、出てくる言葉と言えば、「Pazzesco!」(途方もない)、「Non ho parole」(言葉がない)、「Abbiamo ancora dopodomani!」(私達にはまだ明後日もある!)だけでした😂
その数時間後にこんな素晴らしい長文感想を書き上げていたとは!さすがプロの作家です!

私は、と言えばまだ魂が戻ってきません・・・
夜、近所のスポーツジムに行くのが日課ですが、このところはRE_PRAY現地観戦や休館日で行けてなくて、今日、久々に行ってきました。そこで自分が相当重症であることを自覚しました😨
通常、最初にマシンエリアに行き、各マシンで筋力トレーニングを50回ずつやるのですが、数が数えられない!
途中で破滅への使者が出てきてしまって、何回やったのか分からなくなってしまうのです。それで少し戻って数え直すんですが、今度は三毒様が出てきてまた分からなくなる・・・20回?30回までいったっけ???しかし、破滅への使者は私の脳内で容赦なく4T-eu-3S-eu-3Sのコンビネーションを跳び続けます。そんな調子で今日は普段の倍ぐらいやった気がします😂
その後はプールで30分ぐらい泳ぐのですが、水中に入ると今度はハク様が出てきました。私の目の前をこの世のものとは思われない美しいスパイラルで通過していったハク様を思い出しながらクロールをしていたら、危なく前の人に激突するところでした。

これは何ですか・・・一種の病気なんですかね?😨
RE_PRAY後遺症とかRE_PRAY欠乏症とかアフターRE_PRAYとか・・・

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Published by Nymphea(ニンフェア)

管理人/翻訳者(イタリア在住)。2011年四大陸チゴイネ落ち @pianetahanyu