イタリア解説Euro Sport版「2015スケートカナダ~羽生結弦FS」

SC2015_FS1羽生結弦選手のフリー演技の解説の書き起こしです

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miiさんが翻訳を書き入れて下さいました。ありがとうございます!

実況:マッシミリアーノ・アンベージ
解説:アンジェロ・ドルフィーニ

 

(演技開始前)

マ:羽生結弦、ショートでは予期せぬ一連の出来事により、この選手本来のレベルに相応しい得点を得られなかった。

転倒はなかったけれど、重大な問題は予定されていた4トゥループが抜けてダブルになったことだ。練習では全く危なげがなかったから、軌道で何かのアクシデントがあったんだろう。コンディションはいいようだ。通常、彼は10月の時点で質の高いフリープログラムを滑るのはきついようだけれど。

 

ア:そうだね。通常、彼は始動するまでに時間がかかる選手だ。しかもこれは非常に野心的なプログラム。

マ:彼が非常に感情移入しているプログラム

ア:曲は梅林茂作曲の『SEIMEI』

(演技中)

ア:最初のエレメンツはサルコウ

4サルコウ!(笑)

ア:4トゥループ、衝撃的なスタート

ア:3フリップ

ア:プログラム後半、ここで2本目の4トゥループに挑戦。

うまく行かなかったショートと同じ軌道

4トゥループ!手を付いたけれど傑出した明敏さで2トゥループを付けた。

ア:3アクセル/1トゥループ

ア:助走で僅かにバランスを崩したけれど・・・
3アクセル/ループ/3サルコウ!!
こんな風に切り抜けられるのは彼だけだ

ア:3ループ

ア:最後のジャンプ、ルッツ

3ルッツで転倒!!

でも超高難度のプログラム!(笑)

ルッツの転倒がスピンに少し影響して、実行時間があまりなかった。

(演技終了)

マ:恐ろしい(笑)

ア:本当に恐ろしい(笑)

10月の時点でこれほどレベルの高い羽生を見るのは初めてだ。

マ:これまでにフリープログラムで4回転ジャンプを3本跳んだ日本人選手は何人いる?

最近は誰もいない。おそらく本田武史まで遡らなければならない。

ア:本田も3本は成功したことはないと思う。

マ:いや、僕は1度だけ成功したことがあるように記憶している。でも10年前の話だから本質的に今とは全く別のフィギュアスケートだった。

ア:いずれにしても4回転ジャンプ3本3アクセル2本のプログラムは2002年のゲーブル以来だ

マ:今日の、いずれにしても非常にハイレベルな演技でいつもと比べて何が足りなかったか。3アクセルの安定感だ。ここで1番大きなミスがあった。ルッツの転倒はたまに起こることで予測可能だったけれど、今日は2本の3アクセルがいつものクオリティではなかった。このため3アクセルに3トゥループを付けることが出来なかった。そして2本目の3アクセルは止まった状態から跳んだ

ア:このアクセルに3サルコウを付けて完成させることが出来たのは恐るべき能力だ。

スロー映像を見て行こう

冒頭、この4サルコウの高さは衝撃的だ。あまりにも高過ぎて制御するのが大変なほどだ。

マ:でも安定しているからあまり練習していなかったクワドだ。

ア:本当に素晴らしかった。

最初の4トゥループもよかった。

2本の4トゥループで一瞬手を付くけれど、着氷後のスピードがあったから2トゥループを楽に付けることが出来た。

これはルッツの転倒。君の言う通り初めて起こるミスではない。

マ:僕は最初の3アクセルの映像が見てみたかった。何かが上手くいかなかったんだろう。通常なら彼にとって平凡なジャンプだ。僕達が何度も言っているように、彼はエッジ系ジャンパーだからアクセル、サルコウ、3ループが得意だ。ループは無の状態から完璧に跳んでいる。

ア:それに僕達は彼が4ループを決めるのは既に何度も見ている。

(得点表示)

マ:演技構成点が低いね

ア:本当だ。だって非常に繋ぎの濃いプログラムだったよ。

マ:何よりも最初から最後まで音楽と同調して滑っていた。僕は演技構成点では93-94点は出ると思っていた。

ア:僕もだ。何故なら、これまでの彼はシーズン初めにプログラムをエンジン全開で滑れることがあまりなかったが、今日はこの点においても既に説得力のあるプログラムだった。

ア:いずれにしても10月に披露された他の誰のプログラムと比べても最高のフリープログラムだった。

 

<村上大介君の演技後>
(要約)

この男にこれ以上何が出来ただろう
両手で顔を覆っている。当然だろう。現在のフィギュアスケート界の絶対的頂点と言える羽生とチャンの偉大な演技の後で恐るべき演技を見せた
彼も今の時点ではTES90点を超える傑出した技術を見せた。
それに彼はもうひとつの資質を見せた。
羽生とパトリック・チャンのあの演技の後でリンクに降りるのは禁断の間に入るようなものだ。2本の4サルコウと2本の3アクセル。驚異的なプログラム。これは次の世界選手権の2枠目を巡る村上大介の真のライバルである宇野昌磨への挑戦状だ。
技術面では彼は日本のマックス・アーロン。4サルコウの絶対的安定感を誇る。
でも振付けとスケーティングスキルにおいてアーロンより優れている。

<その他の印象的なコメント>

パトリック・チャンが羽生に勝つには奇跡が必要だった。
そして今日、彼はその奇跡を起こした。

 

<エリザヴェート・トゥルシンバエワ選手ショート後のキス&クライ>

☆ 不本意な出来に激怒しているらしいツルシンちゃんが途中でキスクラから出て行こうとするのをオーサーがたしなめる。

ア:彼女は怒って席を立とうとしたけれど、オーサーが止めて叱っているみたいだね。

マ:当然だろう。気持ちは分かるけれどマナーは守るべきだ。オーサーは選手達にそういったマナーも指導するんだろう。当然厳しく言い聞かせるだろう。まあ彼の手元には違った意味でもっと調教困難なのがいるけれど(笑)

ア:ははは、全くそうだね。

と視聴者にそれが『誰』なのか伝えず、お茶の間を置き去りにしてバカ受けする2人。
もっと調教困難なのって・・・やっぱり彼のことですよね・・・

Published by Nymphea(ニンフェア)

管理人/翻訳者(イタリア在住)。2011年四大陸チゴイネ落ち @pianetahanyu