パパシゼがワールド欠場・・・
OA Sportの記事より
パパダキス/シゼロンが2021年世界選手権を断念:
我々はもっと具体的な目標を必要としている
ファブリツィオ・テスタ(2021年1月19日)
☆ギヨーム・シゼロンとガブリエラ・パパダキスのコメントだけ抜粋します
ギヨーム:我々はこれほど長い間試合がない時期を経験したことはなかった。相次ぐ大会キャンセルは全てのトップ選手にとって管理するのが難しい不安と迷いの雰囲気を生み出した。
未だに世界選手権の開催は仮説に過ぎず、我々はもっと確実で具体的な目標を必要としている。従って我々は2022年のオリンピックを優先し、五輪に向けて最高のコンディションを準備するために自分達のチームと連盟と共に全力を尽くすつもりである。
ガブリエラ:ここ数か月間、私達は様々な感情段階を味わいました。新たなモチベーションを得るために私達の目標を見直す必要があります。
9月までにスポーツイベントが通常通り開催出来る状況が整うことを願いながら、来シーズンに持てる全てのエネルギーを注ぎたいと思っています。
観客のいる試合でリンクに戻れる日が待ちきれません。
☆全米男子についてはテンションの低い記事を書いていましたw
ネイサン・チェンが全米五連覇。2位がジョウ
ファブリツィオ・テスタ(2021年1月18日)
大会前の予想通り、ネイサン・チェンがラスベガス(ネバダ州)のオーリエンズアリーナで今週末開催された2021年フィギュアスケート全米選手権で五連覇を飾った。
アメリカ・フィギュアスケート史上、最後に五連覇を成し遂げたのは50年代における伝説のディック・バトンだった。
ラファエル・アルトゥニアンの教え子はスケートアメリカに比べて技術面のハードルを押し上げ、5本の4回転ジャンプで構成されるフリープログラムを披露した。
4ルッツはステップアウトで両手を氷に付き、4フリップ-3トゥループ、4サルコウ、後半に2本の4トゥループ(1本目はオイラー/3サルコウ、2本目は3トゥループとのコンビネーション)。
披露されたエレメントのクオリティはあまりパッとしなかったにも拘わらず(特にスピン)、現世界チャンピオンは非常に高い評価を受け取り、フリーで208.36 (114.36, 94.00)、合計322.28に達した。
大差で2位になったのは、2つの致命的なミス(4フリップがシングルになり、エッジエラー判定、4ルッツで転倒)があったヴィンセント・ジョウだった。
いずれにしても高難度のコンビネーション、4ルッツ/3トゥループ、4サルコウ、2本の3アクセル(1本は2トゥループとのコンビネーション)を次々に決め、クリスティーン・クラルのスケーターはフリー183.59 (94.99, 89.60) 、合計291.38を獲得し、4トゥループで転倒し(回転不足判定)、3アクセルの1本がパンクして フリー176.60 (80.90, 96.10) 、合計276.92で3位だったジェイソン・ブラウンを遠ざけた。
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☆パパシゼ😭😭😭・・・
彼らもコロナ禍に翻弄されている被害者ですね。
確か夏頃にコロナに罹り、かなり長い期間症状があったという記事を読みました。
ワールド辞退は残念ですが、彼らの演技は大好きなので、来シーズン、リフレッシュして万全な状態で競技に戻ってきてくれることを願っています。
1年半ほど前までアンジェロさんは「北京のアイスダンスの金メダルは怪我などの不慮の事態でも起こらない限りパパシゼ以外考えられない。何故ならライバル達に比べてあまりにも優れているからだ」と断言していました。
私もジャンプのないアイスダンスは体型変化などに左右されることはないから、北京のアイスダンス金はパパシゼで決まりだと思っていましたが、ここに来て分からなくなってきました・・・4年という年月は想像以上に長いのですね。
シングルでの連覇が如何に偉大なことなのか
ストックホルム世界選手権は北京オリンピックの代表枠を決める大会でもありますが、カナダ・ナショナルを始め、国内・国際大会がことごとくキャンセルされたカナダは選手を派遣しない可能性が高いです。また感染対策に問題はあるものの、国内試合をほぼ通常通り開催し、国内競争が激しくモチベーションを維持しやすいロシアに比べると、国内試合全滅のカナダの選手は圧倒的に不利ですし、この二国に限らず、今シーズンは練習環境、練習時間、競技状況という点において、国によってあまりにも格差あり、世界選手権の結果だけで枠を決めるのは不公平という気がします。
羽生君は思い悩んだ末に全日本への出場を決断したことについて、この大会は世界選手権の代表選考であり「希望を繋げるために出場することにした」と言っていました。
コロナ禍で先が見えず、練習を制限され、モチベーションの維持が難しい中で、開催されれば今シーズン唯一の国際大会になる世界選手権への切符を掴むために厳しい練習を重ねてきた選手達のためにワールドが開催されることを願っています(勿論バブル方式で)。
全米雑感
全米は上位の選手の演技だけ動画で見ました。
アリサ・リウが顔も身体つきも最初誰だか分からない程、激変していてビックリ!
昨年も可愛らしかったけれど、チャーミングで華やかな美少女に成長したので、成績が伴えば、彼女こそアメリカのスケート関係者達が切望する、人気低迷で崖っぷち状態のアメリカ・フィギュアスケート界を救う救世主になれそうですが、今のジャンプを見ていると、もう高難度ジャンプを跳ぶのは難しそうです。
しかし、繋ぎやスケーティングは昨季よりずっと進化していましたし、彼女自身とても華がある選手なので、パフォーマンスとして見ごたえがありました。
ロシアのシェルバコワ、トゥルソワ、ワリエワも身長はおそらく10センチ近く伸びているように見えますが、相変わらず細い身体をキープしているのは、食事制限と体重管理の厳しさがロシアとアメリカでは全然違うのでしょうね(ロシア→問答無用で強制、アメリカ→本人の自覚と努力という感じですか)。
ネイサン選手はジャンプの安定感はさすがですが、ショートまでもがスカスカになっていてちょっとショックでした(ISUは本当にフィギュアスケートがこの方向性で行ってもいいのか・・・)
五輪シーズンのネメシスも先シーズンのプログラムも、ショートプログラムの方は繋ぎや振付部分にも凝っていて、元々スケーティングが上手く、上半身の動作にキレのある選手ですから見ごたえがあったのですが、今シーズンはそのショートの繋ぎさえもゴッソリとカットされてしまった印象です。
ジェイソン選手が3アクセルの前以外、これでもか、というほど繋ぎを詰め込んだプログラムだっただけに、比較するとトランジションの密度、音楽表現、作品としての完成度の差は歴然としており、PCSでもっと差が開くべきだと思いました。
一方、これまでマッシミリアーノさんとアンジェロさんからサマリンとセットで「ジャンプを跳んでいるだけで、スケーティング、繋ぎ、音楽表現は全然ダメ」と手厳しく批判されていたヴィンセント・ジョウ選手は「見違えるほど」繋ぎ部分が上達していて、ジャンプ以外のスケーティングや振付にも力を入れているの伺えます。
女子のマライア・ベルもブライディ・テネルやアリサに比べて断然繋ぎが少なく、クロスオーバーが多く、ジャンプ前にたっぷり助走を取っていましたから、アルトゥニアン・コーチは繋ぎを極力省略して確実にジャンプを決め、技術点を積み上げる戦略なのでしょう(マライアはそれでもジャンプでミスをして台落ちでしたが)。
私はマイケル・ジャクソンや「韃靼人の踊り」を滑っていた頃のネイサンの演技は好きでしたし、基本的に踊りもスケーティングも素質のあるコンプリートな選手だと思っていますので、彼のプログラムが年々薄く退屈になっていくのは残念ですが、これは彼のせいではなく、高難度ジャンプが決まるとプログラムやエレメントのクオリティに関係なくGOEとPCSでバカ高い得点を与えるジャッジのせいだと思います。
ネイサンのようにジャッジ達から気前よくPCSを貰っていなかったヴィンセントはトップ選手との差を埋めるために、スケーティングと繋ぎを改善する努力をしていることは、これまでの彼のプログラムと先日の全米のプログラムを見比べれば明らかです。
ブライディ・テネルもスケーティングと繋ぎが年々向上しており、彼女とそのコーチがコンポーネント面の強化にも力を注いでいるのが分かります。
ソチシーズンの羽生君はパトリックとのPCSの差を自覚し、まずジャンプ構成を上げ、シーズンが進むにつれて繋ぎを増やし、プログラムを磨いていきました。
2013年のフィンランディア杯と福岡グランプリファイナルのロミジュリの演技を比較すると、トランジションがずっと豊かになっているのが分かります。
でも本来、選手達はこうやって試合の度にルールとプロトコルを照らし合わせ、自分に足りない部分を磨いて上達していくものではないですか?
ルールブックによれば「Transitions」の説明はこうなっています:
- 要素を繋ぐ、複雑なフットワーク、ポジション、ホールドの多彩で意図的な使用。
別紙で複雑なフットワークとしてツイヅル、ブラケット、ループ、カウンター、ロッカー、チョクトーが挙げられています。
評価基準は以下の通りです。
- 要素から要素までの流れが途切れない
- 多彩性
- 難度
- クオリティ
トランジションは5コンポーネントの中でも最も具体的で客観的な評価基準が設定されている項目ですが、トランジションを減らしてもPCSのTRが下がらなかったら、それどころかどんどん高くなっていったら、選手とコーチはどうしますか?
体力を温存出来る上、ジャンプをミスするリスクが低減し、しかもPCSまで上がるなら、「トランジションは無くして、クワドに集中した方がお得」ということになります。
ジャンプ前に無理にトランジションを入れて転倒したらシリアスエラーですから。
エッジエラーや回転不足だってプロトコルにeや<が付かなければ、選手は本気で矯正しようとしなくなるでしょう。
この点においても、いつも厳し目に回転不足を取られていた(実際足りていませんでしたが)ヴィンセントはジャンプも以前に比べると随分改善していましたから、自分の弱点を自覚し、ジャンプ矯正に取り組んでいるのが分かります。
今回のネイサンのPCSは94点と全米にしては控え目だったのは(それでも十分高いですが)、プログラムのクオリティにおいてジェイソンとの差は素人目にも歴然としており、後にジェイソンとヴィンセントが控えていたこともあり、さすがにこれ以上は盛れなかったのではないかと思います。
世界選手権の展望についてはマッシミリアーノさんの昨季フランス国際の考察記事がそっくりそのまま当てはまります。
勿論、全米のネイサンが彼のベストとは思いませんし、彼の場合、羽生君との直接対戦になるとユヅルモードを発動し、ギアを2段階ぐらい上げてきますから、コンディションも演技も今回より磨き上げてくることが予想されます。
でも
それでも、私は羽生君が全日本の構成でショートとフリーをノーミスで揃えたら、ネイサンが全米の構成でノーミスしても勝てないと思います。
そうでなければ、この競技の定義が崩壊します。
「フィギュアスケート」(イタリア語ではPattinaggio Artistico=芸術的スケート)は技術と芸術の調和と総合力を競う競技であり、ジャンプの本数を競う競技ではないのですから。