Corriere della Seraより「日本、虚構の政治資金パーティー券スキャンダルで岸田総理は内閣改造を余儀なくされる」 

政治資金パーティー券のキックバック問題、イタリアで最大発行部数を誇る主要全国紙コリエーレ・デラ・セーラで大きく取り上げられていました。

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コスタンツァ・リッツァカーザ・ドルソーニャ著
(2023年12月13日)

過去30年間で最悪のスキャンダル。与党である保守政党である自民党の派閥、清和政策研究会に属する数十人の大臣、副大臣、議員が、政治資金調達のためのシステムを悪用し、5億円(3,200万ユーロ)以上もの裏金を着服していた疑いが持たれている

東京地検によれば、自民党で巨大な権力を握っている清和政策研究会(2022年に暗殺された安倍晋三元元首相の一派、通称「安倍派」)は、2018年から22年までの5年間で、政治資金パーティー券の販売実数を申告せず、ノルマを超えるパーティー券を販売した会員に褒賞として裏金を支払っていた。最初に疑惑が浮上したのは8月に遡るが、日本のマスコミの反応はかなり控え目だった。

世論調査による政権支持率が崩壊する中(支持率は2009年以来最悪となる17%)、対応に追われた岸田文雄総理は、またしても内閣改造を発表した(2年前の就任以来3度目、前回は9月中旬)。辞任を余儀なくされた閣僚は、松野博一一 官房長官、岸田総理の右腕である西村経済相、鈴木内相、宮下農相で、いずれも安倍派である。特に、チップ生産の世界的リーダーに返り咲くという日本の野望の中心人物であり、6月に岸田総理の後任になりたいと宣言していた西村氏は、「虚構の」資金集めパーティーを組織したと言われている。既に自民党政務調査会長である萩生田光一を始め、6人の副大臣が辞任しているが、数日中に他の名前も加わることになるだろう。これにより、自民党清和研の一派は、内閣(行政権を行使する機関)から一掃されたことになる。検察庁による逮捕の可能性が高まる一方で、岸田総理は1月に予定されているブラジルとチリへの公式訪問を延期するかどうかも検討している。一方で、自民党の支持率は2012年以来初めて30%を割った。

一連の不正に関与した人物の中には、既に2020年東京オリンピックのスキャンダルに関与しており、2,000万円以上を着服したとされる橋本聖子元五輪大臣も含まれる。2014年にスケーター、高橋大輔選手に対するセクハラ疑惑で既にスキャンダルを起こしたことのある橋本氏は、日本の主要新聞のひとつである毎日新聞と強い繋がりのあった親族を持ち、森喜朗元総理の後任として東京2020組織委員会の会長に就任していた。そんな中、最初の離脱者が出た。宮澤博行防衛副大臣は清和研から2020年から2022年の2年間で150万円を申告しないよう圧力を受けたことを明らかにした。

しかし、今回の捜査は清和研だけでなく、一週間前まで岸田総理が率いていた自民党宏池会の一派にも及んでいる(首相は一週間前に同会会長を突然退任した)。朝日新聞によれば、宏池会は2018年から2020年までの2年間で2000万円を超える金額を申告しなかったとされており、その額はさらに増える可能性があるという。昨日、最大野党である立憲民主党は内閣不信任決議案を提出した(自民党と連立パートナーの公明党が圧倒的多数を占めたため可決されなかった)。既にインフレ対策で切羽詰まっている岸田内閣は政権維持の危機に瀕している。奇しくも日本の2023年の「今年の漢字」は「税」であり、首相を揶揄する漢字として使われている。自民党代表選は9月に予定されているが、岸田内閣がいつまで持ちこたえられるかは不明であり、特に総理自身が一連のスキャンダルに直接関与している場合、リスクは更に高くなる。自民党は任期満了時、あるいはもっと前に総裁を交代する可能性がある。一方、9月までの四半期のデータは、パンデミック(コロナ渦)のピーク以来、日本の経済が最も急速に縮小していることを示している。

@CostanzaRdO

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☆細部にまで踏み込みながら客観的で素晴らしい記事だと思います。
さて、一部の日本のマスコミまたはバラエティーに出演する芸能人が主張する「知る権利」が適用されるべきは、アスリートや国民的スターのプライバシーではなく、このような案件の真実と詳細ですよね?ここに挙がっている人達は、公職者であり、資金調達という名目で開催されたパーティーのチケット収入の一部が、「政党資金」ではなく、彼ら個人のポケットに流れ込んでいたのなら、彼らの給料を税金で支払っている国民には当然、事実を知り、明確な説明を求める権利があります。
この件に対する橋本議員の言い分がまたふざけています。
「言わないようにと言われている」
一体誰に言われたんですか?公職者である議員が、上からの指示を理由に、国民に対する説明義務を放棄するんでしょうか?これは刑事告発に該当する立派な犯罪です。メディアは議員先生に「言えません」と言われたら、はい分かりましたと引き下がるんですか?ワイドショーで「隠すからみんな知りたがる」だと「みんな知りたがっている」だのと発言した人達は、橋本議員のこの発言についてどう考えているのでしょうか?総額4000万円のキックバックを受けたとされる谷川弥一 議員(82)に至っては、取材した記者に対して「頭悪いね。言ってるじゃないの。質問してもこれ以上、きょう、言いませんと言ってるじゃない。わからない?」などと暴言を吐いたそうです。4000万円も着服しておいてこの態度、盗人猛々しいとはまさにこのことです。記者の皆さんはこんなことを言われて悔しくないんですか?この発言はマスコミのマイクを通した全国民に対する侮辱です。
そして、今回の橋本議員のキックバックについて、NHKが報道するまで週刊誌はどこもすっぱ抜かなかった、というのも情けない。ジャーナリストなら、こういう政界のスキャンダルこそ暴いて、世紀のスクープを取ってやろうとは思わないのですか?ジャニー喜多川による性加害問題では、ジャニーズ事務所の巨大な力を恐れて各メディアが沈黙する中で文春だけは執拗に追及し続けました。それが今やこの低落です。文春砲は錆びついてしまったのですか?1999年の桶川ストーカー殺人事件でも、所轄警察の怠慢を組織的に隠ぺいしようとした埼玉県警の不祥事を独自の調査でスクープしたのは写真週刊誌『FOCUS』の一記者でした。今はこんな気骨のあるジャーナリストはいないのでしょうか?中堅週刊誌までが著名人のゴシップを捏造して妄想・憶測記事を書く女性週刊誌と同じレベルに成り下がってしまうとは、なんという低落か。
そして、今回のキックバック問題は氷山に一角に過ぎないと私は思います。
総額約1兆4530億円もの金額が浪費された東京オリンピックでは、多額の使途不明資金について、支出の内訳は未だに明らかになっていません。背後に森喜朗元総理がいるのは明らかですが、東京五輪汚職事件で複数の関係者が有罪判決を受けたにもかかわらず、当の森氏がまだ逮捕されていないのは信じられないですし、日本の政界が未だにこんな労害に牛耳られているのも情けない話です。
若い政治家の中には、企業ならとっくに定年退職しているこのような超高齢者を追い出して、忖度と利権まみれの日本の政界の悪しき風習を変えよという気概のある人材はいないのか?政界の不正や汚職はイタリアも同じですが、少なくともマスメディアが権力側に忖度せず、主要新聞で糾弾記事を書き、テレビで堂々と批判出来るだけでも日本よりマシと言えます。そして法律や政令の改正・導入など、政治に対する国民の関心も日本よりずっと高いです(だから何か改正が行われる度に大規模なストライキが起きるのです)。

今回のパーティー券キックバック問題、総額で5億円のもの裏金が不正に着服されたのです。関与した政治家は、更迭、辞職だけで済まさず、立件して法で裁き、然るべき刑罰に処するべきです。

Published by Nymphea(ニンフェア)

管理人/翻訳者(イタリア在住)。2011年四大陸チゴイネ落ち @pianetahanyu