GUCCIを着こなす男

このフレーズ、もう古いようですね。
今はこちらのようです。

発売前に重版を決定させる男

6月19日未明
ELLE Japanが発信した1本のツイートに世界中が騒然となりました。

羽生結弦がGUCCIをまとってELLE Japanの表紙を飾る?

これは大事件です!

これまで、羽生君のCMなどが公開される度に、ヨーロッパ版Vogueに登場する男性モデルに負けない美しい容姿を持つ彼に何故この服?何故このフィッティング???と、もどかしさを感じることがしばしばありました。

彼ならどんなオートクチュールも誰よりもカッコよく着こなせるはずなのに!

微妙なアウトフィットが公開される度に、お洒落にうるさいイタリアのユヅリーテ達は「デザイナーを逮捕して!」「スタイリストは速攻クビにすべき!」と怒っていました。

そこに全身GUCCIの羽生結弦です!💕

ようやく彼に相応しいアウトフィット!!!😭😭😭

ブログ友達のモモ博士がもう少し真綿に包んだソフトな表現で同じようなことを書いていらっしゃいました🤭

アスリート羽生結弦(補足):彼にしかできないこと | 覚え書きあれこれ (ameblo.jp)

同じ気持ちのファンは少なくないはず😂

GUCCIをこれほどカッコよく、クールに着こなせるアスリートが他にいるでしょうか???
服のチョイス、配色、ラフに羽織ったジャケット、髪型、ポーズ、トランクに腰かけるという構図・・・

全てが完璧です!

そしてこちらはおそらくYuzuruのYを象った構図(パリコレのスーパーモデルでは絶対無理な構図です)。分度器で測っている人がいましたが、幾何学的にも完璧、まさに黄金比!

そしてGUCCIを選ぶとはナイスチョイスと思っていたら、どうやらGUCCI側からのオファーだったようですね。ナイスチョイスはGUCCIの方でした!

流石GUCCI、お目が高い!

アルマーニ、プラダ、ヴェルサーチ、ブルガリ、ドルチェ&ガッバーナ、ヴァレンティノ、マックスマーラ、ジャンフランコ・フェレ・・・ファッションの国、イタリアのハイブランドを挙げればキリがありませんが、中でもグッチは別格と見なされています。

最高品質の素材、卓越したクラフツマンシップ、ディテールへのこだわり、不朽のクラシックと大胆な革新

確固たるアイデンティティを持つブランド

イタリア人にとって、GUCCIとはこういうイメージなのです。

私はブランド品に興味がないので、バッグとかスーツとか、グッチの商品はよく知りませんが、一時期グッチ、というかグッチ一族の歴史に興味を持ち、グッチ家について書かれたノンフィクションを読み漁りましたから、グッチの歴史には詳しいです😂

確かイタリアに持ってきた本もあったはず、と書庫を探してみたら
ありました!

日本の実家に置いてきましたが、他にもこれらの本を読んでいます。

グッチの神話は、1890年末にほぼ無一文でイギリスに渡ったフィレンツェ出身の一人の青年、グッチオ・グッチのサクセスストーリーから始まります。

新境地を求めて、貨物船のボイラー室で働きながらロンドンにたどり着いたグッチオは、サボイ・ホテルで皿洗いの職に就きます。容姿端麗で、機転の利くグッチオはやがてホテルのレストランのウエーターに昇格します。地下の厨房から上階の高級レストランホールに上がった彼は、ベルエポックと呼ばれたヨーロッパが最も華やかな時代だった当時の上流社会の人々のホテルでの煌びやかな生活ぶり、とりわけ彼らの贅沢な持ち物に目を奪われました。グッチオが特に注目したのは、連日ポーターによってホテルの入口や廊下に積み上げられる彼らのトランクやバッグでした。イニシャルや紋章が刻まれ、皮革油とワックスでピカピカに磨き上げられた革製のバッグや鞄、長期輸送に耐える頑丈な造りの革製トランク。グッチオの故郷、フィレンツェは高度な鞣し技法によって生み出される上質皮革で有名な町です。フィレンツェの上質な鞣し皮を使って、エレガントでハイクオリティの高級バッグを作ったらサボイの常連客のような上流社会の人々を征服出来るのではないか、グッチオの頭にそんな考えが浮びました。彼のこの漠然とした考えが現実になったのは、第一次世界大戦後の1921年のことです。地道に働きながら貯めたお金と知人からの融資を元手に革製のカバンやバッグを扱うGUCCI一号店をフィレンツェにオープンしたのです。最高品質の素材と卓越したクラフツマンシップによって芸術品のような高級品を作る、というグッチオのこだわりが反映された質の高い革製品は、瞬く間に裕福層の心を掴み、GUCCIブランドはスターダムを駆け上がっていきました。グッチオの後を引き継いだ三男アルドは、野心家で商才に長けた人物で、事業を世界規模に拡大し、ニューヨーク支店を皮切りに、世界の主要都市に次々と支店を開設して巨大なグッチ帝国を築きました。

しかしグッチの物語は、グッチ一族の栄華と衰退、そして破滅の物語です。

グッチ家の歴史は権勢と栄華を極めながら、内部分裂によって滅亡したローマ帝国のそれとよく似ています。グッチお家騒動と呼ばれた終わりのない骨肉争いのせいでGUCCIブランドはやがてアラブ資本に乗っ取られ、グッチ家の人々は経営陣から完全に締め出されてしまうのです。

グッチ家の悲劇は、三代目マウリツィオ・グッチが別居中の妻が差し向けたマフィアに暗殺されるという世間を震撼させた血なまぐさい事件で締めくくられます。

そう、グッチの物語は、例えば山崎豊子の「華麗なる一族」のように時間を忘れて一気に読破できるほどスリリングなのです(そしてこちらは完全なノンフィクションです)。

私はまだ見ていませんが、マウリツィオ・グッチ暗殺事件はレディー・ガガ主演(マウリツィオ・グッチの妻パトリツィア・レッジアーニ役)で2021年に映画化されています。

タイトルを見なければ、ゴッドファーザーIVと言われても違和感がないのはアル・パチーノが出ているからか?😂(アマゾンプライムで視聴出来るようなので、2001年に出版された原作を読んでから是非観たいです)

上に挙げた本の中で個人的に一番面白かったのは「グッチ~抗争の家系」で、グッチオのロンドン時代から、アルド・グッチの逮捕、マウリツィオの愚行により経営をアラブ資本に乗っ取られてしまうところまでが描かれています。一方、「グッチ家の崩壊」は、貧しい生まれながら美貌を武器にのし上がり、マウリツィオ・グッチと結婚したパトリツィアが、グッチ一族の内部崩壊を招き、最終的に夫殺しに至るまでの経緯に焦点を当てています。

流血事件にまで発展した骨肉争い、アルド・グッチの逮捕、そしてマウリツィオ暗殺事件とグッチ家の物語は壮絶でドロドロしていますが、これら数々のスキャンダルもGUCCIブランドの輝きを失わせることはありませんでした。

最高品質の素材と卓越したクラフツマンシップによって作られた芸術品のような高級品、という創設者グッチオ・グッチが掲げたブランドのアイデンティティが失われることがなかったからです。

ジャクリーン・ケネディ・オナシスからダイアナ妃、グレース・ケリーからグウィネス・パルトロウ、ビリー・アイリッシュからセリーナ・ウィリアムズまで、政界のファーストレディから王族、ハリウッドスター、歌姫からスポーツ界のレジェンドまで、錚々たる面子のセレブがグッチ好きを公言し、GGマークの入ったグッチ製品はステータスの象徴として今も絶大な人気を誇っています。

しかし、実はGUCCIは身に付ける人を選ぶブランドなのです。

これはグッチに限ったことではなく、イタリアのハイブランドならどこでもそうですが、ブティックの店員には、女性なら40号(日本の7号)、男性なら44か46号(S)のグッチのスーツをスマートに美しく着こなせるプロポーションと洗練された所作が求められます。

日本でも人気が爆発したGG柄キャンバス地のバッグは、偽物が大量に出回ったせいで、今では猫も杓子も(偽物を)持っていますが、よりハードルの高い革のバッグやコートやスーツなどの服を身に付けている人を見ると、あくまでもイタリアの話ですが、大抵の場合、ブランド負けすることなくこのような高級服をスマートに着こなせる、あるいはエレガントなバッグをカッコよく持てるスタイルと洗練されたファッションセンスを備えた、自分を磨くために日々努力していることが一目で分かる女性が多いのです(女性と限定したのは、私が男性のファッションはあまり注意して見ないからです)。たまにスタイルやセンスを伴わずに、これ見よがしに全身グッチで固めている人を見かけることもありますが、その場合、明らかにそぐわない、というかグッチが浮いてしまっている印象を受けますし、下手をすると下品にすらなりかねません。
日本人観光客がグッチのブティックにゾロゾロ入って来て、商品を大して見もしないで、ショーケースの「ここからここまで」と買い占めていた時代がありましたが、GUCCIブランドの雰囲気からはおよそかけ離れた体型、服装の人達がグッチ製品を大量に買い漁っていく光景は、店員の目にはさぞ異様に映ったことでしょう。

プライベートの羽生君がファッションに興味がないのは明らかですが、撮影スタジオでグッチを着せられれば、この超高級ブランドのアウトフィットをサラっと自分のものにしてしまう、制作側が求めるコンセプトやテーマをすぐに理解して、一瞬でその世界を作り上げて見せる、これは中々出来ることではありません。

そして、ファッション誌の仕事に慣れている日本の俳優やモデルでも、これほどスマートにグッチを着こなせる人が何人いるでしょうか?
彼の生まれ持った「見場の良さ」は勿論ですが、内面から滲み出る気品や知性が、格調高いグッチの雰囲気にピッタリなのです。

このエル・ジャポンは最近、グッチを退任したクリエイティブ・ディレクターのアレッサンドロ・ミケーレにオマージュを捧げる企画なのだそうですが、羽生結弦を選んだグッチ・ジャパンの担当者は何という慧眼の持ち主でしょう!この企画に彼以外の人選はあり得ませんでした。

そして表紙の写真が解禁されるや否や注文が殺到し、何と発売前に重版が決定したとか。
東京ドームのGIFTもそうでしたが、オファーした側の期待に応えるどころか、その期待の遥か右斜め上の結果を返すのが羽生結弦なのです。

羽生君、イタリアのグッチ本家とも是非コラボレーションして下さい!

2013年にミラノのブレラ通りにオープンしたヨーロッパ初のGUCCIメンズ専門店

 

Published by Nymphea(ニンフェア)

管理人/翻訳者(イタリア在住)。2011年四大陸チゴイネ落ち @pianetahanyu