SalottoBiancoより「フィギュアスケート(芸術的スケート)とジャンプ大会」

その週に行われたスポーツ競技についてより踏み込んだ視点で考察するポッドキャスト「SalottoBianco」より。現在のフィギュアスケートに対する考察が興味深かったので訳しました。羽生君の名前もチラッと出てきます。

エレナさんが

該当部分を切り取ってくれました。
Grazie Elena!

マッシミリアーノ・アンベージ(M)冬季競技アナリスト/ジャーナリスト、ジャーナリスト

フランチェスコ・パオーネ(F)ユロスポ所属ジャーナリスト

エンリコ・スパーダ(E)OA Sport編集者

E:最後に僕の本音を発散していい?

トリノのグランプリファイナルではイタリアチームの活躍が目立つ素晴らしい表彰台を見ることが出来たけれど、僕はジュニア男子でアメリカ人と日本人を破って優勝したニコライ・メモラに興味がある。僕達は彼に望みを託すことが出来るかな?

M:身長190センチでジャンプを回転出来るというのは、ほとんど自然の法則に反した能力と言える。実際、スピンでは少し苦戦している。この高身長でスピンを実施するのは簡単なことではない。彼は既にシニアの大会にも参戦し、今シーズンは重要な大会で何度か表彰台に乗っている。しかし、彼自身も分かっているように、ここからシニアでも勝てる選手になるには、まだ道のりは長い。彼は聡明な青年で、フィギュアスケートに対する知識も深い。彼は19歳だが40歳並みに成熟した思考の持ち主で、このことは彼の大きな強みでもある。

プログラムに4回転ジャンプを加える必要があることを理解しており、現在、練習中だ。しかし、同時に彼はアーティストで、幼い頃から彼自身が振付師だった。勿論、彼のプログラムはプロの振付師が振り付ているけれど、彼自身、何の問題もなくプログラムを構築することが出来るし、多く振付師より上手く振り付けられるだろう。だから、彼は少し躊躇している。何故なら、自分のフィギュアスケートに4回転ジャンプを1本または複数挿入すればその芸術性が損なわれるからだ。

19歳の青年がこのような疑問を抱くことは、現在の、見るに堪えないゴミのようなフィギュアスケートとは別次元のフィギュアスケートの存在を証明している。

だから彼は僕達に希望を抱かせてくれる。

何故なら、ニコライは、これから彼が到達する成績に関係なく、君達がファイナルで見たフィギュアスケートとは違う、別のタイプのフィギュアスケートを信じる者にとっての希望だからだ。

E:Pattinaggio Artistico(芸術的スケート)だね

M:フィギュアスケートだ。

ファイナルの男子の試合で僕達が見たのはジャンプ大会だった。

F:Pattinaggio Artimetico(算数のスケート)だよね

M:僕達はジャンプを跳びまくる人達を見た、平凡な振付を見た。しかし、感情移入を起させる選手を見ることはなかった。

4回転ジャンプを決めることで共感を生み出すというならそれもいいだろう。だかこれは僕達が考えるフィギュアスケートとは別の物だ。

だったら音楽をなくし、別の方法で試合を運営すべきだろう。

助走、そしてジャンプ

3回転から初めて、現在までに成功した最も高得点のジャンプ、4回転アクセルまで

全部のジャンプを決めた者が金メダルだ。

ただし、音楽無しで、ストーリーを語ることもなく、別の構造で実施する

今回のファイナルについて、僕の正直な意見を言わせてもらうなら、女子シングルは史上稀に見る低レベルな試合だった。

男子シングルは確かに4回転ジャンプは数多く披露されたが、それ以外のことは少ししかなかった。いずれにしても多くのミスがあった。

女子ではフリーの上位5人が全員転倒した。フリー最下位で現世界女王の坂本花織は転倒しなかった唯一の選手だが、その他のミスを連発した。これについても考察しなければならない。今大会、女子で4回転ジャンプを跳んだ選手はいない。3アクセルを跳んだ選手は一人だけだが、このジャンプは転倒ではなかった。

ペアの選手達は持てる力を全て発揮した。ペアのレベルが下がったと言う者がいるが、それはロシアがいなかったせいだ。しかし、この大会に出場した選手達は全員、以前の演技に比べて自分達のハードルを一段引き上げてみせた。女子の試合では起こらなかったことだ。

男子もそうだろう。男子では長い助走ばかりだった。採点システムによって推奨された、方向性の異なるフィギュアスケートだ。

しかし、その結果はどうだ?

何人がこの大会を見に行った?

アメリカ、カナダ、フランス、イギリスのグランプリ大会を見に行った人が何人いた?

これらの大会はかつてのように1万~1万5000人規模の会場で開催された訳ではない。

収容人数2500~3500人程度の最小規模の会場で開催されたにも拘わらず、会場は埋まらなかった。

F:マッシミリアーノ、誰も敢えて口に出さない質問をしよう。今後、もしパラヴェーラに羽生が来たら、どれぐらいの観客が集まる?

M:チケットは完売だ。ヨーロッパ中から集団が押し寄せ、ホテルにとっても、トリノの街にとっても、その他のあらゆる分野にとっても地球規模の大成功となるだろう。議論の余地はない。

何故なら彼が提案するのは別のフィギュアスケートだからだ。もはや試合ではなくスペクタクルだが。彼は大衆が好きなものを披露する。

ISUは選択を誤っていると僕は思う。残念なことに彼らが何かソリューションを提案する度に状況は悪化している。芸術面の比重を元に戻すために思い切った選択をする勇気がない。フィギュアスケートはスポーツだ。だから助走-ジャンプ-助走-ジャンプの連続で勝てるなら、選手達は勝つためにそうするだろう。

男子の試合で起こっていることだ。

ニコライが観客の心を掴み、大喝采を浴びたのは、彼のフィギュアスケートが他の選手達とは異なるからだ。

彼は別のフィギュアスケートの概念を貫いている。

彼も今後、4回転ジャンプを跳ぶようになるだろう。彼の夢はストーリー、振付、プログラムの中にこれらの要素を溶け込ませることだ。彼にそれが出来るかどうか分からないけれど、僕は彼を心から称賛している。光栄にも彼の話す機会があったが、僕は衝撃を受けた。何故なら、彼はフィギュアスケートが進むべき道を理解しているからだ。

僕はこんなにガラガラのパラヴェーラを見るのは残念だ。

E:大々的なイベントになり得るチャンスだったのにね

M:これはISUの敗北であるだけでなく、僕の敗北であり、何らかの形でフィギュアスケートに関わる全ての人にとっての敗北だ。

僕や他の人達は何年も前からソリューションを提案していたが、聞き入れてもらえなかった。

現在の状況になる随分前、何年も前から、いずれこのような末路を辿ることは明白だった。そして今、元に戻すためにどれ程の労力を要するのか分からない。

残念だ。

ニコライは完全な暗闇の中の微かな光だ。

彼が世界選手権やユーロで勝てるかどうかはまた別の話だ。

しかしニコライが貫いているフィギュアスケートの概念と、彼が観客との間に築いた共感が希望なのだ。

E:そして競技の方向性が変われば、練習方法も変えなければならないから、採点システムやルールを根本から変えるのは簡単なことではないだろう。現在は、ジャンプをより多く跳び、より多く回転すれば良いという方向性になっているのは明らかだ。

M:確かに。
しかしこれら全てのジャンプは振付と、ある程度のレベルの芸術的脈略の中に挿入されていなければならない。

出来れば難しいトランジションを伴って、30メートルの助走からではなく、一連のステップの中に挿入する、ジャンプの前にトランジションやイーグルを入れる、という風に。

つまり、最初から最後まで途切れることのないフローの中に要素が散りばめられている。

現在は客観的に見てそうではない。スケーター達は子供の頃からアイスリンクでひたすら助走-ジャンプ-助走-ジャンプの競争をする。確かにジャンプが決まれば嬉しいし楽しいけれど、これは練習中にリンクメイトとジャンプで張り合うための娯楽であり、試合ではない。

しかし、多くの選手にとってはこれが試合になった。そしてこうした選手達が、演技構成点でも彼らがやっていることに反比例して高い得点を貰えるようになった。そして今、その報いを受けている。

過ちは演技構成点の比重を増やさなかったことだ。しかし正しい基準で評価しなければならない。もし技術点で145点を出せる選手がいるのなら、演技構成点の満点も145点でなければならない。つまり2つの得点の比重を同じにするべきだ。

そしていつも批判ばかり目にするのも悲しい。しかしこうした批判はフィギュアスケートをより多くの人に見てもらうための批判だ。よりコンプリートな選手が高く評価されるべきだ。ただのジャンパーや、ジャンプを跳べないアーティストではなく。多少の妥協は有りだけれど、僕にはその妥協も見えない。僕の目が悪いのかもしれないけれど。

E:君が言っていることは、試合はスペクタクル、イベントであり、人々が見たいと思うスペクタクル的側面を高めるということだよね。ジャンプ大会を見たい人はあまりいないと僕は思う。

フランチェスコが言ったように数学者ぐらいだろう。

僕達が見たいのはスペクタクル、ストーリー、4分の中で有機的な何かを実現するために研究されたプログラム。これがフィギュアスケートにおける違いだろう。

M:勿論だ。ジャンプ大会が悪いと言っている訳ではない。初めからジャンプ大会を見るつもりならそれなりに楽しめるだろう。技術的進化、驚異的なコンビネーションジャンプなど・・・

しかし、フィギュアスケートの試合を見に行くなら、僕達はトリノの男子の試合で見たものではなく、別の何かを期待して行くだろう。

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☆あまり時間がないので、とりあえず翻訳だけ投稿します。
マッシさんが辛辣なのは予想通りですが、畑違いのエンリコさんとフランチェスコさんから見ても、トリノの男子の試合はPattinaggio Artistico(イタリア語のフィギュアスケート、直訳すると芸術的スケート)ではなく、ジャンプ大会に見えたのですね。お二人ともスキー競技の専門家です。

ニコライ・メモラ君のフリーはイタリア男子史上初の快挙ということで興味を抱いて視聴しました。クワドは入っていませんが、確かに細部まで洗練されたバレエダンサーのような優雅な演技で、観客とのコネクトが凄い!イタリア人のお客さんは大喜びだったでしょう。大会中、会場が最も盛り上がった瞬間だったのではないでしょうか。

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Published by Nymphea(ニンフェア)

管理人/翻訳者(イタリア在住)。2011年四大陸チゴイネ落ち @pianetahanyu