Sportlandiaより「フィギュアスケートとISUジャッジングシステムによるジャッジ」

マルティーナさんの論文記事
今回は様々な文献(書籍、新聞およびその他の記事)の記述を引用しながら、近年における偏向採点について解説していきます。
長いですw(文字だけで400字詰め原稿用紙49枚分)

原文>>

マルティーナ・フランマルティーノ著
(2021年2月25日)

現行のISUジャッジングシステムは、2002年五輪のペアの試合で起こった不正採点スキャンダルの後、同じようなスキャンダルを防ぐために考案されました。
このシステムは6.0システムより良いでしょうか?
答えはおそらく「Yes」です。この新システムにより、スケーター達はステップシークエンスやスピンを含む全てのエレメントに気を配るようになりました。また基礎点は現実的で誰でも理解出来ました。旧システムの芸術点ではジャッジ達はスケーターに好きな得点を与えることが出来ました。ジャッジ達は得点の根拠を明確にする必要はなく、ただ選手に高い、または低い得点を与えることによって勝者を選ぶことが出来ました。現在はどうでしょう?

今では本当に事態は改善されたでしょうか?
こちらは2018年オリンピックの男子フリーのプロトコルです:
私は1人のジャッジ、ジャッジ2だけに注目しました(他のジャッジ達についても同じ調査をすることは可能ですし、既にチェックを始めていますが、ここではフリー上位2人に対するジャッジ2の評価だけを見ることにします)。

ジャッジ2だけがチェンに対して最高得点を与えた項目は緑枠、チェンに最高得点を与えたジャッジがジャッジ2以外1人しかいなかった項目は青枠で囲みました。ジャッジ2がチェンに対して最も厳しかった項目は1つもありませんでした。ジャッジ2だけが羽生に対して最低得点を与えた項目は赤枠、羽生に最低得点を与えたジャッジがジャッジ2以外1人しかいなかった項目はオレンジ枠で囲みました。ジャッジ2が羽生に対して最も寛大だった項目は1つもありませんでした。

演技構成点はジャッジ達が好きな得点を与えられる2番目の得点です。ジャッジ2はチェンに対して常に非常に高い得点を与える一方で、羽生に対してはほぼ常に非常に厳しく、常に平均以下の得点を与えていました。GOEでも・・・興味深い得点が見られます。

問題は順位を決めるために使用されるシステムではなく、得点を与える人間です。ジャッジにバイアスがある場合、彼らは自分の応援するスケーターを助ける方法を見つけることが出来ます。

このケースでは、ジャッジ2はアメリカのロリーパーカーでした(そして、私が枠で強調した他の得点を出したジャッジが誰か興味のある方のために補足すると、ジャッジ4は日本の山本さかえ、ジャッジ5はイスラエルのアルバート・ザイドマン、ジャッジ6はロシアのオルガ・コゼミヤキナ、ジャッジ9はラトビアのアギタ・アべレです)。

私はローリー・パーカーの得点について既に以下の記事で書いています:

 ローリー・パーカー(日本語)

https://sportlandiamartina.wordpress.com/2020/10/25/di-giudici-giurie-e-giudizi-equi-14/  (資格停止になった中国ジャッジとの比較を含む)
https://sportlandiamartina.wordpress.com/2020/12/14/jon-jackson-on-edge-4/ https://sportlandiamartina.wordpress.com/2021/01/05/giudici-olimpici-e-national-bias-giudici-allopera-a-pyeongchang-4-from-anastassia-makarova-ukr-to-saodat-numanova-uzb/

偏向ジャッジは過去に競技を苦しめ、今も競技を苦しめている傷痍ですが、彼らは仕事のやり方を変えただけでした。

以下は私がネット上で見つけた一連の記事です。他の記事を見つけたら随時、リストに追加していくつもりです。

こちらはバンクーバー五輪(2月16-18日)の前、2010年欧州選手権(ステファン・ランビエールとブライアン・ジュベールを上回って優勝)直後のエフゲニー・プルシェンコのインタビューです:http://www.absoluteskating.com/index.php?cat=interviews&id=2010evgenyplushenko

以下のフレーズに私は非常に興味を引かれました:

新世代と旧世代を比較してもらえますか?

あれから採点システムが変更され、得点コードにはまだ欠陥があるので比較するのは難しいです。ジャッジ達が誰かの順位を上げたい場合、彼らはそれをアレンジすることが出来ます。タリンで起こったように。ブライアン・ジュベールはトランジションで私より高い得点を獲得しましたが、私達は氷上で全く同じトランジションを行っていました。実際、私達はジャンプを重視しているため、トランジションを入れていません。従って、新しい採点システムにもロビーは存在し、ジャッジ達が結果に影響を与える可能があります。

プルシェンコの意見では、ISU採点システムには欠陥があるのため(そして彼には根拠がある)、1人のジャッジがあるスケーターを別のスケーターより順位を上にしたい場合、彼にはそれが可能だと言うのです。これはプルシェンコの言葉に過ぎず、証明出来ないと言う人がいるかもしれません。確かにそうかもしれませんが、スケーターがこのような発言をした場合、彼の言ったことに根拠があるかどうか調査すべきではないですか?しかし、彼の言葉は彼自身に対して別の形で利用されました。

プルシェンコの言葉を自分の利益のために利用したのはジョー・インマンでした。私はこの件に関する多くの記事を見つけました。こちらはオレンジカウンティレジスター紙に掲載されたスコット・リードの記事です: https://www.ocregister.com/2010/02/10/skating-judges-again-scrutinized/

リードはこのように説明しています:

インマンはバンクーバーでは審査していないが、2002年オリンピックでジャッジを務め、国際スケート連盟のジャッジセミナーを定期的に実施している。

インマンは先ほど引用したプルシェンコの言葉の一部、「彼のプログラムにはトランジションがない」という部分を60人のジャッジにメールで送りました。こちらはUSA Todayに掲載されたリード・チャーナーの記事です:

http://content.usatoday.com/communities/gameon/post/2010/02/olympic-judges-remarks-touch-off-figure-skating-controversy/1#.YDV__-hKiUm

インマンメール以前に、プルシェンコのコンポーネンツはジャッジトレーニングのために制作された公式DVDの中で批判されていました。ISUの誰か(インマンもその一人でしょう)がクオリティが拙劣なフィギュアスケートのプログラムとは何かをジャッジ達に説明するためにプルシェンコの映像を使用したのです。

解説ビデオはプルシェンコのトリノのフリープログラムの前半1分37秒に焦点を当て、彼は「最高レベルの技術的スケーターで多くの資質を持ってた」が「1.04分間はあらゆる種類の音楽解釈から切り離されており、音楽とコネクトしていたのは33秒間だけだった」というナレーションが流れる。

このようなDVDに悪意がなかったと信じることが出来ますか?

クリスティン・ブレナンがUSA Todayに語った内容はこちらです:
https://www.pressreader.com/usa/usa-today-us-edition/20100211/283515087060586
このプレスリーダーには筆者の署名がありませんが、こちらの記事でブレナンの名前を見つけました:
https://usatoday30.usatoday.com/sports/columnist/brennan/2010-02-10-evgeni-plushenko-videos_N.htm

とりわけ、ブレナンは誰がDVDを作ったのかについて言及しています:

5カ国のジャッジと専門家がDVD制作に取り組んだ:ドイツのシシー・クリック、フィンランドのヘリー・アバンドナーティとミカ・サーレライネン 、アメリカのチャーリー・シル、ジョー・インマン、ゲイル・タンガー、イタリアのパオロ・ピッツォカリ、カナダのテッド・バートン、ルイ・ストング、アン・シェルター。

彼女の名前を覚えていない人のために注釈すると、ブレナンは1995年に著書「Inside Edge:A Revealing Journey Into the Secret World of Figure Skating」 (インサイドエッジ:フィギュアスケートの秘密の世界を暴く旅」を出版しています。その後、彼女は別の著書「Edge of Glory:The Inside Story of the Quest for Figure Skating’s Olympic Gold Medals」(栄光のエッジ:フィギュアスケート五輪金メダル探求に纏わる裏話)も執筆しています。私がいずれ購入しようと思っている本の一つです。私のフィギュアスケート専用書架は膨らみ続けています。これらの本の中にはスティーブ・ミルトンのインタビューをまとめた「Skate Talk」も含まれています。そして、この本の3ページは「敬愛するワシントンポストの記者クリスティン・ブレナン」に捧げられています。

 

ミルトンは「Inside Edge」の出版後にこのように書いています:

米スケート連盟は会長モリー・スティルウェル と常任理事ジェリー・レースを通して、ブレナンは今後、連盟主催のイベントで通常、記者達に提供される「メディアサービス」を提供されることはないと書簡で通知した。「ブレナン氏はもはやフィギュアスケートを中立的な立場で報道しておらず、著書の売り上げを伸ばすためであろうと、自分はフィギュアスケートという競技の庇護者であるという彼女の考えのためであろうと、スポーツの報道に個人的な意見を入れているという意見があるため」と彼らは書いた。(215-216ページ)

おそらく、フィギュアスケートとフィギュアスケーターは私達が今読んでいるようなあらゆる事から守られるべきです。最後の2つの例はピーター・オッパーガードについてブレナンが書いた記事アンドレイ・ベレホフスキーについてメリス・バドコックが書いた記事です。両者共に教え子に対する虐待で告発されています。

ミルトンはこのようなことも述べています:

彼女とフィリップ・ハーシュはアメリカにおけるフィギュアスケート報道陣の非公式なリーダーとなった。

何と、ミルトンが著書を発表した1997年に、ハーシュは既に米スケートプレスの二人のリーダーの一人でした。彼の言葉や記事は、スケートファンの意見に影響を与える力を持っています。残念ながら、彼に常に公平かどうかは分かりません。

ブレナンがアメリカのフィギュアスケート競技会に出入禁止になった期間はそれほど長くはなく、僅か数カ月でした。アメリカにおけるフィギュアスケートの注目度が頂点に達していた時代でした。

ミルトンの著書の中でブレナンは自身の出入禁止を回想し、「私にとっては、実に心配なこと」という発言で締めくくっています(そして、この本が出版されたのは1997年なのです):

何年後にはISUは「ワオ!何て素晴らしいジャンプだ」と解説者が言うことがジャーナリズムだとが信じるようになるだろうと私は思います。ご存じのように、これはジャーナリズムではありません。現在、スポーツに関わる大勢の人達にように、本物のジャーナリストは、質問を投げかけ、深刻な問題を提起し始めます。 私達は素敵なジャンプについて話しながら、エイズの話もします。そして、美しいパフォーマンスについて話す一方で、彼らが学校には行かずに個人指導を受けている非常に若い少女であるという事実についても話します。質問を投げかけ、それに答えるだけでなく、問題を提起するのです。私は彼らがそれを好むとは思いません。

スポーツ連盟はむしろそうした問題が提起されないことを望んでいると私は思います。しかしながら、あなたの手中にNFL(ナショナル・フットボール・リーグ)に次ぐ、アメリカで2番目に人気のあるテレビスポーツがある時、問題は提起した方がよいではなく、提起すべきなのです。(218ページ)

現在、フィギュアスケートはアメリカのテレビにとってそれほど重要ではありませんが、これについては別の機会に書くことにします。

ブレナンは上記にリンクした記事のように、問題を提起し続けました。
これは2010年の別の記事です:
http://usatoday30.usatoday.com/sports/olympics/vancouver/figureskating/2010-02-12-plushenko-judges_N.htm

冬季オリンピックに出場する3人のフィギュアスケーターの動画は、物議を醸しているジャッジ教育用DVDに残すことが許可された。これはISUが現役スケーターを含めたくないので、ロシアのエフゲニー・プルシェンコの映像は削除すると言った国際スケート連盟関係者のコメントと矛盾している。

全てのリンクをクリックして記事全文を読むことをお勧めします。ここでは引用していない興味深い情報が幾つかあります。上述のDVDに登場した3人のスケーターは、カロリーナ・コストナー(2018年世界選手権まで競技)、ジョニー・ウィアー(2010年五輪まで競技。2012-2013年シーズンに競技復帰を試みるものの、怪我で断念)、トーマス・ベルネル(2014年世界選手権まで競技)でした。

AP通信はISUのイベントディレクターであるペーター・クリックにUSA TODAYの記事について尋ね、ISUのオッタヴィオ・チンクアンタ会長がこの件に関心を持っていると述べた。

「我々の会長は、ビデオが適切に制作されたこと、そして現役スケーターが含まれていないよう細心の注意を払わなければならないと非常に心配していた」とクリックは言ったと伝えられている。「我々は彼とプルシェンコの関与について議論した」

「我々の方針は現役スケーターを使わないことだった・・・フェアではないからだ」

つまり、彼らはこれがフェアではないことを知っていました。ただ、彼らは(現役選手を)使ってはいけないことを忘れたのか、あるいは何人かのスケーターを削除し忘れただけです。

インマン・メールについてビバリー・スミスが記事を書いています:
https://www.theglobeandmail.com/news/national/judges-accused-of-bias-against-european-figure-skaters/article1208505/.

大会がどのような結末だったか覚えていますか?
スケーティングの質について言えば、欧州選手権とオリンピックでプルシェンコが滑った2つのショートプログラムはほぼ同じでした。2本目のスピンのレベルはバンクーバーの方が髙かったので基礎点は上がりました。しかし、驚くべきことにTESと、そしてPCSも少し下がりました。

こちらは2つのフリー(欧州選手権と五輪)です:

最初のスピンは欧州選手権の方が良かったですが、オリンピックではプルシェンコは2ルッツではなく3ルッツを跳び、ステップシークエンスの出来も良くなっていました。彼の基礎点は上がりましたが、GOEが下がったため、TESはそれほど上がりませんでした。更にPCSは3人のジャッジが非常に低い点を与えたために下がりました。結果、基礎点が4.70点上がったにもかかわらず、トータルスコアは1.49点しか上がりませんでした。大会の結果はどうだったでしょうか?

金メダルと銀メダルの点差は1.31点です。インマンの干渉が、プルシェンコから金メダルを奪ったのではないと断言することが出来ますか?金メダルを獲得したのはインマンの同国選手です。

少し時間を遡りましょう。
2002年にはソルトレークシティのスキャンダルがありました。2002-2004年シーズンから新しいISUジャッジングシステムが採用されるようになりました。

2007年、M.G.パイエティはフィギュアスケート関する非常に興味深い記事を書いています。M.G.パイエティをご存じない人のために補足すると、彼女はドレクセル大学の哲学准教授で、様々な本や「ヨーロッパ思想史」、「ビジネス倫理ジャーナル」、「ザ・タイムズ・リテラリィ・サプリメント」等のジャーナルで哲学に関する記事を発表しています。彼女の記事の多くはこちらかご覧になれます:
https://mgpiety.org/

彼女の著書の一つにSequins and Scandals: Reflections on Figure Skating, Culture and the Philosophy of Sport」(スパンコールとスキャンダル:フィギュアスケート、文化、スポーツ哲学についての考察」があります。 新旧様々な記事をまとめた本で、最も興味深いのは本の表題になっている「スパンコールとスキャンダル」です。この本はインターネットで読むことも出来ますが、パイエティの著書も購入されることをお勧めします。誰かが何か重要なことを行う時、その人が自分の仕事で収入を得るのは至極当然のことであり、私達にとっては「あなたの努力に感謝します」と言う方法です。

記事はこちらです:
https://www.thesmartset.com/article11080703/

パイエティは過去のスキャンダル(2002年のスキャンダルを含む)について簡単に言及した後、新しい採点システムに関しても次のように書いています。

フィギュアスケートの審査におけるバイアスと依怙贔屓は存続し続けるでしょう。何故存続するのか?それは審査にはバイアスと依怙贔屓が存在するからです。ソルトレイクシティで起きたような実際の得点取引は稀です。しかし、あるスケーターのスコアのいわゆる「Boosting」(押し上げ)はごく当たり前のことであり、(この押し上げは)スケート界の内部関係者によって守られてさえいるのです。

彼女の言葉の意味を知りたければ、彼女の記事を読んで下さい。そして・・・彼女には完全な根拠がありました。

しばしばジャッジ達はお気に入りの選手を持つようになります(そして必然的に主張します)。パフォーマンスを評価する基準が完全に客観的な場合、これは問題にはなりません。しかし、フィギュアスケートのプログラムのように、あらゆるタイプの審美的要素を含むパフォーマンスの評価は、ある程度主観的であり、このことは、個々のパフォーマンスの評価に影響を与え、見抜くのが非常に難しい個人的バイアスの余地を残します。 そのようなバイアスがジャッジに与える影響は通常、無意識の内に起こります。これが、おそらく先月ペンシルベニア州レディングで開催されたスケートアメリカで、エヴァン・ライサチェクが、精彩を欠いたショートプログラムで予想外に高いスコアを獲得したと一部のファンが見なした理由なのです。あるファンは「ライサチェク効果」と呼んでいます。 彼は世界銅メダリストであり、全米チャンピオンであり、2007年の四大陸チャンピオンですから、上手く滑るはずです、そうですね?そして彼が競争力を証明したという事実は、彼が上位に相応しいことを意味しています、そうですね?

ライサチェク効果。見事な定義です。この時、まだ2007年で、オリンピックまで2年半もありました。そしてライサチェクの得点は異様に押し上げられていました。よく思わなかった人はいたでしょう・・・当時も今も。

パイエティが指摘する2つ目の問題は、いつもいい演技をする選手だからという理由で、そのスケーターの演技の出来が悪くても、値しない高得点を与えてしまうという現象です。

しかし、如何に善意でやっていても、そのような慣習は本質的に不正です。 ジャッジ達がそのパフォーマンスのクオリティに基づいて得点を与える、という制約に縛られていないとひとたび感じると、ゲートは開かれ、性的指向、政治的見解、スケーターの私生活、彼らの両親の手腕、または多額の金銭的支援をするためにスケーターの傍にいる人々や、場合によっては彼らのコーチや振付師の力量などの無数の不適切な要因の影響を受けやすくなります。

この文章のすぐ後にパイエティはジョン・ジャクソンの著書「On Edge. Backroom Dealing, Cocktail Scheming, Triple Axels, and How Top Skaters Get Screwed(オン・エッジ:裏取引、カクテル謀略、トリプルアクセス、トップスケーターをねじ込む方法)に言及しています。パイエティ推奨の本だったため、私は「On Edge」を読みました。

パイエティはその後でキンバリー・ナバーロ/ブレント・ボメントレのオリジナルダンスについて触れ、彼女の意見ではPCSが異様に低かったと述べています。演技動画がYouTubeに存在しないので、彼らの演技を見ることは出来ませんが、パイエティの意見では、彼らのダンスは技術的に最も難しく、芸術的に最も美しい演技でした。 TESは当然高得点でしたが、PCSは信じられないほど低い得点でした。

ナバーロ/ボメントレは6位でした。ベルビン/アゴストは2006年五輪の銀メダリストであり、既に世界選手権の銀メダルと銅メダルを獲得していました。彼らの得点は断トツで高く、他のペアとは区別されていました。
TESでは3組のペアが1点以下の点差でナバーロ/ボメントレを上回り、1組が彼より低いTESでした。しかし、PCSでは全てのペアがナバーロ/ボメントレを上回り、その点差は1.01から4.97でした。彼らよりTESの低い7位のペアでさえ、PCSではナバーロ/ボメントレを上回っていました。

ジャッジ達はこのペアを何位に配置するか前もって決めていたようでした。技術点では高得点を与えなければならなかったので、彼らの演技が素晴らしかったという事実に関係なく、プレゼンテーションのために取っておいた得点からそれらの点を差し引いたのです。

2007年のことです。今ではジャッジ達は技術点を下げる方法も学習しました。彼らは何故+5ではなく+2を与えたのか説明しなくてもいいのです。従って、答える必要がないことを確信して自由に採点することが出来ます。

もしジャッジ達が各エレメントについて彼らが適用したプラスのブレットとマイナス項目をプロトコルに明記しなければならなくなれば、彼らはブレットにもっと注意しながら考えるようになるでしょう。そうすれば、彼らが公正ならより正しい得点が与えられるようになり、不正なジャッジも汚れた仕事を隠すのがより困難になるはずです。

このテーマについては別の機会に書くつもりです。目下、私は透明性と公正性(ISUはあまり重視していないようですが)について書いています。

2016-2017年シーズンまではどのジャッジがどの得点を出したのか私達は知ることが出来ませんでした。例えば私達はこのような奇妙な得点を目撃しました:

両足着氷だった3連続コンビネーションとコレオシークエンス以外は全て+3?本当ですか???
しかも、PCSも非常に高い得点です

しかし、ジャッジの名前以外にも、ISUが隠している別の詳細があります。これは新しいISUジャッジングシステムが初めて導入された大会、2003年スケートアメリカのプロトコルです。

ISUは各ジャッジの得点合計を公開していました。ジャッジによって得点に大きな違いがあることが一目で分かります。この場合、最も高いジャッジと最も低いジャッジの間には22.40もの点差がありました。この大会以後、このような点差を見るのはより難しくなりました(各ジャッジの合計点がプロトコルに記載されなくなったため)。しかし、ジャッジ達はより注意を払い、ルールをより良く理解する必要がありました。

例えば、この試合のジャッジ1は厳格、平均、寛大のどれでしょうか?

このスクリーンショットをフィギュアスケート国際グループに投稿したところ、私の質問に対して、このジャッジは厳しめだが、厳し過ぎではない、彼のPCSには10.00が2個ある、と答えた人がいました。こちらは同じプロトコルのSkating Scores版です。Skating Scoresは各ジャッジの得点合計に加え、2016-2017年シーズンからは、各ジャッジがスケーターに割り当てた順位も明記してくれるようになりました。また全てのジャッジの国籍も分かります。要するに、ISUが1度だけ提供した情報と、実に興味深いその他の詳細を提供してくれるサイトです。

この時の状況を覚えていますか?
ショートプログラムで羽生はコンビネーションでミスがあり、5位でした。3.74点差で3位だったのはカナダのパトリック・チャン。10.66点差で1位だったのは2015年と2016年の世界チャンピオン、スペインのハビエル・フェルナンデスでした。羽生は最終グループの第一滑走でしたから、その後の選手達がどのような演技をするかは誰にも分かりませんでした。

彼に最も低い得点を与えたのはカナダジャッジのジェフ・ルカシク、次に低い得点だったのはスペインジャッジのダニエル・デルファでした。完全なデータを見ると簡単に確認出来ます。上記の2人のジャッジは完璧なパフォーマンスを終えたばかりの羽生に最終的に3位に相当するPCSを与えたのです。ウクライナのイゴール・フェドチェンコの得点も奇妙です。彼も調査が必要なジャッジです。彼の採点では羽生のGOEは22.10、ジン・ボーヤンのGOEが22.30でした。一体どうしたら(しかも+3/-3システムで)ジンが完璧だった羽生のGOEより高いGOEに値するのでしょうか?まるでウクライナジャッジが他の誰かを助けるために低い与えたように見えます。私が疑り深いのかもしれませんが、もし私がISUの立場なら、他の競技も見ながら、幾つか自問自答することでしょう。

私が疑り深いのは自覚していますが、もしISUが公正な試合を望み、疑惑がなくなることを望んでいるなら、私達に全ての情報を公開し、不可解な点はその都度調査すべきです。

私の脱線は時々長くなります。パイエティの記事の一節を抜粋します:

トーマス・クーンの「科学革命構造」を読んだ全ての学部生は、人は自分が見たいと期待するものを見ることを知っており、これを裏付ける心理学的研究は山のようにあります。

注)私は目下、偏見について書かれた非常に興味深い本、ダニエル・カーネマンのファースト&スローを読書中で、この本について2つの記事「ダニエル・カーネマン著ファースト&スロー(速い思考と遅い思考)」「ダニエル・カーネマン著ファースト&スロー:方法の仮説」を書きました。

パイエティは ISUが彼女の質問に答えなかったと書いています(どんな質問か?それは彼女の記事を読んで下さい。非常に興味深い内容です)。批判を無視するのはISUの得意技です。

極端に言うと、このスポーツを牛耳っている人々の無知がフィギュアスケートの主要な問題だということです。

彼女はジャッジ達がボランティアで、報酬が支払われないことについても触れており、これが審査が公正な方法で行われない理由だと説明していますが、彼女の記事の残りの部分はここでは転載しません。

2010年オリンピックは、14-15日(ペア)、16-18日(男子シングル)、19-23日(アイスダンス)、23-25日(女子シングル)の日程で開催されました。 大会前の2月11日、レイ・フィッシュマンはスレート誌で興味深い記事を発表しました。
記事のタイトルは「フィギュアスケートは八百長か?」です。

記事の中で、フィッシュマンはエコノミスト、エリック・ジッツェヴィッツによる研究論文をリンクしています。 フィッシュマンの記事が削除された場合に備えて、ジッツェヴィッツの研究論文のリンクも貼っておきます(私の英語力にはかなり難解な内容ですが、研究論文もダウンロードしました):
http://www.dartmouth.edu/~ericz/transparency.pdf

フィッシュマンの記事からは2箇所だけ引用します(他の記事と同様、掲載元で原文を読んで下さい):

ジッツェヴィッツは複数の国を「組織票」グループに分け、ジャッジ達が互いのスケーターを有利に採点し合う可能性があることを発見した:ロシアがフランスの背中の痒いところを掻いてやり(ロシアとフランスが互いに助け合い)、競技を犠牲にして両国のスケーターに利益をもたらした。結果的にジャッジパネルに同国人がいたことにより、スケーターを助けたのはその1人のジャッジの得点による直接的な影響だけでなかった(母国のジャッジはパネルの他のジャッジにもスコアを上げるように説得した)。

最も有名なのは2002年に起きたスキャンダルで、フランスとロシアの間で交換採点が行われました(しかし、ISUによれば、フランスが何も知らなかったロシアを助けたことになっており、罰せられるべきは事情を知っていたフランスだけでした)。

もう一つの有名な事件ではスヴャトスラフ・バベンコ(2021年ストックホルム世界選手権男子SPのジャッジ)とアルフレッド・コリテックが関わっていました。ナタリア・クルグロバは、別のジャッジと合意しようとしたために資格停止になりました。

私のブログでは他にも幾つかのケースを見つけることが出来ます。おそらくもっと沢山あります。私はそれらの少なくとも一部を検出する方法を見つけましたが、時間が必要です。
興味深いケースを見つけたら、随時書いていくつもりです。もし何か興味深い記事や事実をご存じなら、是非私に知らせて下さい。何か新しい発見がある度に新しい記事を書くか、既存の記事を更新します。

ジッツェヴィッツは初期の作業で、スキージャンプのジャッジの得点を分析したが、自国選手への贔屓採点はほとんど見つからなかった。複数国のスケート連盟によって選ばれるフィギュアスケートのジャッジとは対照的に、スキージャンプではジャッジはスポーツの完全性に専心する国際グループである国際スキー連盟の小委員会によって任命される。フィギュアスケートのジャッジになるにはナショナリズム感覚が必要である。一方、スキーのジャッジになるには誠実さが必要である。

2010年にはフィッシュマンはジッツェヴィッツによって行われた2つの研究について書いています。最初の研究は見つけられませんので、2つ目のリンクだけ貼ります。彼の意見ではジャッジの国籍の問題は明らかでした。国がジャッジを選ぶなら、その国は自分達が一番好きなジャッジを選びます。
国が一番好きなジャッジは誰でしょうか?
その国が望む結果を出してくれる可能性の高いジャッジです。しかし、今でもこれは真実ではないと考えるジャッジや、ある国のジャッジが別の国のジャッジよりも(平均的に)バイアスがあるかどうかを示すのは不可能だと考えるジャッジもいます:
https://sportrbc.ru/news/5fca44e29a79477fc1a2691d?ruid=NaN.

2020年12月5日に発表された記事はロシア語です。 ウラディスラフ・ズーコフは有力なジャッジであるジェロエン・プリンスにインタビューしました。

– 審判のもう一つの大きな問題は国の要因です。あなた自身、何度もこの事に気付きました。これに対して何が出来ますか?そしてあなたの意見では、この問題が最も深刻なのはどの国ですか?

– ああ、特定の国を特定するのは余りにも困難です。

OK、プリンス。困難と言うのなら、私があなたとISU全員のために調べました。そして、あなたは何を知っているのですが?私は無償でデータを提供します。最もバイアスが露骨な国がどこか、そしてバイアスが最も露骨なジャッジが誰かが分かります。「ナショナルバイアス」シリーズのイントロダクションはこちらです。記事ではナショナルバイアス値をどのように算出したかも説明されています。

こちらは要約表です:

更に過去4シーズンにおける全ジャッジのバイアス値も計算しました。記事の最後にジャッジ名一覧をアルファベット順(左列)とバイアス値の高い順(右列)で見ることが出来ます;https://sportlandiamartina.wordpress.com/2020/12/10/national-bias-6/

要約表を公開した後、要約作成の元になった全てのデータも公開しました。 私が書いたあらゆる記事について、もしデータや記述にミスを見つけたら(これほど膨大なデータになるとミスのリスクは常にあります)、修正しますのでどうか私に知らせて下さい。全てのデータはこちらにあります:https://sportlandiamartina.wordpress.com/2021/01/13/national-bias-all-the-bias-1-from-maira-abasova-to-yury-balkov/

https://sportlandiamartina.wordpress.com/2021/01/15/national-bias-all-the-bias-2-from-diana-barbacci-levy-to-oksana-dolgopolova/

https://sportlandiamartina.wordpress.com/2021/01/16/national-bias-all-the-bias-3-from-igor-dolgushin-to-deborah-islam/

https://sportlandiamartina.wordpress.com/2021/01/17/national-bias-all-the-bias-4-from-limin-jao-to-elisabeth-louesdon/

https://sportlandiamartina.wordpress.com/2021/01/19/national-bias-all-the-bias-5-from-joern-lucas-to/

https://sportlandiamartina.wordpress.com/2021/01/21/national-bias-all-the-bias-6-from-sharon-togers-to/

https://sportlandiamartina.wordpress.com/2021/01/22/national-bias-all-the-bias-7-from-doug-williams-to-kadi-zvirik

プリンスはこう述べています:

故意に偏った審判をすることは非常に稀だと思いますが、同時に誰もが自国スケーターを優遇するのはごく自然なことです。

何と言うことでしょう?
ごく自然なこと
聞き間違いではありませんか?

それではもう一度パイエティの記事に戻らなければなりません。これはフィギュアスケートに関する記事ではありませんが、非常に興味深い内容です:
https://www.counterpunch.org/2012/11/19/the-war-on-fairness/

何箇所か抜粋します。

自分が面倒を見ているからという理由で、あなたがその面倒を見ている人達の成功を望むことは全く自然なことです。自分が面倒を見ているからと言う理由だけで、彼らが他の、そしておそらくより資格のある人達よりも成功することを保証するのは間違っています。

[…]

アスマのとりとめのない議論の結論は、依怙贔屓に向かう傾向は、人間の本質の一部だということです。残念ながらこれは真実です。愛する者の利益を促進することは、私達をいい気分にさせます。自分の気分が良くなるからと言って、倫理にかなっているとは限りません。

最初にリンクしたパイエティの記事で、彼女はジャッジ、彼らの構成、そして公正なジャッジングの必要性について話しています。競技会の審査で忙し過ぎるプリンスは、おそらく倫理における何かを忘れてしまったのでしょう。

私達はバイアスが最も露骨なジャッジの出身国を知ることが出来ます。そしてバイアスが最も露骨なジャッジが誰かを知ることも出来ます。

ISUはジャッジと各国連盟の悪習を止めなければなりません。そしてISUが何も手を打たないのなら、IOCがオリンピックのジャッジ席からバイアスの露骨なジャッジ達を締め出すべきです。チェン・ウェイグアンを2018年五輪後に資格停止にしたのは遅過ぎました。平昌前に彼がどのように審査していたかを考慮すると、彼が何故平昌に行けたのか私には理解出来ません。

根拠となるデータはこちらです:
https://sportlandiamartina.wordpress.com/2020/12/20/giudici-olimpici-e-national-bias-giudici-allopera-a-pyeongchang-1/.

ISUは当てにならないので、IOCがしっかりすることが重要です。2014年にはオッタヴィオ・チンクアンタだったISU会長は、現在 ヤン・ダイケマ です。両者共にスピードスケート出身で、フィギュアスケートについてどの程度知っているのか、彼らにとってフィギュアスケートがどの程度重要なのかは分かりません。

しかし、チンクアンタはメリ・ジョー・ボルジレリに対してかなり心配な発言をしています:

「私は些細な違反のために1人の人間を一生資格停止にすることは出来ません。(バルコフは)ウクライナ連盟の問題です。彼らが彼を派遣することを選択したのです」

バルコフは試合を「操作」していたことが発覚しました。そしてチンクアンタにとってこれは些細な違反なのでしょうか?
おそらく、彼はこれがどういうことなのかよく分かっていないのでしょう。
そして・・・これはウクライナ連盟の問題ですか?
いいえ、大会はISUによって運営されていますから、ISUの問題です。
ウクライナ連盟が不正ジャッジを競技会に派遣する利点を理解しているのなら、なぜ別の誰かを派遣する必要があるのでしょうか。

連盟の悪習を止めることが出来るのはISUだけであり、ISUが何もしないのなら、IOCが介入すべきです(例えIOCはオリンピックにしか介入することが出来ないとしても)。IOCは、偏見が露骨なジャッジを次のオリンピックから締め出さなければならず、ジャッジがあまりにも奇妙な得点を付けた場合、その国の全てのジャッジが2026年のオリンピックで審査するのを禁じるべきです。これだけでは国同士の合意を防ぐことは出来ませんが、より公正な競技会の第一歩になります。

私はパイエティがとても好きです。こちらは彼女の別の記事です。ここでは2014年冬季五輪について書いています:
更にもう一つの五輪フィギュアスケートのジャッジングスキャンダル

2月13日の記事です。2月9日に団体戦が終了し、ペアも11〜12日に既に終わっていました。男シングルが13〜14日、アイスダンスが16〜17日、女子シングルが19〜20日が行われる予定でした。
ソチにはバンクーバーの金メダリスト(キム・ヨナ)と銀メダリスト(浅田真央)が出場していましたが、ショートプログラムで浅田がミスを連発することを事前に予測出来る人は誰もいませんでした。

パイティはロシア(団体戦金メダル)とアメリカ(アイスダンス金メダル)の間に合意があったと書いています。残念ながらレキップ紙(仏スポーツ紙)の記事はもうネット上にはありません。

しかし、本当に興味深い疑問は、デイヴィス/ホワイトが明らかに彼らより優れているバーチュ/モイアを何故これほど確実に打ち負かすことが出来たかということです。別の批評家が指摘しているように、デイヴィス/ホワイトを実際に有利にしているのはスピードです。確かに彼らには非常にスピードがあります。しかし、スピードが全てではありません。

パイエティの記事を読むことをお勧めします。非常に興味深いです。 彼女は技術的なこと、そしてメリル・デイヴィス/チャーリー・ホワイトとテッサ・バーチュ/スコット・モイアの違いについても簡単に説明しています。これは彼女の別の記事です:
五輪のアイススケートがもっと沈む可能性はあるか?

そして、過去のストーリーを読みながら、「現在」を考えて下さい。2022年のオリンピックではスピードではなく、ジャンプの質、GOE、PCSについて考えなければなりません。

グループのほとんどのメンバー(米Yahooのフィギュアスケートグループの登録者)はデイヴィス/ホワイトは金メダルを獲るために助けを必要していないと始終繰り返していました。彼らはここ数年間、あらゆる大会で勝っています。悲しいことにこれは事実です。しかし、これらの他の勝利によって彼らは助けを必要していないという暗黙的な前提を築くことで、デイヴィス/ホワイトが(五輪では)助けを必要としていたかどうか、という疑問を巧みにはぐらかすことが出来ます。

デイヴィス/ホワイトのフリーダンスについてパイエティはこう書いています。

彼らは上手く滑りました。そして彼らの勝利に対する論争が起こらないようにするための努力の一環として、バーチュ/モイアは彼らに近づきもしなかったという印象を与えるために、彼らに極端に膨らませた得点を与えました。

しかし当然、数字は嘘をつく(人を欺く)ことが出来ます。そしてこれらの数字はそうしたのです。

2019年埼玉と2019年トリノについても同じことが言えます。これらの数字は嘘をついたのです。

そして女子シングルについては、再びクリスティン・ブレナンがソチにおけるアデリーナ・ソトニコワの金メダルとジャッジパネルの構成について書いています。こちらはアレクサンダー・アバド・サントスによるプロトコル分析です。

いつものことですが、またしても書き過ぎてしまいました。そして私はもっと書きたいのです。しかし、今日のところはこの辺でやめておきます。しかし別の日に続けるつもりです。

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☆スキージャンプではジャッジは各国連盟が自国ジャッジを派遣するのではなく、国際スキー連盟の小委員会が任命するとは知りませんでした。
体操、シンクロナイズドスイミング、スキーやスノーボードのハーフパイプ、馬術など、採点競技は他にも色々ありますから、ジャッジの選出方法や採点に不正があった場合の罰則を競技別に比較したら面白いかもしれませんね。

フィギュアスケートのたった2年の資格停止は軽過ぎると思いますし、平昌におけるローリー・パーカーのように、処分された中国ジャッジと同程度のバイアスがあったにも拘わらず何故かお咎めなしのジャッジもいます。

米メディアにさえ偏向採点を何度も指摘されているローリー・パーカーや処分歴のあるヴァルター・トイゴのようなジャッジをオリンピックのような重要な大会に派遣するということは、その国の連盟が自国の選手を爆上げし、逆にライバル選手の得点を爆下げする彼らのような偏向ジャッジを暗黙的に奨励していることになります。
そして、自国のエースを爆下げし、ライバル選手に平均より高い得点を贈るジャッジを派遣する日本スケート連盟は一体何を考えているのでしょうか?

マルティーナさんの分析記事には大きく分けて以下の4タイプがあります:

  • 羽生結弦に対する採点の不可解:クオリティに反比例して年々下がっていく羽生君のPCSとGOEを膨大な数値データとルールを照らし合わせながら、如何に不可解な現象であるかを検証しています。
  • ナショナルバイアスについて:各国の全ジャッジについてジャッジ名が公開されるようになってからの全大会、全カテゴリーの全選手のプロトコルから各ジャッジのバイアス値(平均からの乖離)を計算し、ファンの思い込みや被害妄想などではなく、ナショナルバイアスや特定の選手に対する上げ/下げ採点が実際に存在することを数字という動かぬ証拠によって証明しています。
  • フィギュアスケート史シリーズ:過去に出版された書籍、専門誌、新聞の記事などの文献(三流ゴシップ誌や実在するのか分からない怪しげな「関係者談」などではなく、筆者の署名がある出版物がソースです)を元に、戦後から現在までのフィギュアスケートにおける不正採点と不祥事の歴史を読み解きます。
  • その他:心理学などその他の観点から採点や偏向報道の問題を考察・分析します。

どの記事も超長文で、一体どうやって短期間にこれほどの膨大なデータを分析し、多くの資料(しかもその多くは英語)を読み、グラフや表を作成してこれほど綿密で長い記事を書き上げたのか・・・マルティーナさんの超人的な能力と情熱にはただただ敬服するばかりです。

 

このブログのポリシーとしては、1つのカテゴリーに偏らず、なるべくバラエティに富んだ記事を紹介したいと思っていますので、主に以下のテーマを扱っていくつもりです:

  1. 技術解析(主にマルティーナさんのSportlandiaから)
  2. マッシミリアーノさんの愛の発信
  3. イタリアのファンの声(しかし嘆かわしいことに、こちらも最近は行きつくところが採点批判なんですよね・・・)
  4. OA Sportやガゼッタなどのイタリアのオフィシャルメディアの記事
  5. イタリア実況解説

これからオフシーズンなので4)と5)は当分ないですが、ワールドと国別のユヅリーテ達の感想もまだ訳せていないですし、優先順位やバランスを考えながらマルティーナさんの記事は特に興味深いものから地道に訳していければと思います。

Published by Nymphea(ニンフェア)

管理人/翻訳者(イタリア在住)。2011年四大陸チゴイネ落ち @pianetahanyu